朝が来るのレビュー・感想・評価
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他人の生き方の背景を想像する力
養子の産みの親を名乗る人間が突然訪ねてきて「子を返せ、駄目なら金をくれ」と言う。そこからトラブルの傷口が広がってゆくのか…ついそんな漠然とした想像をしたが、その通りには進まない物語だった。
そこかしこにミスリードを呼ぶ描写が仕掛けられている。それも入り組んだ謎解きのパーツではなく、観客の「人を見る目」の先入観を利用した仕掛けだ。
前半は不妊治療を経て養子を迎えた栗原夫妻の物語。結婚から夫の無精子症の判明、養子受け入れに至るまでの過去の心の揺れが丁寧に描かれる。現在パートで息子の幼稚園でのちょっとした不穏な出来事の描写、茶髪にスカジャン、派手なネイルといった出で立ちで生みの親を名乗る女性。血の繋がりのない子への信頼はこういう時揺らぐのか、やさぐれた産みの親の登場でここから揉めるかも知れないなどと、いつの間にか栗原夫妻の視点で不安を感じ、環境や見た目から早めのジャッジを下そうとする自分がいた。
後半で別の視点から物語が紡がれ、序盤の謎が少しずつ明かされてゆく。真実が見えてくるにつれ、ただ寂しさや哀しさ、やるせなさが胸に迫る。ここでもつい彼女の生活を狂わせた悪人を探したくなったが、強い悪意を持って彼女を追い込んだ人間はいなかった。彼女と彼女に関わった人達の幼さや鈍感さ、不器用さなどの積み重ね。罪深いと言えるものもあるが、この作品は特定の誰かを糾弾する作りにはなっていない。
人が何故その生き方を選ぶに至ったのか。頭ごなしに否定する前にひと呼吸置き、今のその人を作った過去の存在に思いを馳せること。その人の言葉の意味、発した理由を考えること。結果的に相手を理解しきれなくても、そのちょっとした想像力が緩衝材になって社会を少し柔らかくしていくのかも知れない。あなたはそんな想像力を持てていますか?そんな問いかけをされている気がした。
実際の人生においては防衛本能が働くので、そのような想像力のアンテナは適時意図して働かせないと鈍りがちなものだとも思う。その辺の難しさも考えさせられた。
Fresh Scoop of Alternative Japan Family Life
Comparing the English titles is telling--True Mothers is the feminine version of Koreeda's Like Father Like Son. Unlike the switched birth conundrum in the latter, Mothers is about a couple who choose to adopt from a teen pregnancy. Sometimes the plot is a little confusing, and once the main characters are confused about the blood mother's identity--I was too. Not as concise as its elder but good.
辻村深月小説映画化の新たな傑作
辻村深月は伊坂幸太郎と並び愛読する2大ミステリ作家だが、後者に比べ映像化が少ないのは、辻村作品の大きな魅力である鮮やかな伏線回収と謎の解き明かしが視覚的に表現しづらいのが一因と考える。ただし「朝が来る」はミステリ要素が少なめで(敢えて挙げるなら、訪問者・ひかりの真偽、彼女の変貌の理由あたり)、特別養子縁組で交わった生母と育ての親の心の動きに重きが置かれるので、比較的映像化しやすかったのだろう(川島海荷がひかりを演じたドラマ版も良かった)。
河瀬直美監督は映像でストーリーを語るタイプの作り手なので、作品によっては好き嫌いが分かれそうだが、本作では原作のテーマと筋を十分に尊重して俳優たちの演技と台詞を構成した上で、監督らしい自然のショットを適宜挿入。河瀬テイストを刻みながらも間口の広いヒューマンドラマに仕上がった。「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」の蒔田彩珠の演者としての成長も頼もしい。
静かな語り口だが、脈打つ鼓動と光はとても力強い
静かな語り口だが、そこに脈打つ鼓動はとても力強い。この物語は線形には進まないし、家族ドラマかと思えばミステリーに針が触れ、究極的には全てを包み込むヒューマンドラマの域にまで達していく。また、いかなるどん底に落ちようとも、決して失われない“眩い光”も観る者の魂を魅了してやまない。これまで河瀬作品はいくつも見てきたが、今回はどれとも違った。物語の輪郭線がはっきりしているし、感情とオーバーラップする自然描写や、時にカメラがドキュメンタリータッチに切り替わる河瀬作品的な手法も、今回は全ての要素が「物語」の太い幹を支えるため、しっかりと身を捧げているように思えるのだ。こうやって原作の良さを伝えるとともに、映像でしか成しえない表現性を確立することで本作の世界観はぐっと奥行きを増している。俳優陣も素晴らしいレベルで重責を果たした。とりわけ永作博美と並び、蒔田彩珠の存在感が実に輝かしいのは言うまでもない。
朝斗の眼差しという着眼点に尽きる
河瀬直美監督作は初期の頃から全て見てきているが、これまでで最も広く受け入れられる作品になるのではないだろうか。辻村深月氏の素晴らしい原作を映画化するに当たって、2人の母親を繋ぐ「朝斗」の眼差しが必要だと強く感じたという河瀬監督に喝采を送りたい。
初号試写を鑑賞後、ある出演者と最寄りの駅に向かって歩きながら語らったが、年に数回あるかないかの「打ちのめされた感」を共有したことが忘れがたい。
永作博美と井浦新が良いのは充分に知っている。是枝組などで認識はしていたが、蒔田彩珠の才能に感動を覚えた。今後の活躍に目を離すことが出来ない新鋭である。
冒頭で触れた通り、「朝斗の眼差し」が徹頭徹尾、貫かれている。どうかエンドクレジットの最後まで席を立たずに余韻に浸っていただきたい。作り手たちの思いが、分かるはずだから。
産みの母親と育ての母親が抱える思いが交差したミステリーからヒューマンドラマになる感動の名作
本作は、直木賞&本屋大賞受賞作家・辻村深月の長編小説を映画化。河瀬直美監督の力量も加わって、シビアなテーマ(特別養子縁組)が優しく包み込まれるような作品に仕上がっている。
当時14歳だったひかり(蒔田彩珠)は少女らしい真っ直ぐな恋をして妊娠してしまうが、親も親戚も隠すことに必死になり、ひかりの将来を思い「特別養子縁組」の施設でひかりは出産の準備をして無事に出産をする。
そして、子供に恵まれなかった夫婦(永作博美・井浦新)は、様々な条件を乗り越えて、ひかりの子供の〝正式な親 ″となる。しかし、その後、ミステリー的な要素が加わり物語としての深みを増していく。
美しい場面には考え尽くされた「光」、悲しいときには「影」を感じるというような映像の調節も河瀬直美監督らしい演出だと思う。
14歳のひかりから貰った「手紙」を佐都子(永作博美)が最後に改めて読み直す際の、消しゴムで消された文章が「ひかりの人生」を象徴している。同時に、佐都子とひかりが一つに繋がる瞬間でもある。見終わった後は、是枝裕和監督の名作「そして父になる」を思い出した。深いところでは共通するテーマであると感じる。
河瀬直美監督作品は合わない? でも、この作品は見てみてください。
正直に言うと、5年くらい前の私は、河瀬直美監督作品との相性はあまり良くない感じでした。(これは個人的な趣味嗜好レベルの話だと思います)
ただ、2015年に公開された樹木希林さんが主演を務めた「あん」の時は初めて心から「良い作品」だと感じるようになりました。
そして、本作においても、「あん」の時と同様に「良い作品」だと思いました。
この2作の共通点は、原作があって物語がしっかりしている、ということでした。
ですので、これまで河瀬直美監督作品は苦手だと思い込んでいる人がいたら、ぜひ本作は見てみてください。
きっと、違った印象を持つと思います。
さて、本作は辻村深月の小説を原作に作られた作品です。不妊治療に悩む夫婦と「特別養子縁組」を軸に進みますが、時間の経過とともに意外な方向に物語が進んでいきます。
夫婦役を演じた永作博美と井浦新は流石の演技ですし、子供を産んだ蒔田彩珠は「星の子」の時と似た雰囲気でしたが、いろんな境遇を上手く演じ分けられていました。
予備知識は一切いらないと思います。
ただ、ラストの歌は、案外大事だと思います。なので、席を立つのは、全てが終わってからにしてみてください。
永作と蒔田の名演が光る、河瀬監督のまぎれもない代表作。
これは、泣いた。特別養子縁組をめぐる里親夫婦の葛藤と産みの母である少女のやるせない境遇が、まるでドキュメンタリーを観ているような臨場感で胸に迫り、最後は2人の母とともに何とも表現しがたい嗚咽にまみれた。すばらしい傑作である。
ストーリー、映像、音楽、俳優のどれも素晴らしく、おそらく本作は自分がこれまでほとんど理解できなかった河瀬監督のまぎれもない代表作として語り継がれることになるに違いない。
そして、本作がこれほどまでにリアリティーをもって映像化できたのは、他でもない河瀬監督自身が両親に捨てられた存在であったことと無関係ではないだろう。「生まれた時から両親がそこにいないという不確かな感じがずっとあって、それは映画を撮ることで埋められるものではないけど、私は確かなものや人のつながりを今も追い求めている」。過去にそう語っていた監督。
親がいない。それでも私は世界をこんな風に愛している――。
本作のラストで2人の母親に託された想いは、監督自身のそんな切なる願いでもあったのかもしれない。
永作と蒔田の名演を思い出すだけで、また泣きそうである。
性教育の題材にしてほしい
映画のテーマや、俳優さん達の演技が素晴らしかった。そのうえで感じたことを。
実際に中学生で妊娠・出産し、当時付き合っていた彼氏は何の力にもなってくれずに逃げ、必死に子育てを頑張っている方の記事を思い出しながら観た。
「好き」で一緒にいるのは素敵なこと。
でも、避妊なしのセックスは妊娠する可能性があること、妊娠したらどうなるか、そのリスクを思春期になる前の子供たちに、家庭や学校で教えるべきだと思う。
ひかりちゃんの彼氏は、ごめんだけ言っておしまい。
望まぬ妊娠をした場合、中絶を選んでも出産を選んでも、心身ともに傷つくのは女性。
1人で妊娠したわけじゃないのに。
この映画のように、助けてくれる場所と繋がれればまだいい。
けど、家族にも言えずに、助けてくれる場所があることさえ知らずに、病院にも行かず(行けず)孤独に産み落として、赤ちゃんを死なせてしまう人達もいる。
だから、思春期を迎える前の子供たちに、妊娠・出産に関する踏み込んだ性教育が必要だと思う。
同時に、もしも妊娠してしまった時は、どこに相談すれば良いかや、どんな援助が得られるかも伝える必要がある。
それが、これから大人になる子供たちや、新しい命を守ることに繋がると思う。
そして、親世代にも性教育の必要性や、どんな時でも子どもの味方でいることを伝える必要があると思う。
ひかりちゃんの親はけっこうひどい。
あの親の気持ちもわかるし、きっとあの反応が大半なんだろうけど、子どもの気持ちなんか全く聞こうともせず、寄り添おうともせず。
1番辛いのはひかりちゃんなのに。
大好きだった彼氏も離れていったうえに、家族にあんな対応されたら精神病むよ。。
優しさ・配慮のカケラもない親親戚。理解者も居場所もないひかりちゃんが可哀想でしかたなかった。
子供が欲しいのに、持てない人がいる。
望んでいないのに、子供ができてしまう人もいる。
望んだ人のところに来てくれたらいいのにね。
1人でも多くの子どもが、優しく温かく見守られて、のびのびと成長し、必要な知識を身につけて、幸せでありますように。
☆☆☆☆(全体の2/3) ☆☆☆★★(ラスト30分の駆け足ぶりか実...
☆☆☆☆(全体の2/3)
☆☆☆★★(ラスト30分の駆け足ぶりか実に勿体ない)
〜この監督さんの本質は、物語を構築するストーリー性の有る劇映画よりも、自分の感じるままに突き進む、この作品の様なドキュメンタリーにこそ向いているのではないかと思っている。〜
『玄牝』の自分のレビューより
本編にはドキュメンタリーを模した場面があり。やはりと言うか、寧ろ個人的には「これこそが、河瀬直美の真骨頂!」と言える場面でもあり。その辺りに注目して貰うと、更に興味深く観れると思っています。
※ 1(勝手に、監督本人の性格はかなりの意地悪なのでは?とも、『玄牝』を観た頃から感じていた。その辺りは、ひかりの家族を描く描写でも最大限に発揮されている…とも言えるか💦)
原作読了済み。
約150ページに渡って繰り広げられる〝 子供が出来ない夫婦の物語 〟
しかし、以後200ページは〝 子供を育てられなかった 〟幼い母親の、悲しい物語が延々と続く。
それまでの、長い長い重く苦しい話が、ラスト数ページで浄化され、思わず泣かされてしまった。
映像化にあたって、原作からの変更点が幾つか有り。主なところとして…
・不妊治療…岡山→札幌
・片倉家…栃木県→奈良県
・ベビーバトンの閉鎖…浅見が母親の介護の為→自身の重い病の為
・栗原夫婦の住居…武蔵小杉→(都内?)湾岸地域
・ひかりの転職先…広島で郵便配達から、元横浜で風俗に勤めていたコノミを探して、横浜のラブホテル清掃員
↓
横浜で新聞配達
細かいところは抜きにすると。この辺りの変更点には、それほどの違和感は無い。
特に、不妊治療を岡山から札幌へとした変更は。夫婦2人の気持ち、高額な医療費。更に、飛行機の天候で決断する辺りは、永井・井浦の演技&演出の力で説得力を伴っていた。
(原作でも、岡山には新幹線では無く飛行機で移動していたが、、、)
またこの夫婦の住居を、多摩川のほとり武蔵小杉から。海が見える地域にした理由が、《広島のお母さんの居る海と繋がっている》とした、感謝の想いの強さが現れているし。
〝 子宝に恵まれなかった 〟
その過去を浅見に持たせ。やむなく閉鎖せざるを得なくなってしまった事の想いが。浅見の人間性の豊かさを表現させており。それらを過剰に説明せず、顔の皺だけで表現する演技で、観客を一気に納得させてしまう浅田美代子の素晴らしさ。それを引き出す演出力は、活字では味わえない部分でもありました。
映画本編は、ファーストシーンからかなりゆったりと。深く静かに浸透するが如く進んで行く。
《愛に恵まれた心を潤す光の洪水》
《愛に見放されてしまった心の隙間を埋めて欲しいささやかな光》
自然との調和は、河瀬作品には欠かせないキーワードの一つでも有るだけに。映画本編の中で《らしさ全開》で、数多くの自然描写が多く。中でも、タイトルの由来となる〝 ひかり 〟の描写には。原作には描写されない、これら多くの《幸福》を求める人間の 〝 ひかり 〟への想いを、様々に表現されていた。
観客の心に、染み込んで行く様な、このリズム感。
嵌まり込んで行けば行くほど、この河瀬直美ワールドの虜になるのは間違いない。
…但し、、、
いわゆる、エンタメ性の作品とは一線を引く作品だけに。言わば説明過多とも言えるエンタメ作品を観なれた人には。どうしても、もどかしいくらいな座りの悪い椅子に、長い時間座り続けているかの様な、感覚を覚えてしまうかも知れず。観る人を選ぶ作品とも言える。
ファーストシーン近く、初めて電話の呼び出し音が画面に被るが、家族は部屋を出ている。
しかし、カメラはゆっくりと廊下を前進する。
おそらく、妻の心の不安感を表現したい…との思いからだろう?とは思うものの。少し意地悪く言ってしまうと、「B級ホラーか!」…と思ってしまった。
以後、映画は暫く手持ちカメラで。画面がブレる映像が続くのが気になった。
原作の有る映画作品としては、原作を補正しつつ。かなりの成功を収めている…と、言えるとは思うのですが。ただ1つだけ残念だったのが、最後の最後。ひかりが広島に戻るところから、ラストまでの駆け足が、余りにも早すぎてしまい。そこまでの、リズム感の良さが、一気に損なわれてしまっている気がします。
それと、これは原作・映画共に言えるのですが。ラスト数ページでの、秀逸な描写を活かす為にも、刑事が訪問する場面は要らなかったのでは?…と、思ってはいるのですが、、、
ひかりは(確か)何処に居るのか分からない我が子に向けて手紙を書いていたのでは?
こちらの勝手にラストへの流れを…
「ごめんなさい!」と言って出て行く
↓
これまで書き続けた手紙を、郵便受けに入れる
(又は、原作にもある「筆跡を調べて欲しい」)
↓
読む
(重要な一文に気付く)
↓
…で、ラストへの流れは完璧になる…とは思ってはいるのですが💧
浅田美代子の演技が素晴らしかったのは、既に書き込みましたが。
(そもそも、彼女の演技が素晴らしいのは。『赤い鯨と白い蛇』の頃から際立ってはいましたが)
それ以外でも、永井・井浦の夫婦コンビや、
(原作だと夫が目立たないだけに)
子役の男の子。その他の出演者の演技には説得力が有り。やはり蒔田彩珠ちゃんの熱演有ってこそ…は、記しておかねばなりません。
※ 2 そしてもう1人、山下リオ。
山下リオは、近年カメレオン女優化して来ていて。今後共、目が離せない女優さんの存在になりつつある。
最後に、どうでも良い場面なのですが、個人的にツボった場面が有りました。
実家に帰ったひかりが、姉の部屋に入り「子供っぽい!」…っと、一言呟く。
その時に、数曲のクラシック曲を中心としたピアノ曲の調べが、メドレーで聴こえて来るのですが。
その中で、ほんの一瞬だけ♬ 虹を追いかけて ♬のメロディーに変化するのです。
2020年1月31日 TOHOシネマズ市川コルトンシネマ/スクリーン2
※ 1 その後、東京オリンピックでのやらせ映像で有ったり、過去のパワハラ疑惑で有ったり…と。
色々な問題が明るみに出るに従って、以前に黒澤明が語った言葉…
「作品にはその監督の資質が出るんだよ!」
…の言葉が思い出される。
と同時に、何となくこの監督の作品を観るに連れて感じていた、多少の違和感が思い出されたものでした。
※ 2 予想通りに、その後の彼女はデビュー直後の可愛子ちゃんキャラから完全に脱皮。
今では、日本映画界に於ける貴重な脇役女優としての地位を着々と築いている。
静かに語りかけてくる映画
挿入される風景は美しくて、決して押し付けではなく命の尊さを感じられる
俳優さんたちの表現もいい表情されてる。
あの世界の中で確かに息づいて生活を営んでると思わせてくれる。
生みの親に「私はあの子の親ではありません」と言わせてしまった自責の念はいかほどか…と思うと胸が痛む。
エンドロール後の仕掛けも、いやらしくない程度でほっこりする
蒔田彩珠さん、なんかいいよな。と独特な雰囲気を感じる人だ。
純真無垢からやさぐれていくまでにリアリティがあると感じられる。
映画を観てどうしても原作が読みたくなった作品でした。
原作も、さらに良かったです。
ドキュメンタリー(Netflixで観る方は注意)
涙が出て止まらない。
映画ならではの美しい映像、
河瀬監督ならではの自然描写、
ドキュメンタリーの手法で撮ったであろうパート、
時には画よりも「ドキュメンタリーを観ているのでは?」と思わせるガンで撮ったような柔らかさと緊張感のある「音」、
作品・脚本・監督・人間が求める完璧に答えた役者さんたち。
やられました。
原作、読もう。
Netflixで観る方は注意。
スタッフロール入った途端、冷徹に左上にいっちゃいます。
(本当にこれなんとかならんのか)
できれば、気持ち切らさずスタッフロールに戻ってくださいね。
わたしも子どもが欲しかった。
今でも心の片隅でそう思ってる。
多くのキャラクターに寄り添える作りが見事
大きく時間軸をずらしているところと小さくずらしているところを織り交ぜ、一本道で変化のないドラマをサスペンスかミステリーのように仕上げている構成は面白い。
結果が先にあって、どうしてそうなったのかを見せる。片倉家に朝斗がいるところから始まる。片倉家に母親を名乗る人物が訪ねてくるところから始まる。大きな2つのずらしとその中に小さなずらしが挟まり、困惑することなく緊張感だけが高まる。
内容だけでなく物語構成でも娯楽性を生み出せているところはいい。実に刺激的だった。
監督の仕事の一つは誰の視点で撮るかを決めることだ。登場人物の誰かの視点。神の視点。誰でもない視点。例えばスピルバーグ監督は常に「私の視点」と言っている。これらを駆使して物語に厚みを持たせたりするわけだ。
多くの場合は、主人公の視点、あるいは主人公を見る視点が多い。スピルバーグ監督の場合は主人公を見るスピルバーグの視点ということになる。
前半を片倉夫妻の物語に、後半を朝斗の生みの親であるひかりの物語にしている構成。つまり前後半で主人公が変わっている。
注目すべきキャラクターが代わるということは、それだけ一人のキャラクターに寄り添える尺が短くなる。そうなるとその人物のことを理解するのが難しくなる。
スピルバーグ監督のある作品で、注目すべきキャラクターが変わり3部構成のようになっているものがある。
その作品の内容はいいものの観ているコチラがキャラクターに寄り添えずあまり良くなかった。平たく言えばエモーションがないのだ。
常に自分の視点で撮影するスピルバーグ監督はバラける主人公を捉えきれなかった。
その点本作の河瀨直美監督は実に上手くこなしてみせた。
途中ドキュメンタリータッチになるところがあるが、あれは登場人物の一人であるひかりが撮影していた場面と思われる。浅田美代子演じる浅見静恵が「撮るの?」と問う場面があったと思うのでひかりが過ごした間に撮影していたのだろう。
ひかりが見ているものと同じものを私たちが見ることで自然と気持ちがひかりに寄り添っていく。擬似的な同じ体験は、彼女が抱える想い、これから抱える想いに対する理解を深める。
これら地道な積み重ねによって、エンドロール後の朝斗の言葉があざとすぎたとしてもズドンと響いてしまうのだ。
最後にもう一つ。
子に対するスタンスをなるべく多く描いたのは好感が持てる。
子どもを産んだ人、産めない人。愛したい人、愛せない人。育てたい人、育てたくない人。
これが絶対の正義であるかのような一つに絞った押し付けではなかったのはいい。
結果として片倉夫妻とひかりが際立ったようにも思える。
長尺すぎるが、心情が丁寧に描かれた良作
河瀬直美監督らしい手法で撮られており、一部のシーンはドキュメンタリーを観ているかのようである。演者に台本ではなくフリーに語らせていると思われる演出は河瀬監督の真骨頂だが、そのために長尺でもう少しテンポが良くてもいいのではと感じるシーンがいくつかあった。
主人公の少女は以前テレビドラマでの演技を観た時はさほど印象に残らない感じだったが、この作品では独特の空気感があり演技に引き込まれた。まだ中学生であってもちゃんと母性が芽生え、生まれたばかりの我が子を本当は手放したくない思いが丁寧に描かれている。だがその思いを母親は完全に否定する。親の立場から見れば世間体もあり、まだ幼いはずの娘の妊娠に裏切られたような気持ちもあったか。でも娘のこれからの人生のためにと選択した結果が、娘の人生の転落のスタートとなってしまったのがなんとも皮肉である。もしこの母親が、娘の思いにもっと寄り添う事が出来たならば、少女にはどんな人生が待っていたのか。どんな選択が幸せだったのか。転落していくばかりの少女が不憫だった。
井浦新夫婦の子供がほしいという切実な思いはしっかり描かれている。作品のテーマは非常に難しい問題であり、色々な考え方があるため意見は分かれそうだ。
ラストシーンに救われたような気持ちになった。
お母さん
色んなお母さんがいて、そしてまだお母さんを求めている色んな娘さんたちが泣いていて。ひかりちゃん、なんにも悪くないんだよね。瑞々しいピュアな恋がとても美しく描かれていたことで余計に絶望を感じました。学校もベビーバトンの講演会に来てた人も出てた人も親戚も、素人の方ですよね。とてもリアリティがあり既視感すら感じました。
蒔田彩珠さん、素晴らしい女優さんです。
川瀬監督の最高傑作かも・・・
これはもう映画論や映像論を超えて来てる作品。ラストエンドロールの最後の最後まできっちりと作品として仕上げてあってめっちゃ感動する。日本を代表する映画監督としての風格を感じる。
女の子。
女の子は弱い。実は社会的にみて圧倒的弱者なのだ。
そして子どもより、女性は弱い部分を抱えて生きている。
普段我々が見ているのは、運のいい幸運な女の子なのである。
このことを強く感じた映画で、それは決して男性には分からないだろう。
演技が素晴らしく、光が透き通る演出が河瀬監督らしく、良かった。
演技がいい。
永作さん&井浦さんの演技がとてもよい。
色々と複雑な感じで難しいところだけどね、よかった。
演出としては、顔を見せそうでみせない感じがよかったが、お金の出どころがよくわからずなのと中学生の男の子の描写がもうちょっとほしかったかな。
どっちなんだ
途中まで
一緒に寮にいた友達か?
新聞屋で働いていた友達か?
と思っていたが、
結果は母。
本で読むともっと詳しく伏線がみれて
おもしろく、感動するかなと思った。
それにしても、主演の二人の
演技が最高に良く、
里子を迎える運びになるまで
涙なしにはみれないし、
人事ではないとおもった。
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