劇場公開日 2023年3月10日

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「国家によるでっち上げ」Winny kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0国家によるでっち上げ

2023年3月31日
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鑑賞方法:映画館

国家というものはときにとんでもない犯罪をでっち上げるときがある。「オフィシャル・シークレット」や「モーリタニアン 黒塗りの記録」のような映画を観てもわかるが、それはたいてい見せしめだったり、警察や検察の意地だったりが遠因だったりする。
本作に出てくるWinny事件も同じ構図。著作権を侵害したのはあくまでユーザーで、ソフトウェア開発者が逮捕されるなんて本当にアホらしい。無罪を勝ち取るために奮闘した弁護士たちの戦いは面白かった。裁判の争点や対策、尋問の戦略なんかがとてもわかりやすく説明していたのが大きい。ただ、無罪となる瞬間を映像化したわけではないから爽快感はない。むしろやりきれなさの方が強く残ってしまう。たぶん最高裁まで行くプロセスは後半になればなるほど地味なんだろう。それは想像に難くない。
Winny開発者の金子さんは初手からやってはダメなことをやりまくっていて、プログラムのアイデアやプログラムを構築すること以外のことには関心がない。でも、優れた研究者であり、優れたプログラマーだったのだろう。そんなことがよくわかる演出だった。たぶんそこには東出昌大の演技がかなり貢献した気がする。素晴らしかった。
この手の裁判で裁判長を務める人はどんな感じなんだろうと思っていたが、(映画では)プログラムのことなんかまったく理解できなそうなおじちゃん(おじいちゃん)だったことに笑ってしまった(実際の裁判長は違う雰囲気かもしれないけど)。やはり最初に逮捕した警察と検察、一審の裁判官の罪は大きい。たかだか20年前の話。これからもこんなでっち上げが作られる可能性はあることが恐ろしい。

kenshuchu