「進んだ価値観がごく自然に備わった高校生たちに宿った希望」ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
進んだ価値観がごく自然に備わった高校生たちに宿った希望
『エイス・グレード』を観た時には、自分たちが生きてきた時代とは隔世の感がある青春映画の新しい形に目眩がしたものだが、こちらは古き良き青春映画のフォーマットをベースにしつつ、新しい世代の価値観が織り込まれていて、懐かしくも新鮮。主演がジョナ・ヒルの妹だからというだけなく、明らかに『スーパーバッド/童貞ウォーズ』の現代版だと思うし、青春映画につきものの「終わってしまう切なさ」みたいなものを突き崩す陽性なエネルギーも痛快だった。
ただ、これをアメリカの等身大の青春像と捉えていいのかはわからない。というのも、登場する高校生たちの、バカなようでいろいろわかっている感やバランスの取れたジェンダー意識みたいなものは、もしかすると一種の理想像ではないかとも思ってしまうから。
例えば主人公を含む本作の高校生たちは、エリート高に通い、選ばれし者だけが通れる狭き門を突破して名門大学や広い世界に飛び出していく。それだからこその知性と意識の高さなのか、時代が変わって今の常識はここまで進んでいるのか? 正直、前者にフィクションが混じっているおかげではないかと邪推してしまうのだが、こういう映画がバンバン作られて、老若男女の常識がアップデートされていくなら大歓迎である。