「違和感だらけなのに泣いた」朝が来る とまちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
違和感だらけなのに泣いた
映像・音楽・演技 本当に素晴らしかったです。文句なしで最高でした。
特に印象に残ったシーンは養子縁組の説明が終わってカーテンを開けるシーン。
ただカーテンを開けただけですが、それまでの不妊の暗い話から、一気に明るい展開に向かうことが示唆されていて、本当に上手で素晴らしかったです。光の表現にも強いこだわりを感じました。
若者のベッドシーンも、あえて肌をアップで撮影することで、違和感がないどころか、神秘的な初体験を上手に表現していて、流石でした。普通ならば事後までシーンを飛ばすか、布団をもぞもぞさせて終わることも多いと思いますが、それだと一気に事務所NGだったのかなとか、冷めてしまうところを、撮影手法によって見事に昇華したと感じました。
冒頭の、女性のりきむ声から入って、海を見せて、島に進んでいくところも開始数分で監督の力量が凄まじいことを表していました。本当に上手でした。
他にもいっぱいありますが、とにかく監督の力量に魅せられました。
出産のシーンがなかったのですが、今回の話の流れからはその意図が少し分からなかったです。
妊娠期間は長いです。10ヶ月あります。だんだんと人間の形になって、お腹も蹴ってきます。
そして数時間かけて産んだ瞬間、初めて「声」が聞こえて、命を感じて、「顔」を見て、一気にお母さんの感情が爆発しますよね。驚き、嬉しさ、安堵、不安、、、など。ここで今回の女の子は、さらにその子を誰かにあげなければならない、という辛さがあると思いますので、「え、ないんだ」と思ってしまいました。
脚本については違和感が多く、少し感情移入がし辛いところがありました。原作を読んでいませんが、そもそもそういった話なのかもしれません。
・脅迫をしてきた相手を、なぜ家に呼ぶのか?普通喫茶店とかでは?
・14歳の子供に、出産を許可させた上で、さらに高校受験させる親がいるか?
(絶対に堕ろさせようとしていた母はどうして急に許したのか)
・職場に来ないだけで警察が動くのか(犯罪をしているかと思った)
・警察が見つけられなかったのに、なぜ簡単に会えたのか
何よりも永作さん演じる母親が最後あんなにも号泣するのが違和感ありでした。
金目的かもしれませんが、我が子を奪いに来て、あの風態であれば、二度と関わらないで欲しいと思んじゃないでしょうか。
ましてや会いに行かせるなんて信じられなかったです。
そんな違和感があるのに、演技や演出がうますぎて何度も泣いてしまいました。