「監督は「カメ止め」を上回らねばというプレッッシャーに負けたんでは?」スペシャルアクターズ 高武蔵守師直さんの映画レビュー(感想・評価)
監督は「カメ止め」を上回らねばというプレッッシャーに負けたんでは?
実際、物凄く期待してたんですよ。この上田監督なら、前回を上回る「大どんでん返し」があるに違いない、途中がどんなに稚拙でも、それはラストの伏線かも知れない、って。2は1よりスケールアップしないと許されない、が宿命ですから。
で、結論。悪いほうにスケール大きくしちやったな。あれやったら、台無しだ。
南アフリカに負けた、ジャパンは終わったんだなあって寂寞感で見てたんだけど。上手いのかどうか微妙な無名の役者も、安っぽく嘘臭い展開も、まあ、そういう座組みなんだからいいや、と思える程度には、面白く見られたんだけど。
…ラストのどんでん返し、あれはない。まあネタバレになると悪いから言わなかったけど(言ってるか?)、あれは台無し。確かに「どんでん返し」のスケールは大きいけど、それやったら、今まで見せられていた全ての登場人物の努力が、全ての観客のワクワクが、全部意味がなくなっちゃう。台無し、ってのは、まさに、こういうことを言う。
まず、辻褄がぜんっぜん合わなくなる。主人公はいつもスマホで検索している奴なんだから、あの教団がああなったというニュースを読みたいを思うはずでしょ。それが、どこにも出てなかったら、おかしい、と思うでしょう。
まず、弟のプロフィールより、ニューズの検索をしないか?
つまり、ラストのどんでん返しがぜんぜん成立してないおかげで、映画全体がカスになってしまうんだよ。
監督が脚本を持ってきたとき、「これ、ぜんぜん辻褄あいませんよ」てチームの誰か進言しなかったのかねえ?
上田監督、「どんでん返しは『カメ止め』を上回らなければならない、というプレッシャーに押しつぶされた、といえます。
最初から無理なんだよ、いままで世界に存在する何万、何十万のどんでん返しを徒手空拳で(この予算と座組みで)上回ろうなんて。そんな無理して奇跡を起こそうとすることはなかったんじゃないの?
もっとさ、「おい、俺をここに引き込んだのは、最初から、俺に立ち直って欲しいと思ったんだろ?」「・・・ハハハ、そんなことはないよ」「あそこで会ったのも偶然じゃないだろ?」「うーん、まあいいだろ」くらいのラストで良かったんじゃない?
それとも、実はあの姉の女将が、逆に教団を乗っ取って自分が教祖になろうと画策してたのに、主人公たちがそれをブチ壊して、あーあ、みたいな。「旅館経営なんてやってられないわよ、あんな大赤字の旅館、いくら親の遺産でも迷惑よ! そんなに言うならあんた(妹)女将やってみなさいよ、すぐに潰してベソかくに決まってるのよ、そんな妹の顔を見たくないから頑張って芝居してきたのに、あー、馬鹿みたい!」みたいな。
ありきたりかも知れないけど、ちょっとビターで収まるなオチなんて、いくらでも思いつくじゃない、素人でも。
ラストだけ忘れれば、楽しい映画だった、と言うしかない、なんて、いかにも残念。
できればラストを際撮影した「ホントウはこっちだよ版」を作って再公開すべきだ。