「おれはしょうきにもどった! とにかくメチャクチャだがその勢いや良し!」パーフェクション たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
おれはしょうきにもどった! とにかくメチャクチャだがその勢いや良し!
元天才チェリストが引き起こす狂気と復讐を描いたサスペンス・スリラー。
Netflixオリジナル作品。
描かれるのは音楽業界に蔓延る性犯罪。
この業界においては「セクハラを受けるのも仕事の一部」的な風潮がひと昔前はあったというが、近年#MeToo運動の活性化により大物音楽家の悪行が暴かれつつある。
例えば、メトロポリタン歌劇場のドンとして名高い指揮者ジェームズ・レヴァインは、性的虐待の告発を受けたことで2018年に同劇場を解雇。
グラミー賞も受賞した大指揮者シャルル・デュトワも過去の性的暴行を告発され、ロイヤル・フィルハーモニーやボストン交響楽団から追放された。
ロイヤル・コンセントヘボウ管弦楽団の主席指揮者だったダニエレ・ガッティも性的暴行の容疑で解任されている。
名だたるレジェンドが過去の悪行を暴露されている訳だが、おそらくこれらは氷山の一角。まだまだ明らかになっていない事件はあるのだろうし、おそらくは現在進行形で行われているセクハラもあるのだろう。
何よりヤバいと思うのは、所属していた楽団を解雇されたとはいえ、デュトワやガッティが今でも普通に大御所として活動を続けているという点。
権威主義と実力至上主義にどっぷりと浸かった音楽業界に自浄作用はないし、結局のところお客さんも彼らの完全追放は望んでいない、という事なんだろう。
とどのつまり被害者は泣き寝入りするしかない、という最悪な状態ですね🌀
そんな現状に喝ッ!を入れるのがこの映画。
女が泣き寝入りしているだけだと思ったら大間違いだぞゴラァ!!みたいな、なんとも豪快で大胆な作品であります。
こう書くと社会派な作品のように思われるだろが、全然そんな事はない。
まぁ無茶苦茶な映画なんです💦
全4幕で構成されている映画なのですが、それぞれが全く違う色合いを持っている。
1幕目だけだと、元天才チェリストが引き起こす嫉妬と狂気のサスペンス映画。あー、なるほど『ブラック・スワン』的なあれね、と思うことだろう。
しかし2幕目で映画は突然バイオハザード・パニックものに。そして3幕目では恐怖のデスゲーム映画、4幕目ではグロテスクなスプラッター・ゴア映画になっちゃう。
変幻自在というか、荒唐無稽というか…。まぁとにかく出鱈目な映画なのです😅
観客を退屈させない、という意味ではかなりの傑作!
観ているあいだはとにかく面白かったし、ランタイムも90分とちょうど良い。
最悪過ぎる中国の秘境小旅行は、あまりにも最悪すぎて爆笑してしまった!
とはいえ、あまりにもエキセントリック過ぎる展開の数々にはキョトンとしてしまう事もしばしば。
特にあの種明かしは無理あり過ぎるだろっっ!!💦どんでん返しにも程がある程がっ!
「これもあなたの洗脳を解くためなのよー」…ってやり過ぎだろバカっ!
あの肉切り包丁をスッと取り出すところ、あまりにもトンデモな描写で大笑いさせてもらいました🤣
手をちょん切られるわウンコやゲロを漏らされるわで、最悪すぎる責苦を負わされたのになんやかんやで主人公のいいなりになっちゃうリジー。
これはただ洗脳されている相手が変わっただけなのでは?
「おれはしょうきにもどった!」というヤツほど正気には戻っていないという皮肉を描いているのだとしたら、かなり秀逸なブラックコメディ映画。
とにかくエクストリームな内容なので、一人でも多くの人に観てほしい。面白いっすよ。
…中国の秘境から発生した黄熱病が描かれていたから、てっきりコロナ後の作品かと思っていたら、実はこれコロナより前の映画なんですね。
マスクを差し出すシーンとかあったし、なんだか予言的な内容の不思議な作品でした。