劇場公開日 2020年7月3日

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「シニアらしい作品ながらも、そこで終わらない良作」チア・アップ! 山田晶子さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0シニアらしい作品ながらも、そこで終わらない良作

2020年7月9日
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鑑賞方法:試写会

ダイアン・キートンが演じる個性的な女性力は今でも色あせない上に、彼女自身から溢れる魅力も重なり、出る作品にはほぼハズレがない。ただ、映画のチラシを見ると少し期待外れになるのかも、と戸惑いながら鑑賞。
本作は、主人公マーサ(ダイアン・キートン)が、46年間住み慣れた都会のアパートで私物を売り払い物を減らして、高齢者が集まって街を形成し暮らすコミュニティ「シニアタウン」に引っ越すところから始まる。
その後のマーサは、新しい土地のルールなどもわからず「この先はゆっくり過ごしたい」という気持ちから、新居ではなるべく1人でいることに努めている。
ところが、お節介な人の多い「シニアタウン」では、自然とご近所とのフレンドシップが生まれてしまう。
そんな中、マーサが気を許すようになった友人とお酒を飲みながら過ごしていると、段ボールにあったチアリーディングのユニフォームから、マーサがチアリーディングに憧れていたことが発覚!
「今しかない」と、かかってしまったエンジンは、老若男女関係なく止まらない。
そこからは、(何人以上というノルマがある)サークルを結成しようと、もうシニアとはかけ離れたような、若者以上のドタバタ劇が始まる。
その序盤となるチアリーディングのオーディションの時点で既に面白い。
オーディション後、彼女達がチアリーディングのためにどれだけ努力しているかを思い知らされる。痛いのは心ではなく身体なのは仕方ない。
高齢化社会の在り方を感傷的にならず、素直に楽しく考えさせられる女性群像劇。
シニアならではの数々のハプニングが起こる度、若者やお堅い大人などに対して、シニアらしい経験値がモノをいう手段でサラリとやってのける瞬間は見ていて爽快。
結果、見終わった後は「歳を重ねたベテランの女性達」から元気をもらい、日常の身体や人間関係の痛みをほんのりと和らげてくれる特効薬のような作品(約90分)だった。

山田晶子