「ゲームの世界を描いた映画…に留まらない!」フリー・ガイ サブレさんの映画レビュー(感想・評価)
ゲームの世界を描いた映画…に留まらない!
ゲームの世界のモブ男が愛に目覚めてプレイヤーのごとく自由に大活躍する映画。モブに見えて実は強い…というネタは漫画に小説に沢山あるが、この映画はそれだけに留まらない。
もちろんモブ男が活躍するギャップを描いたコメディパートも大変面白いのだが、ゲームの世界の描き方も奥深い。
まずはゲームの世界観が良い。グラセフのような犯罪都市でモブキャラたちが何を考えて生きているのかを描いているのだが、犯罪都市で生きることに諦観しつつも現実世界さながらの欲望を抱いている感じが好みだ。
犯罪都市と現実世界、それぞれの常識のバランスがいい塩梅で混ざり合っていて、だからこそ引き込まれる。感情移入する。見事というほかない。
次に、モブキャラが活躍することでプレイヤーたちがどう考え、行動するか?に強いリアリティを感じた。
暴力的なゲームをプレイしていても、モブキャラを観察し、愛でるような心が芽生えるという描写は、たとえるならグラセフとどうぶつの森どちらも好きという人間の矛盾描写といえるだろう。
悪人と善人がいるのではなく、悪人と善人どちらでもあるという人間の面白さを描いたというのは考えすぎだろうか。
そして、やはり、主人公であるガイがなぜ特別だったのか、その理由が非常に良い。無駄なく、無理なく、しかも爽やかで、しかしちょっといじらしい。
ゲームには製作者の意思が反映される。それは第一に、製作者はプレイヤーにどう楽しんでほしいかという意味だ。レディ・プレイヤー・ワンでも製作者の意図を探る描写はあった。他のゲーム映画でもそういうものは多い。
しかし、『製作者の意思』をこの映画ほどダイレクトに使った映画は他にあるだろうか…いやあるとは思うが、とにかくそれほど驚いたという話だ。オススメだ。