「「天国」はあるのか?」天国にちがいない Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
「天国」はあるのか?
終始、おかしみを催させる作品で、しばしばニヤニヤして観てしまった。
一方、公式サイトには、ご丁寧にもストーリーがすべて書いてあるのだが、文章で読んでも全然面白くない。
そのギャップが見所だ。なぜ映像にすると、可笑しくなるのか?
ただ、スレイマン監督は台詞よりも、画や音楽で語らせる作風のようで、「東京フィルメックス」における監督とのQ&Aを聴かなければ、自分にはよく分からない映画であったことも確かだ。
監督自身が登場するのは、この作品が監督自身の全く個人的な話だからという。
「パリの日本人」も、実際にその場で経験したことだとか。
「鳥」のシーンも監督自身の経験に基づき、映画においては一部はCGだが、基本的には訓練された鳥を使っているそうな(笑)。
このような、ちょっとシュールな日常のスケッチの集積で作品が構成されている。
「天国にちがいない」という題名は、願望でもあり、失望でもあるのだろう。
故郷とパリとニューヨークでは、それぞれ違う世界がある。
しかし、「今や世界中がパレスチナ化している」という。そこが「故郷との類似点」だが、直接に政治に係わる内容ではないし、その意味するところは、自分にはよく理解できなかった。“開かれた自由で平和な社会”という意味でないことは確かだろうが。
本サイトの「生きる全ての人に素朴な疑問を投げかける意欲作であり、パレスチナの愛と苦悩、そして世界の不条理」という評は、誇大である。
映画の中でもプロデューサー風の男に突っ込まれていたが、パレスチナだけがテーマではない。
あえて言えば、「人間の愛おしさ」がテーマであろうか。迷惑な隣人も含めて・・・。