「テクノロジーと司法のせめぎ合いはこれからも続く」Winny h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
テクノロジーと司法のせめぎ合いはこれからも続く
冒頭の壇弁護士の譬え話が面白い。「殺人に使われた(食卓)ナイフを作った人を罪に問えるか」と(実際はナイフ製造ではなく高速道路建設を譬え話に使ったらしい)。おそらく常識的には罪に問えないと答えるだろう。
では包丁ではなく、拳銃なら?爆弾なら?ちょっと考え方が変わってくる。(専門外で恐縮だが)このイシューは製造者の目的とその意図か。ナイフは食品を切ることが主要目的であり、人を刺すことが目的ではない。この作品での裁判でも実際そこが争点になっている。京都府警もそのことを意識して(金子氏を騙して)供述書をとっていた。
正直、検察も裁判官も最後までWinnyの技術の本質を理解できていなかったと思う。
では20年経った今、司法のリテラシーは追いついているのか。残念ながら日本の司法は言うに及ばず、一方、米国ではISISのビデオを載せていたYouTubeの運営元であるGoogleに責任があるかの最高裁の口頭弁論が始まっている。もしGoogleに法的責任があるとされれば、インターネットの自由度は大きく後退していくであろう、techの将来において重要な裁判になる。
今後もAIや人工生命技術等で同じような裁判が繰り広げられていくであろう。司法関係者のリテラシー向上はもちろんのこと、その行方を見守る私たちもアップデートしていかなくてはいけないとあらためて痛感させられる作品。
日本の未来の技術者の開発意欲を潰してはいけないとの金子氏と弁護団の熱い想いに敬意を表したい。
コメントする