「長尺すぎるが、心情が丁寧に描かれた良作」朝が来る ぴさんの映画レビュー(感想・評価)
長尺すぎるが、心情が丁寧に描かれた良作
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河瀬直美監督らしい手法で撮られており、一部のシーンはドキュメンタリーを観ているかのようである。演者に台本ではなくフリーに語らせていると思われる演出は河瀬監督の真骨頂だが、そのために長尺でもう少しテンポが良くてもいいのではと感じるシーンがいくつかあった。
主人公の少女は以前テレビドラマでの演技を観た時はさほど印象に残らない感じだったが、この作品では独特の空気感があり演技に引き込まれた。まだ中学生であってもちゃんと母性が芽生え、生まれたばかりの我が子を本当は手放したくない思いが丁寧に描かれている。だがその思いを母親は完全に否定する。親の立場から見れば世間体もあり、まだ幼いはずの娘の妊娠に裏切られたような気持ちもあったか。でも娘のこれからの人生のためにと選択した結果が、娘の人生の転落のスタートとなってしまったのがなんとも皮肉である。もしこの母親が、娘の思いにもっと寄り添う事が出来たならば、少女にはどんな人生が待っていたのか。どんな選択が幸せだったのか。転落していくばかりの少女が不憫だった。
井浦新夫婦の子供がほしいという切実な思いはしっかり描かれている。作品のテーマは非常に難しい問題であり、色々な考え方があるため意見は分かれそうだ。
ラストシーンに救われたような気持ちになった。
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