劇場公開日 2023年3月10日

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「"僕だって、警察の横暴を知ってしまったら、闘うしかないじゃないか!" 飽くなき探求心を持ち続けた大人子ども達の友情と、国家権力を盾に同族を庇う子ども大人達の法廷闘争映画」Winny O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0"僕だって、警察の横暴を知ってしまったら、闘うしかないじゃないか!" 飽くなき探求心を持ち続けた大人子ども達の友情と、国家権力を盾に同族を庇う子ども大人達の法廷闘争映画

2023年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 革新的なファイル共有ソフト"Winny"を開発した金子勇さんが著作権法違反幇助の疑いで逮捕され、弁護団とともに警察・検察側の権力やメディアと闘った延べ7年余りの後半生を映画化したノンフィクションドラマ。
 実は個人的にはこの当時の世事の記憶は曖昧模糊としているというか、Winnyの開発が始まったという2002年は高二、金子さんが逮捕された2004年は浪人生だったので深く考えはせず、道具の開発者とその悪用者の罪業の在処ということでダイナマイトみたいなものか、というぐらいの印象だったのが正直なところです。
 ただ、思い返してみると確かに逮捕当時の喧しさに対して最終的に無罪を勝ち取られた際の報道の印象は薄かったこともあり、一方で映画的な脚色は有るにせよ渦中の人々が開発者の権利と未来を守るために闘われた経緯はこういう形で俯瞰出来て良かったと思いました。
 また一方で渦中の事件と同期する形で地方県警察の組織的な会計不正の問題もスリリングに描かれ、真意の見えない不気味な原告としての警察の暗部として双方の事件が収斂していく展開はミステリーとしても秀逸だったように思います。
 本作を観てとみに感じたのは、他人から著しい時間を奪うということはそれだけで取り返しのつかない暴力だということでしょう。
 公権力は言うに及ばず、大きな組織ほど所属している人間の多さからして一人一人の労力の重みを軽視しがちで、相手方の組織が小さければ小さいほど、ましてや個人であればどれだけ致命傷となるか慮ることは難しいでしょう。つくづく警察側が原告ということの異常さを感じたところです。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)