劇場公開日 2023年3月10日

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「リアリティ溢れる法廷闘争と東出昌大の演技が見物」Winny 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0リアリティ溢れる法廷闘争と東出昌大の演技が見物

2023年3月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「Winny」という実に懐かしい言葉を聞き、思わず本作を観に行きました。Winnyのことは今でも覚えていますが、当時利用者が逮捕されたらしいということはなんとなく聞いたような気がするものの、開発者が逮捕され、一審判決は有罪となり、その後最高裁で無罪となったまでは知りませんでしたので、非常に興味深く観ることが出来ました。

開発者であった金子勇氏をはじめ、基本登場人物は実名のようで、この点だけでも日本の映画、ドラマにしては結構攻めてるなあというのが第一印象。内容的にも、当時のネット界におけるWinnyの位置付けが、警察の取り調べから裁判でのやり取り、弁護士同士の会話などを通じて手に取るように理解できる創りになっていて、中々”教育的な”味付けになっていました。特に悪役になった検察・警察側の人間の描き方は、非常にリアルに再現されていた感じでした。この辺りは、2018年に行われた「ホリエモン万博」というイベントの映画祭でフランプリを受賞し製作が決定したことを踏まえると、さもありなんという気がしないでもありません。

また、容疑者として逮捕された金子勇氏役を演じた東出昌大も、彼のプライベートでのスキャンダルを踏まえると、中々に適役だったと思います。前述の通り、第一審で有罪となってしまった金子氏に対して、ダブル主演だった三浦貴大演ずる壇弁護士は、「日本では一度有罪判決が出ると、譬え最終的に無罪になろうとも、一生拭えない汚点になる」という趣旨の話をします。東出昌大さんのスキャンダルは法廷で裁かれたものではありませんが、それが身から出た錆とはいえ、一生背負っていかねばならない十字架だけに、金子氏の人生とダブっていると感じたところでした。肝心の演技の方も、二枚目の東出がコンピュータ”オタク”の主人公を演ずることで全く二枚目感を出していなかったところが新鮮でした。

また、本筋とは別の物語として、愛媛県警の裏金捻出事件が描かれています。捜査協力費などの名目で組織的に不正な裏金を捻出していた愛媛県警の事件が内部告発により明るみになり、その証拠となる資料がWinnyを通じて流出するとなるという下りは、金子勇氏の物語とは全然別物でありながら、劇中劇として厚みを加えていたように思えました。実際こちらの話も実話であり、これはこれで映画が一本創れてしまうような話なのですが、創作映画であれば、金子氏と警察の不正を内部告発した仙波巡査部長(吉岡秀隆)が出会うところ、本作では全くすれ違わないで終わりを迎えるところがまた良かったかなと思います。

そんな訳で、評価は★4としたいと思います。

鶏