「期待を超えて」朝が来る おゆきさんの映画レビュー(感想・評価)
期待を超えて
辻村深月さんの原作は未読だったけれど、河瀬直美監督で映画化、俳優陣には井浦新さん・永作博美さん・蒔田彩珠さん、音楽には小瀬村晶さん・An Tôn Thấtさん…という大好きな布陣で、公開をそれはそれは楽しみにしていた作品。その膨らみすぎた期待を遥かに超えて、とても素晴らしい内容でした。
子どもを授かれなかったご夫婦、望まぬ妊娠をしてしまった女子中学生。それぞれの苦悩と、希望と、両者がベビーバトンを介して出会えたこと、そして再び交わっていくプロセスが丁寧に細やかに描かれていて、本当によかった。どのシーンも印象深いけれど、個人的には井浦さん演じる夫の、「もっと早くやめたいって言えなくてごめん」「この家には、親になれる人がいるだろ」という台詞(細かい言い回しは違うかと思いますが…)と、それぞれの場面でその言葉をしっかり受け止める永作さん演じる妻の表情が忘れらません。そして蒔田彩珠さん。ドラマ「重版出来」のときもその演技に魅了されたけれど、今回でますますファンになりました。
劇中の音楽に加えてC&Kさんの主題歌「アサトヒカリ」も染みました。特にエンドロールでこのメロディ、歌詞が流れ、最後の台詞に繋がるラストはとても素敵で、映画館からの帰り道、歩きながらスマホでこの曲を聴いてみたら、また涙が出ました。
「あん」でも感じたけれど、河瀬監督の映画は俳優さんたちの表情と光の演出が記憶に焼き付けられます。素敵な作品を観ることができて嬉しかったです。原作も読んでみよう。
【追記】
劇中音楽の担当として名を連ねていたお二人のこと。
一人は小瀬村晶さん。学生の頃から好きで、特にharuka nakamuraさんとのアルバムがお気に入りで、最近だとドラマ「中学聖日記」の音楽も印象的でした。もう一人は An Tôn Thấtさん。フランス生まれのベトナム人の方だそうで、ベトナム映画「第三夫人と髪飾り」や「ソン・ランの響き」の音楽も担当されていた方。個人的に奇跡の組み合わせで、お二人の存在は私が映画を楽しみにしていた理由のひとつでしたが、結果、本作品のなくてはならない一部になっていたと思います。