「センスのいいバディもの」ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
センスのいいバディもの
実にセンスのいい「冒険もの」「バディもの」でした。
ぱっと見は、『アメリカン・グラフィティ』みたいな、いわゆる「ワンナイト」もののテンプレートに沿っています。
「勉強に捧げた高校生活だったが、一晩で青春を取り戻すために、卒業パーティの夜にはじけよう!あわよくば初体験も…」って女子高生2人組の一晩のお話なので、セリフも少々お下品。
そこから、どことなく『ハングオーバー』シリーズや『スーパーバッド 童貞ウォーズ』『グッド・ボーイズ』を思い出しもするんですけれど、それらと一線を画しているのが、主役の二人がうぶな女子高生ってこと。
タイトルにある"BOOKSMARAT"とは、「知識はあるが、要領が悪く、実行能力に欠ける」という意味で、頭でっかち耳年増な状態。
言ってしまえば「なりは大人だけど、心は小学生並」ですよ(だから、下品なのはセリフだけで具体的な描写はなしなのも、観てて安心)。
実際は単なるワンナイトものではなく、「冒険もの」「バディもの」なんですわ。
コメディとして落とし込んでいるけど、「パーティに行く」だけでも、彼女にとってほとんど未踏のジャングルに行く大冒険と同じ。
まるで一人で電車に乗るのが大冒険だった、千尋(『千と千尋~』)みたいなもんです。
そこで、酒やドラッグを経験したり、キスしたりってのは、彼女らにとっては街を牛耳るマフィアを殲滅させるのと同じくらいな命がけの挑戦で、それを二人が時に喧嘩しながらも突っ込んでいく姿は『リーサル・ウェポン』や『ラッシュアワー』『マイアミ・バイス』などの相棒映画が近いイメージ。
そして、その周りにいる登場人物たち(親に先生、同級生)が、多くの「冒険もの」「バディもの」に出てくるような悪人ではなく、皆今の時代を反映した特性を持ち、キュートで個性的な面々なので、観終わった後にすごくハッピーになれるんですよね。
(おっさん的には、過ぎた青春を思い出しつつ照れるところもありますが)
実に上手い構成と演出。
たぶん先に脚本があったと思われるので、全ての手柄は監督にはよらないと思いますが、それでもこのハイセンスな仕上がりは監督の手腕が大きいのかと。
本作が初監督の女優オリヴィア・ワイルドによるフィルムですが、こんな素晴らしい監督が生まれたことをお祝いしたい気分。