「エンドロールの最後の最後までみて!」朝が来る kah0115さんの映画レビュー(感想・評価)
エンドロールの最後の最後までみて!
原作も監督も役者も素晴らしい。
『イイ話』では決してないけれど、色々と考えさせられる良作。娘を持つ親としては中盤からラストシーンまで涙涙で目が腫れた。。
育ての親の目線、生みの親の目線、どちらも丁寧に描かれている。
特に中学生で妊娠し、子をベビーバトンに渡す『ひかり』の感情をとてもよく表現している故、辛く悲しい。若くして妊娠、、というと家庭になんらか問題のある不良の子が想像しやすいかもしれないが、ひかりは何ら普通のむしろ地味なタイプで、両親家族もいたって普通のどこにでもある家庭。(普通の)初恋の相手と恋をして、想い合って体の関係を持ち、結果的に妊娠してしまう。
妊娠さえしなければ、もしかしたら微笑ましいこと(中学生で体の関係を持つことは一般的には早いのでしょうけど)かもしれないのに。妊娠ですべてが一変する。家族との関係、彼との関係、進路、人生。
親は、産んで(気づいたときには既に中絶ができず)里親に出し、高校受験にも間に合うとひかりに言うが、子を宿し10ヶ月の月日をベビーバトンの施設で過ごし、そして出産を経て、子への母性を感じてしまった彼女には、もうそれをなかったことになんてできないのだ。身内との関係も悪化し、家を出て新聞配達するひかり。妊娠がなければ、進学校に進み全く違う人生だったろうに。妊娠させた彼の人生には大きな変化がないのに。
『バカだったから』と一言で言うには辛すぎる現実。
でもひかりには、振り返っても育てることはできなかったのだ。
育ての親(永作博美)は、息子を愛し、また生みの親の愛も子に伝えていく。
けれど、ひかりとの何年越しの対面で、変わり果てた容姿と金銭を要求し脅迫まがいの電話をするひかりに、中学生のときの面影はなく、ひかりではないと断言する。
こうなってしまった背景がまた泣けてくる。
どうして闇金みたいなのに盗んだ金渡しちゃうの(涙)
妊娠騒動を経て、信頼できる大人や周囲との関係が断たれ、また自身で判断できるような経験や知見もなく未成熟。そういった子になってしまったのも、すべてあの初恋の末路からかと思うと本当に心苦しく。
ラストシーンと、エンドロールの最後に、この映画の救いがあるのだけれど。涙がとまらん。
中高生(男女)に見てもらいたい。我が子が中学生になったら見せようかな。
ただし、10ヶ月の妊娠期間にはつわりや苦しいことがたくさんあって、出産は命をかけた壮絶な痛み苦しみが伴うことは、この映画内には含まれていないということ、大好きな相手とセックスをすることが悪ではないということ、そういうこともきちんと伝えていかないとな、と考えさせられた。
『この子が生まれてこなければよかった』と少しでも思う可能性があるうちは、妊娠してはいけない、ということかな。