「大衆の心を動かすスポーツの力を示した実話」キーパー ある兵士の奇跡 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
大衆の心を動かすスポーツの力を示した実話
劇映画でサッカーを描く際、キーパーは案外良いポジションであることを本作が証明した。現実の試合ではストライカーや攻撃を組み立てるミッドフィルダーが注目されるが、俳優が流れの中で妙技を再現するのは難しい。その点キーパー役ならある程度の特訓で、際どいシュートをジャンプして弾いたり、ドリブルや浮き球に体を張ったりと、断片的な好プレーをカット編集でテンポよく見せやすいからだ。
元ナチス兵が英プレミアリーグで活躍し国民的英雄になり、敵同士だった英独の平和の懸け橋に…という展開は感動的だが、大衆の心を動かすスポーツの力を如実に示した例でもある。古代ローマの闘技会以来、人間同士が闘う見世物は憂さ晴らしや現実逃避になる娯楽だった。観戦は闘争心に響き高揚をもたらすが、一種の代償行動として暴力衝動や憎悪の解消に役立つ。ただしそうしたスポーツの力は、権力者に悪用されもし、諸刃の剣であることを忘れるべきではない。
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