劇場公開日 2020年2月28日

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「エンタテインメント!」初恋 andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0エンタテインメント!

2020年3月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

なんというのでしょうか、何でも受ける三池崇史監督の最近の評判は散々でございましたが、いや、このエンタテインメントを見せられたら「参りました」と言うしかあるまい。
「初恋」はその甘酸っぱいタイトルとは裏腹に、開始早々誰かの首が吹っ飛ぶバイオレンス映画なのだが、最初から首で笑かしにきやがる。
そして窪田正孝ですよ。今だから言うけど結構昔から推しだったんですよ。どんどん売れちゃってまあ...とお母さんみたいなことを言ってますけども。醒めたボクサー。親も知らぬ。勝っても盛り上がらぬ。合ってる...。
ある意味「生きがい」を見いだせない青年に突然「死」の宣告が降ってきて、その衝撃が彼を目覚めさせ、破茶滅茶な事件を起こす。ある意味医者の滝藤賢一が全ての原因である。
いやまあキャスト全員濃すぎ。何もかもが裏目に出る染谷将太(裏主役だろ、何もかもが窪田正孝と正対する)、いつまでも何とかなると思っているある意味おめでたい悪徳刑事大森南朋、時代に合わない武闘派漢気ヤクザ内野聖陽。日本のヤクザの皆様もチャイニーズマフィアの皆様もちゃんとそれぞれの味。藤岡麻美さん最高でしたね。ちなみに占い師ベンガルも良かったぞ。
いやそれにしてもベッキーですよ。ああ、そうね、ベッキーにはこういうリミッターを解放した役が合ってたのね...。謎の信頼感です。強いというより、ガチの激しさね。昔からあの解放を見せる機会があればベッキーの評価全然違ったのかもな、と思った。
勿論タイトルは「初恋」なので、これまたリミッターが外れた窪田正孝と、あまりにもどん底の小西桜子の本当に淡い、淡いロマンスを主体にしてはいます。だがそこに破茶滅茶な面子を絡め、「仁」を見せ、策士は落とす。群像劇の中に立つ、極限の「初恋」。
「死」を意識したときに半ば投げやりになって却って生を見出すってのは割とよくある描写なんですが、窪田正孝はものの見事にこれをやってのけました。やはり私の推しは凄かった。
小西桜子さんは、いい意味で新人ぽさがなかったですね。大物の匂いがします。あの役は媚があからさまに出たらおしまいですが、そこが巧かったと思う。
物語としてはそこまで独創的かと言われるとそうでもなく、ところどころの遊びはうーんというところもあったのですが、非常にシンプルかつスリリングなエンタテインメントでした。そしてラストシーンが最高に良かった。

andhyphen