蟹の惑星のレビュー・感想・評価
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「へぇ~」の唸り声連発
『蟹の惑星』は、この干潟に暮らす様々な蟹の生態を蟹の視線にまでカメラを下ろして徹底的に追った作品です。いやぁ、これが凄く面白いのです。水生生物にはある程度知識があるつもりの僕でも、「へぇ~」とか「ほぉ~」と何度も唸りそうになりました。動物ドキュメンタリーと言うとTVでは今や「ダーウィンが来た!」だけになってしまいましたが、あの番組の様に安っぽい演出や煽る様な台詞はなく、映像の力を信じてとことん蟹を映し切るのです。いきもの好きの人ならば、間違いなくその力強さに胸躍るでしょう。
更に、本作が魅力的なのは、この蟹の生態を紹介するのが、干潟の蟹を長年にわたって定点観察し続ける85歳の在野のナチュラリスト爺さんなのです。肩の力の抜けたこのお爺さんの語りには、生き物への尽きぬ好奇心が溢れており、しかもその記録がとても骨太なのです。
「僕は、まさしくこんな爺さんになりたいんだよぉ~」
と、憧れの眼差しでウットリしました。
(2019/10/12 鑑賞)
両腕がないカニは、どうなるって???
どっかのミニシアターに行った際に、この映画のチラシを見かけて、ちょっと記憶の片隅にあった。で、たまたまテレビで放送してたので録画した。そしてそれを観た。そういう流れ。
どうしても観たかったとか、蟹にすごく興味がある、ってわけじゃなかったので、完全にながら観した。
この映画や吉田さんの観察行動に、学術的価値があるのかどうかは、自分には全然わからない。
でも、興味深いところもあった。3点。
ひとつは、脱皮に関するうんちく。
ふたつめは、吉田さんの言葉。
「40年働いて、自分が好きな事をして生きれる時間は20年もない。ならば、早いうちに自分のやりたいことをやらないと..」
そして最後は、この干潟に住む蟹が少なくなっている、と言う事実。
それが、東日本大震災を境にして地質が変化したからだろうという推察。
この映画の製作公開した監督の意図は知る由もないが、特に3つ目の事実は、自分には深く刺さる「怖い」事実だった。今後、地質の変化だけで事態は収まるのだろうか?? ホント、怖い。
でも、1回観れば十分な映画。
次回放送あっても観ないなぁ。
足の下にも宇宙がある
同時公開されている「東京干潟」と、同じ時期、同じ干潟で活動する、80歳半ばの老人を描いたサイエンス系のドキュメンタリー。気楽にカニの世界に近づける内容だ。
干潟のカニは、
・何を食べているのか
・ハサミの先に感覚はあるのか
・巣穴の形はどうなっているのか
・「自切」して大丈夫なのか
・共食いするのか
・なぜ陸上で呼吸ができるのか
を知りたい人は観るべき。
また、スクリーンサイズで、70分の間、カニのクローズアップ映像をひたすら見続けたい人にもお勧め。
小さくて警戒心が強いカニを、1本1本の毛まで見えるアップで撮影することは、かなり根気が必要な作業だったはずだ。
マリンバの演奏にのった、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」も楽しい。
観察者の吉田さんのみならず、4年にもわたる監督の執着が実った作品である。
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