劇場公開日 2025年9月6日

「監督/脚本だけでなく生き物係までしている感のあるアンドレア•アーノルドの生き物描写はいいけれど……」アメリカン・ハニー Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 監督/脚本だけでなく生き物係までしている感のあるアンドレア•アーノルドの生き物描写はいいけれど……

2025年9月25日
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鑑賞方法:映画館

先日観た『バード ここから羽ばたく』(2023年作品)が非常によかったので、アンドレア•アーノルド監督の別の作品ということで鑑賞。こちらは2016年の作品です。この作品、日本では長くスルーされてきたみたいで今回が劇場初公開の模様。

この作品の印象について言えば、まあ、それなりに面白かったけど、鑑賞後感がそれほどよくありませんでした。主人公が貧困の中にありながらも、ラストでは微かに希望が見える『バード…』に対して、こちらは主人公のスター(演: サッシャ•レイン これがデビュー作。監督が街角でスカウトしたそうです)が所属する若者たちのグループーー集団でバス旅行しながら、各地で雑誌を販売して歩合制でカネを稼いでいますーーこれがなんだかカルト集団ぽくってちょっと気持ち悪いです。このあたり、アーノルド監督は英国の出身なので、英国が舞台の『バード…』のときは荒んだ貧民街を描きながらもどこか好意的な部分を残しているのに対し、こちらのほうではアメリカの経済的に恵まれない若者たちの拝金主義や、弱肉強食、優勝劣敗のアメリカ型資本主義を皮肉って描いているのかなと思いました。結局、カネのためなら、なんでもあり、なんですよね。

あと、この監督、虫やら鳥やら小動物やらの生き物の使い方が非常にうまいです。本作では人間界に迷い込んだそれら生き物を自然に返してやるんだ、という形で描かれていることが多かったように思います。

主人公のスターは18歳の女の子です。彼女は18歳にしていろいろと経験を積み重ねてゆくわけですが、観ていて、これでいいのかといたたまれない気持ちになりました。生き物が自然に帰ってゆくのはいいんだけど、やっぱりスターは本来の家庭に帰ってゆくのがいいのかなと思いきや、彼女の父親(たぶん継父)はDV男だしな、とまた暗澹たる気持ちになります。まあ幸せを祈るぐらいしかできないけど、大人への階段を一段また一段と登っていってほしいなと心から願いました。

Freddie3v