「只々寒い・・」北の果ての小さな村で odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
只々寒い・・
デンマーク人の青年アンダースはグリーンランドの極寒のイヌエットが暮らす村にデンマーク語の教師として赴任する。子供たちはまるで言うことを聞かないし村人も素っ気ない。
グリーンランドはデンマークの旧植民地だから先住民のイヌエットにしてみればデンマーク人の教師は目障りな存在、そんなアンダースが教え子を通じ村人の生き方に次第に理解を深めてゆく過程を綴ったドキュフィクション映画。
監督のサミュエル・コラルデさんは元はテレビのドキュメント畑の人、フランス東部の雪深い山村に育ったこともありオーロラの幻想的な雪国グリーンランドに関心が高かったそうだ、旅行中に映画の舞台となったチニツキラーク村を気に入り映画の構想を練っている時に知り合った教師が退職し新任の教師が赴任する話を聴きつけた、それが本作のアンダース先生ご本人、村人にも協力を依頼し映画化にのってもらったわけである。終盤の探検旅行以外はほぼ実話ベース、脚本はあるもののほぼ当人登場のドキュメンタリーだからドキュフィクション映画なのです。
イヌエットはモンゴロイドで日本人とも共通の遺伝子を持つと言われているだけあって昔の日本の田舎の子のようで親近感が湧いてしまう。探検家の植村直己さんも北極探検前にグリーンランドで犬ぞりや狩猟の訓練を積んでいたそうだ。
郷に入れば郷に従えという現実もあるのだろう、映画の終盤で教師を諦めて村人に同化してしまったかのように見えて残念に思えたのだが決してあきらめてはおらず、圧しつけ教育ではなく寄り添うことで教師としての自覚を得たようで何故かほっとした。
どういう生き方が良いかなど軽々に決められるものではないがいつまでも自然に頼った狩猟生活というのもリスクが高い、幸いレアメタルなど地下資源は豊富な国、可能性、選択肢を広げる意味で教育は全ての子らに必要ということだけは言えましょう。
個人的には観ているだけで寒くなるし観光としてもとても無理、子供が銃口をやたら人に向けるのに大人は注意しないところや犬の親子が軒下で凍えている様はちょっと頂けなかった、子連れの熊は狩らないデリカシーがあるのならもう少し気配りが欲しい気もする。
それはよく言われますが、本多勝一さんの『カナダエスキモー?』を読むと良く分かりますよ。いずれにしても
郷に入っては郷に従えに共感を持ちます。