朝が来るのレビュー・感想・評価
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女性の監督ならではの作品
女性の感性みなぎる作品。
テーマは母と子。産みの母、育ての母、養子縁組する母、三者三様の母親の想いを交錯する。子供への愛とその表現の仕方。
映像は自然光のまばゆさを使ったカットが多くて望郷感のある優しい絵作りが母性のイメージと重なる。
観た後に優しく包まれそうなそんな映画。
追記)
社会派的な視点では、女子中高生の妊娠がその女性の人生に多大な影響を及ぼすことの警鐘にも受け取れる。
あとは、若い妊婦を預かる施設内でのドキュメンタリータッチ、インタビューに応えるようなカットはリアル感増し。
消せない想い
子供ができずに養子を取った夫婦だが、その子の生みの親だと名乗る人物が突如現れ、子供を返すか或いは…という展開になる物語。
序盤、子供ができない夫婦間の苦悩が描かれる。
空港での夫の本音が出るシーンは胸に来るものがある。
そして偶然、養子縁組というものがあることを知った二人が、養子をとることとする。
生みの親は14歳の中学生。ちらっと登場するだけだが、きっと彼女にもここに来るまで壮絶な人生があったんだろうなぁ~なんて考えていたら、寧ろここから映画は彼女の物語がメインとなる。
真面目そうな女子中学生。こうなっていなかったら、ごくごく普通の幸せな人生を送っていたであろう彼女。妊娠のきっかけも、中学生ながら純愛の末だったから、尚のこと難しい。
まだ十代だというのに波乱万丈すぎる人生の末、変わり果てた姿で夫婦の前に現れた理由とは?
観ている側にも重くズッシリとのしかかってくる物語だった。
色々考えさせられる作品だが、夫婦や少女の物語は勿論、個人的に気になったのは養子団体について。ある夫婦の質問に対して、そこだけは認められないと回答する代表の女性。
…難しいですね、その方が経済的にも安定するし、考えようではその方が子供もより幸せになれるのでは?とも思いつつ、団体側としてはある種の「覚悟」も見たかったのかな。
子供が欲しい大人の為ではなく、あくまで子供が親を見つけるのが目標ですからね。
命を預けるには、並大抵の覚悟しか見られないようではダメですもんね。
そしてあの手紙。
当時14歳の彼女がどのような思いで消したのかと思うと、胸が張り裂けそうになる。
親子間での悲しい出来事が多く起こっている昨今の日本。
多くの方に観てほしいと思える作品だった。
蒔田彩珠さん18歳の演技がもの凄い、天才女優誕生。世界の河瀨直美監...
蒔田彩珠さん18歳の演技がもの凄い、天才女優誕生。世界の河瀨直美監督のストーリー構成と光、海、景色の映像美が絶妙、広島の似島に行ってみたくなる。妊娠、出産という本来は感動的な事象に相反する不幸を抱える本来は交わることない2つの人生が重なり、感動的な物語を成す。その後を見せてほしくなる名作。
性教育しっかりして❗️(避妊することくらいは)学んで❗️
何かの番組でこれを目にした母から、この河瀬直美監督作品が観たいとのオーダーが入りましたので、高齢父と妻も引き連れて一緒に観に行って来ました。
(※これは私の映画観たさ故の欲と、人は集まるが喋らない映画館でのコロナ感染率は低かろうという楽観的な考えに基づく、出不精な父のリハビリ的な意味合いもモリモリもり盛り込まれたお出掛けプランでもあり、父の余生に私が付き添える残り少ない時間を、今からでも可能な限りお互いにとって充実したものにしたいという思いに駆られてのことでもあります🤦🏻♂️コレマデガ親不孝デシタカラ…
まあ、換気しているとはいえほぼ密閉に近い劇場空間に、1人でもコロナマンが居て咳クシャミをされたらお終いなのでしょうが🤷🏻♂️)
河瀬監督の撮りたい画(え)、見せたい画で始まる本作品、時間を前後させながらストーリーテリングされ、2時間後にお話が繋がります。
エンドロールにも表記がありましたが、モデルとなった「Babyぽけっと」というNPO法人が実在するのですね。
その法人の現場で実際に関わりのある素人さんらも出演させていると思われ、ドキュメンタリー作品を観ているかのような印象も強く、逆に顔の知れ渡っている主役夫婦のプロ役者さんらの方に微量の演技臭さを感じてしまったり。
島に居た先輩役の山下リオさんは、竹を割ったような性格のうちの叔母の若かりし頃の印象と似ており、結構私の好みのお顔立ちでしたので、見た時😍ハッ❣️となりました。(性格が合う合わないはまた別の話😑)
私もたまに考えることがあり、なかなか短くは語れない内容の作品ですので、今回はレビューを極端折って誤魔化す極小生なのであります✍🏼
でも一言☝🏼 人に托卵ならぬ托雛して子を育てさせ、子や実親のどちらが望もうが後になってから元の鞘に収まろうなんてのは、その気持ち、解りはしますがあまりに虫が良過ぎて、カッコ-? ホ-ホケキョ? ふざけんじゃないわよ❗️というお話ですよ。
そんなのは養育費&子育て労力乞食で意地汚ねーですよ😤
とまあ、これも極狭量な個人的視点に基づくクレームに過ぎませんが、、そんなややこしい境遇で生まれて来るというのも、その親子それぞれの持つ因縁によるもので、しようがないか‥。
河瀬監督がなぜ評価されるのかわかりました。
河瀬監督作品を初めて見ました。
たくさんの映画ファン、河瀬ファンがレビューを書いておられるので私が書くこともないのですが、映像がとても印象的でした。
要所要所に綴じ込まれる映像もすんなりと見る者の身に染み込んでくるようでした。あの、一呼吸二呼吸の映像が挟まるのは見る者のこころに何かが織り込まれて行く感覚でした。
こんな映像体験は初めてでした。
ドラマもまるでドキュメンタリー。過剰なものがなくて快適でした。こういう視点で過去に見た映画を考えると、過去の別監督の作品に何か少し違和感を覚えました。まあ、別の人の別の作品を見たらまた違った気分になるんでしょうけど。
原作は知らないのですが、すべてが自然で、誰の立場から考えても納得がいくドラマでした。
なにしろすべてに過不足がなくすんなりと溶け込める映画で、河瀬作品について食わず嫌いを改めたいと思います。
役者がみんな良かったです。井浦新君がまだアラタの頃からのファンで、最初の方の居酒屋場面の演技は秀逸でした。
永作博美は井浦君と同様、二人できちんとした教養があり思いやりのある大人を演じていて文句なし。
浅田美代子は先頃の詐欺の役が印象に
残っていたので少し引きずっていましたが、とても自然で説得力がありました。
蒔田彩珠もきれいで存在感がありました。家族もまわりの人たちも変に作り込んだ感なしで、河瀬演出がとても納得がいきました。
河瀬監督独特のタッチが光る!
とても丁寧に緻密に作られている。
物語に挿し込まれる花や鳥などの自然や光の映像、役者さんではない人たちの登場によりドキュメンタリータッチとなる部分、そして2人の母親を中心とした2つの家庭の温度、全てがとてもいい塩梅に交わっていく。
見終わった後の衝撃と安堵感とヒリヒリ感!
かなり久々の感覚を味わいました。
仕事柄もあり、普通養子縁組とは異なる特別養子縁組については制度としては理解していましたが、実際その制度を使う「人」のことは何も分かっていませんでした。
映画の中に出てくる「ベビーバトン」のようなNPO法人が出産前から支援していたりするのですね。
特別養子縁組では実親との交流は絶たれるという認識でしたので出産後に会うところは正直びっくりしました。
ひかりちゃんに共感できない方も多いようですが私はかなり感情移入して痛みと共に見つめていました。
永作博美さんは技巧的ではなく安定の自然体の上手さ。
井浦新さん、浅田美代子さんも良かった!
そして口ずさみたくなるあの主題歌も良いですね〜。
ミステリータッチだけどヒューマンドラマとして秀逸な作品。
河瀬直美監督、「あん」も素晴らしかったけどこの映画でさらに好きになりました。
最後に差し伸べた手は小さいけど温かかった
子供ができない夫婦が特別養子縁組により男の子を迎え入れる。育ての親となる夫婦の視点で描かれる第一章。
インタールードとも言える再会。6年が経ち夫婦の家を訪れた産みの親は別人だった。6年前の面影は無かった。
産みの母親の視点で描かれる第二章。妊娠前に時間を戻し、彼女の悲劇の連鎖を追う。『どうして私だけこんな目にあうの?』と問う彼女に『馬鹿だから』だと突き放した。
エンドロールの最後で差し伸べた温かい手。小さな手だったが本当に温かかった。涙が滲んだ。
ありきたりな題材でどうかと危惧したが、軽々と超えてきた河瀬直美監督。やはり素晴らしい監督でした。本物の感動がありました。
「今最も注目している女優蒔田彩珠」
今年75本目。
「星の子」(見れなかったです)にも出演している蒔田彩珠が今最も注目している女優で、彼女が出てるので楽しみに見て来ました。
小松菜奈さんが「渇き」「ディストラクション・ベイビーズ」から大女優になって行ったように、蒔田彩珠さんもこの作品から大女優になる歴史の1ページに立ち会えたような気がしています。
作品は河瀬直美さんなので、時折挟む自然の描写が何とも美しい。
一番好きだったのが時系列ですね。
ここは一番見て欲しい所でネタバレになってしまうので詳しくは書けませんが、順番通りじゃない所が好きです。
来年のアカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表作品に決定。2009年の「おくりびと」以来、賞を獲得するのをワクワクしながら見守っています。
号泣
ドキュメンタリーを見ているようでした。
子供を授かれない者と、そうじゃない者。神様のいたずらにしか思えない。
この作品はとてもリアルに描かれていて、胸が締め付けられた。
役者さん達の自然な演技。それは演技演技しているのでなく、そこもとてもリアル。
素晴らしい作品。
そしてC&Kさんの主題歌。すごく泣ける。
歌詞の中で
♪きっと君を探し出すよ
必ず君にたどり着くよ♪
これは、ヒカリがアサトを探し出すのではなく
誰かがヒカリを探し出す
って事に聞こえた。
エンドロールまで号泣した映画は初めてでした。
今日も素晴らしい作品に出会えて幸せです。
光と音が感情を揺さぶる
とても心揺さぶられた。溢れるような光の描写。吹き抜ける風。木々のざわめき、雨音、波の音。世界全体が生命に満ちていて、それが集まって一つの命が生まれてくるのだと、命は自分から選んで生まれる場所を決めているのだと、映画全体が語りかけてくるようだった。主題歌も物語と合っていて、印象に残った。
ひかりさす
初恋は美しい。好きな人とのセックスも美しい。
美しいだけに堕ちていく少女との落差にやられる。
妊娠、出産って10代であればみっともない、恥ずかしい事と言われるのに結婚後であれば素晴らしい、おめでとうって言われる。やってることは同じなんですが。
そういう矛盾を含めて若い子たちに考えて欲しいのかも知れませんが、この作品若い子は見ないだろうな。
清濁併せ呑むものが、突き刺さるのはおばちゃんになってからかも。
一つ気になったのが共働きには養子縁組をさせないってところ。育児休暇取れる人もいるだろうし、退職して来いって横暴だと思った。今時片方の収入で暮らしていける家庭なんてないぞ!
蒔田彩珠に全幅の信頼があるからこその光、ドキュメンタリーのような温度が身に染みる
鑑賞してから一度整理することで、もう一度見えてくるものがあった。ドキュメンタリーのような温度で迫る、試練と過程の末の交錯。容赦ないからこそ映るものがあった。
養子縁組によって育てることができた母と、養子縁組によって子を育てることができなかった母。衝撃の再会までの過程を埋めていく。養子縁組の制度には、「子は親のもとで幸せにする権利がある」一方、親になれなかった母を幸せにする制度は、ない。真面目で純粋だった彼女は、拠り所を失い、さ迷い続ける。ドキュメンタリーのように綴っていくため、救いはない。だからこそ、別人のような彼女が形成されていく。その過程を知るのは、観ている我々だけであり、途方に暮れるほど重い時間が続く。しかし、誰のもとにも太陽の光だけは、降り注ぐ。
朝が来る、その意味を再考してから初めて見えてくるものも多いこの作品。語るべき作品だ。
また反省させられました
ストーリー説明・ネタバレなし、原作未読
河瀬直美監督作品は『あん』以来の鑑賞だったと思います。
今年はコロナ騒動で映画鑑賞が凄く減ったにも関わらず、観る映画観る映画、殆ど満足していて、特に邦画は質が高い作品ばかりで嬉しくなりますね。今、日本映画業界のガラパゴス化が言われていますが、それで映画の質が上がるなら、例え迫力あるスペクタル映画やアクション映画が作れなくても、例え洗練されたミュージカル映画が作れなくても、日本映画はそれで突き進めば良い様な気がします。
本作ですが、今までの河瀬監督の作品群と比べると是枝監督かと思う様な作風で、とても分かりやすい作品でした。
河瀬監督と是枝監督って扱う題材やテーマが似ている感じですが見せ方は微妙に違い、河瀬監督は映像にドラマを乗せるような感じであり、是枝監督は逆に物語に映像を乗せている感じで、観客にとっては後者の方が理解しやすいと思います。
で本作の場合、才気が先走り観客に対しての気配りの希薄さはあまり感じなかったし、物語自体も分かりやすかったですね。それは『あん』くらいから見られる傾向で、樹木希林という役者からの影響が大きくあったのかも知れませんね。本作ではテーマも興味深いものでしたが、物語にも十分引き込まれました。
それと『星の子』の感想でも書いたのですが、自分自身を反省する様なテーマの作品が多くなってきた様に感じます。本作でもそうでしたが、これは歳をとり頭が硬くなってきたせいもあるのかも知れませんが、今まで嫌悪していた行いを己自身が行っていることの発見ほど応えることはありませんからね。
この作品でも世間一般の浅はかな先入観が、自分の中にも確実に存在している事を気付かせてくれました。
映画の冒頭ではこの作品の主人公は永作博美だと思っていたら、ひかり役の蒔田彩珠が本作の主人公だと気付き、彼女に対する私の印象がまさに“世間の目”的な本質とはかけ離れた、フォーマット化さた行動だけでの未熟さ愚かさだったのですが、これは映画的な誘導というか印象操作もあったとは思います。そう思わされたこと自体が物語の終盤にになって強く自分の心に突き刺さりました。
物語の中で、半グレの様な連中に友達の保証人にされて恫喝されたシーンで(正確な台詞は忘れましたが)「何故、私が……」の答えに対し半グレ達から「バカだから…」という返事をされるシーンがありましたが、これは今のSNS時代の象徴的な言葉でもあり、殆どの人間が他者(世間)に向かって無意識に発している総称の様に感じられ、私も当然その1人であったことを思い知らされました。(『あん』の時のハンセン病に対する世間の対応と同一の人間心理だと思います。)
(SNS社会では自分以外の全ての他者(肉親/他人、強者/弱者、賢者/愚者関係なく)一個の人間としてではなく“バカ”という総称で呼ぶ傾向を強く感じてしまうし、自分もその例外ではない)
この作品の結末が悲劇となるか?希望となるか?、観客はこの二つの結末の予兆を作中に与えられるのですが、観客はどちらの結末を想起してしまうのか?、人間をちゃんと一個の人間として見ることの難しさをこの作品は伝えてくれました。この作品に登場する全ての人間に(あの半グレ達でさへ)記号的な役柄はいないと、捉えられるかどうかを試された様な気がします。
うーん…
予備知識なしに、映画のポスター?見開き?と他の作品の際の短い番宣のみで、産みの親が子供を取り返しに来たり、「そして父になる」のような親子になっていくようなストーリーを勝手に想像してた。
ところが井浦新、永作博美夫婦の「子供を持てない葛藤」のあとにくる「産みの親の苦悩」のサイドストーリがコントラストを付けていて、さらには河瀬直美監督の映像美?カメラワークというのかなぁ、淡々とした画面の中にある一つひとつ(一人ひとりかな)がすごく上質に撮られていた作品だと思った。
凄く泣けるわけでもなく、かと言って凄く感動するわけでもないけど、現代社会にある「割り切れない想い」が丁寧に描かれていると思った。
複雑な心境に
複雑な心境になりました。
ベストな選択なんてあるのでしょうかね。
世間体を気にしての選択が、人生という長い時間軸のなかで当事者達を変えてしまうこともあるような気がします。難しいですね。聞く耳を持つこと、話しをすることが大事なんでしょね。
良い作品でした‼︎
切実なテーマをリアルに描いているが
子供が欲しくても授かることのできない夫婦と、子供を産んでも育てることのできない母親。特別養子縁組による子供、養親、実親の関わりという切実で重いテーマを、リアルに、かつ謎解きの要素を入れて描いている。
木々や島の風と光、ドキュメンタリーと見紛う登場人物の表情やセリフ、揺れるカメラなど、河瀬監督の持ち味が十分に発揮されている。
前半の夫婦のパートでは、妊活に悩む姿、特別養子縁組という制度を知って感銘を受ける姿が、自分事として感じられ、「親のためではなく、生まれてくる子供のための制度」とNPO主宰役の浅田美代子が語る姿に、本当に感動してしまった。
しかし、この作品(たぶん原作も)の真価は、子供を産んでも育てることのできなかった母親の事情と心情を描いている後半のパートにある。そこでの母親役の蒔田彩珠の凄みには目を見張る。よくこれだけの難役を演じきったものだ。
ただし、数年振りに会う母親と名乗る人物が変貌し、金を要求してくるシーンは、謎解きの起点となるシーンであり、事情が明らかになった後にはクライマックスとなるはずのシーンだが、他のシーンの描写の濃密さと比べると、ずいぶん薄味で、しかもセリフに頼っていたように感じ、物足りなさが残った。
後半になるにつれて、謎解きを追いかけるのに性急な感じで、残念ながら、河瀬監督はミステリーを描くのは得手ではないようだ。
ラストの母親どうしの再会、そして子供の視点が、監督が描きたかった本当のテーマなのだろうが、自分としてはうまく読み取ることができなかった。
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