「47氏、さすがにここまで不思議くんではないだろうw」Winny アモルフィさんの映画レビュー(感想・評価)
47氏、さすがにここまで不思議くんではないだろうw
事実ベースの話は苦手です、なぜなら結果が分かっているから・・・
この題材でどこまで面白くできるのか、全然期待せずに見にいったのもあるかもしれませんが、予想外に面白かったです。
キーとなるのは、作中で一貫してP2P(ぴあつーぴあ)と表現していますが、現在ではブロックチェーンと呼ばれる技術ですね。
作中にブロックチェーンという言葉は一切出てこないですが、当時はまだそんな言葉はありませんので当然です。この辺りしっかり作ってて好感がもてます。
その他細かい作り込みで見どころ満載です。
コンピューター音痴の監督がやりがちなサイバーな表現もありませんし、
チラッと映るソースコードが人間業とは思えない変数名を使っていたのは、もしかして逆アセ?とか、
ジオシティーズとかもしかして本物のアドレスなんだろうかとか、
47氏の部屋に古いマックが2台あったけど68000とかパワーMACはないんだなぁといったような・・・
ちなみにWinny以前にはWinMXという(こちらは全くのpear to pearでブロックチェーンではない)ファイル共有ソフトが流行っていて、その次世代ということから
Mの次はN、Xの次はYということで名付けられたらしいです。
ネタバレ改行
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冒頭、のちの担当弁護士が言う通り
「ナイフで殺人事件が起きてもナイフを作ったものが罪に問われることはない・・・」
誰しも恐らくそう考えるだろうし、警察や検察もそう考えていただろうから、罠にかけてまで起訴に持ち込んだんでしょうけど、そこまでした理由を疑問に思わせつつ話は進みます。
同時進行で裏金の内部告発のエピソードが入れ込まれますが、これにうまいことミスリードされて飽きずに観てられたと思います。
まさか裏金の話が動機なんてことは・・・さすがにそれだと安易すぎる・・・などとちょっと心配になりながら見せられていきますが、終わってみるとそんなことはありませんでした。
マスコミも一丸となって印象操作に加担して47氏を追い詰めていくところなど、S大の監獄実験よろしく命令されて思考停止したコマの集団の危険性==個人の価値観や正義感は無視して無感情に役割を果たす姿であり、告発者である警官は匿名化ツールがあれば脅迫電話や尾行などに怯えることもなかった=個人の正義感のメタ。
サイコパス化した組織VS個人の正義感の構図。
実際、作中でも語られているように裏金は誰かが私腹を肥やす目的ではなく、内閣機密費のような使途を明かせない費用に使われていたものということで落ち着いています。(とはいえポケットにいれてもバレなそうですが・・・)
思考停止してコマとして働く組織人と全て自分でリスクを受け持つ個人どちらになりたいだろうか・・・
こういう状態は強い権力を有する官僚やマスコミなどに限らず組織にいれば陥りやすいと考えるべきで、そうはなりたくないからといって周りに煙たがられる存在で耐えられるのか・・・また、告発した側の個人も法的には正しいが・・・という考え方も
気になる警察側の動機については明かされませんが実話ベースならそれもアリかと思います。むしろ無理やり解釈を入れるよりは不明なことは不明で、成行で起きたということでいいのではないでしょうか。