「今週の埋もれた名作その2。実話ベースのとってもお勧め。」キーパー ある兵士の奇跡 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
今週の埋もれた名作その2。実話ベースのとってもお勧め。
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※ 10/24 15時15分 誤字脱字修正
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※ ナチス政権がもたらした悲劇からできたものであるため、どうしても内容をそれにふれざるを得ませんが、ここで政治的なお話をするつもりはない点を断っておきます。
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今年42本目。実話をベースにしたもので、最後にその後の余生などが語られます。一部は誇張したり省略したりしているのでしょうが(110分)、おおむねは実話ベースなのでしょう。
この手の映画は、グループ分けすると、
1. ナチス政権そのものを「肯定的に」取り上げる
→ 本国でもタブー。日本でも表現の自由はあるが事実上タブー扱い。
2a. ナチス政権を否定的にとらえ、かつ、主にユダヤ人と結びつけて取り上げる(いわゆる、「ホロコースト」問題など)
2b. ナチス政権を否定的にとらえ、かつそれ以外の捉え方で取り上げる
…の3グループ(1の類型は日本でも考えにくいので実質2グループ)ですが、2bをテーマにしつつ、2aの要素も入っている、複雑なお話です。
しかもテーマはタイトルからわかる通り「キーパー」がいるスポーツ。そんなにたくさんありませんよね?サッカーです。
サッカーというと華々しい雰囲気を受けますが、得点王だの何だのでよく取り上げられるFW選手と違い、「守護神」として取り上げられることはあっても、得点と直接結びつくことがほとんどない(例えば、比較対象として、野球)、GKは扱いがどうしても薄く、こうした実話があることに驚きました。
サッカーに関する知識(リーグの降格昇格、ルールなど)は不要です。ただ「サッカーの超基本ルール」と「ゴールキーパーの例外ルール」(=特定のエリアだけで手を使える)だけは知っておくとよいです。
戦争が終わってドイツ(ここでは東西ドイツを一括して扱う。以下も同じ)も少しずつ仲直りしていきますが、今でもわだかまりのあるユダヤの方々との激しいやり取りが繰り広げられます。
その中で「ヒトラーやその側近がやったことならともかく、何も知らないほとんど強制的に(いわゆる)赤紙招集で従事したただの一般元兵士を責めるのはフェアではない」と仲裁に入るシーンがあります。これは賛否両論ありますが、確かに一理ありますが、一方で特にユダヤの方が受けたダメージは非常に大きいことは周知の事実で、理論とは別に感情論として「一般兵士であってもドイツ人は許せない」と思う人が当時も今もいるのももっともであり、その両方の側面から描かれており、非常に色々な意味でフェアだな、と思いました。
そして今でもドイツはそうした問題を戦争が終わって何十年が終わっても抱えている一方で、「政治と文化」を切り離して各国、特に隣国と交流しているように、同じ敗戦国である日本も一層そうなってほしい(日本も、他国もそうなってほしい)と強く思いました。
※ 日本も、主張するところは主張しても(例えば、領土問題)、例えば台湾は国としては承認しないが(外務省)、「事実上」国扱いされている、というように「本音と建前」があったり、ギスギスはしても民間交流は盛んだったり(もっとも、今年はコロナ問題…)、そこは程度の差はあっても同じでしょう。
減点は下記の0.3ですが、0.1のプラス要素を加味して4.8とし、切り上げで5.0としました。
0.3 … どうしても、GKを扱うという「サッカーとはいえマイナーなポジション」であるが故に、こう、「サッカー映画か?」というと明らかに違う一方、「サッカーも半数以上占める割に地味」という点は否めません。ただ、史実を着眼点にしている以上、GKをFWに書き換えたりすると支離滅裂でありやむを得ませんよね。
こうした「地味さ」はどうしても出てしまうので、他で補うところはあっても良いのかな、と思いました(ただ、積極的減点要素ではない)。
+0.1(特別扱い) … 主に、ドイツとイギリス人が多く登場しますが、ユダヤの方や、一部には他国の方も出ます。イギリス人が立派な英語を話すのは当然ですが、他国の方も、実は「その国の出身としての英語」として話している、換言すれば「第二外国語としての英語で話している」ように演出されており、たどたどしい部分があります(イギリス人は言葉がすらすらと出てくるが、そうでない人物の場合、言い間違いや語彙ミスが見られる)。こうした点も気を配ったのかな、と思い、特別に加味しました。
※ これは、日本人が英検1級、準1級を持っていても、「ネイティブには一歩及ばないが話すことはできる。でも、ネイティブとは対等には話せない」というのと同じですね。