劇場公開日 2020年10月23日

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「永作と蒔田の名演が光る、河瀬監督のまぎれもない代表作。」朝が来る コタツみかんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0永作と蒔田の名演が光る、河瀬監督のまぎれもない代表作。

2024年9月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

これは、泣いた。特別養子縁組をめぐる里親夫婦の葛藤と産みの母である少女のやるせない境遇が、まるでドキュメンタリーを観ているような臨場感で胸に迫り、最後は2人の母とともに何とも表現しがたい嗚咽にまみれた。すばらしい傑作である。

ストーリー、映像、音楽、俳優のどれも素晴らしく、おそらく本作は自分がこれまでほとんど理解できなかった河瀬監督のまぎれもない代表作として語り継がれることになるに違いない。

そして、本作がこれほどまでにリアリティーをもって映像化できたのは、他でもない河瀬監督自身が両親に捨てられた存在であったことと無関係ではないだろう。「生まれた時から両親がそこにいないという不確かな感じがずっとあって、それは映画を撮ることで埋められるものではないけど、私は確かなものや人のつながりを今も追い求めている」。過去にそう語っていた監督。

親がいない。それでも私は世界をこんな風に愛している――。
本作のラストで2人の母親に託された想いは、監督自身のそんな切なる願いでもあったのかもしれない。

永作と蒔田の名演を思い出すだけで、また泣きそうである。

コタツみかん