燃ゆる女の肖像のレビュー・感想・評価
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美しい、完成度の高い作品
とにかく画面が美しい。
構図と、色調のバランスがとても綺麗だ。
どのシーンを切り取っても格調高い絵画のようです。
アートを媒介としたこの映画じたいが、立派なアートだと感じました。
それから音楽の使い方がひじょうにうまい。
無駄なBGMはいっさいなし。
それだけに要所要所に流れる音楽がグッと感情を揺さぶる。
もちろん登場する女性たちも綺麗です。
緊張感のある画面の中の美しい女性たちを観ているだけでも僕はしあわせでした。
で、ストーリーは、というと、正直、途中から「ちょっと退屈やなぁ」と思って観てました。
そんなエッチなことばかりしてて、ちゃんと絵が描けるんか、もっとマジメにせんかいや、と。
でも、終盤やられましたね。
肖像画の中の「お嬢様」と再会する場面には、思わずニンマリ。
ラストは……そう、この映画は、このラストを観るためにあるのです!
観終わったあと、「もう1度観たい」と思っている自分がいました。
追記
そしてもう1回観に行きました。
LGBT礼賛映画には些か食傷気味です。
全く予備知識を持たずにこの映画を鑑賞しました。ロビーにあった、フライヤーにグザヴィエ・ドランの賛辞が載っていたのが気になり、ちょっと嫌な気になりました。私にとってはLGBT映画に対してはもう、あんまり、拘るのはいい加減にしろ、と怒りたくなる気分で、一杯です。なぜ世の中の人々一人ひとりの性的指向を全て詳らかにしなくてはいけないのでしょうか。ゲイでもレズでもいいのですが、そんなことは、どこかもっと、離れたところで騒いでくれ、と声を大にして言いたいです。この映画のようなレズビアン万歳の映画にはもう、うんざりです。普通の肖像画家の映画を撮ることはできなかったのでしょうか。はっきり言います。なんだか、今の世の中、どこか狂っています。
赤と緑のドレスの戯れ
ある肖像画家と絵のモデルとの出会いから別れまでを静謐な創り方で描いた人間ドラマ。観客は絵の創作過程のみならず、その間二人が共有した秘密を見ることとなる。
映画の描写は、ロウソクの仄かな光や自然光による撮影、火の爆ぜる音や衣擦れの音を拾う音声、荒涼とした島の風景、対象物を画面の中心で捉えるフォトジェニックな画作り、無駄な会話を配した進行が重なり作品の格式を高めている。そして筋立ての面白さが群を抜く。
主人公である画家の人物造形は、冒頭すぐの海と次の島のシ−ンで観客に提示される。性格や顔の造りが男性的な画家。絵の創作過程では、ある無理難題が画家を縛る。それが画家とモデルが秘密を共有してから縛りから解き放される。
その他の印象的のことは、夜に女性たちが集まり低く地鳴りのように唸りながら手拍子を打つ場面、何度も出てくるキャンバスでのデッサン、堕胎の実践と傍らの赤ん坊、画家とモデルが着ていた赤と緑のドレスの重厚さ、そして画家の凛々しいおでこと眉毛。
久しぶりにクソ映画に巡り合いました。
18世紀のフランスが舞台。
とある女流画家が、ブルターニュの島に住む母親から、娘の結婚相手に渡す肖像画を描いて欲しいと依頼されます。気難しい娘に、最初は画家だと明かさず1枚目の肖像画を仕上げますが、娘には気にいらず、画家もそれを受け入れ、母親に描き直しを約束します。しかし、母親の出かけている5日間、肖像画の作成と並行し、娘とただならぬ関係になってしまい…。
というあらすじですが、これ自体、何のひねりもないストーリーに加え、つまらないエピソードの数々。何より登場人物に全く魅力がない。演技もヘタだし、美人でもない。加えて、横井和子さんの翻訳が「グーグル先生か!!」っていうくらい棒訳。
途中挿入される音楽も、民族性など全然感じられず、映画の雰囲気をぶち壊していました。
題名の「燃える女の肖像」なんて、いかにも思わせぶりなタイトルですが、最初にそのタイトルを現すへたくそな絵が出たっきりで、それ自身は映画全体を貫くテーマとも何とも感じられません。そのエピソードにあたる、娘のドレスに、焚火の火がつくシーンの演技も棒。暗闇に浮かび上がるドレス姿の娘も、なんら感銘を与えない。肝心の女流画家の絵も大したことがない。(むしろ、途中で出てきた、娘を描いた絵のほうが、よっぽど上手でした。)
「映画史を塗り替える傑作!」とか「世界の映画賞席巻!!」とか、前評判ばかり高い作品でしたが、こんなクソ映画に受賞させるなんて、評論家の目が腐っているとしか思えません。
これだけはっきりと、わかりやすいクソ映画なのに、評価が高いなんて、不思議です。
切なく美しい恋の物語
望まぬ結婚を控える貴族の娘と、彼女の肖像を描く画家のラブストーリー。女性二人の燃え上がる恋が切なく美しい物語。絵画を見ているかのような素晴らしい映像が印象的な作品ですが個人的には絶賛するほどの傑作とは思えない。
2021-8
絵画のような
スローな展開の序盤は正直昼下がりに観たこともあり少し眠気を催してしまったが、その後の展開はなかなかに見応えがあった。
18世紀のフランスが舞台で現代日本に生きる我々と感覚が異なるとはいえ、人を想う心というのは変わらないもの。
安易な終わり方ではなく考えさせられる深いラストシーンになっていて心地よく映画館を後にすることが出来た。
全ての要素がある時点に凝集する語り口がみごと。
『僕の名前はズッキーニ』(2016)の脚本を担当するなど、脚本家と映画監督として活躍している女性作家、セリーヌ・シアマの最新作。
作中で言及される詩とその解釈、見つめる側と見つめられる側の関係性、当時の女性の立場などなど、作中でさりげなく提示された様々な要素がある時点でぎゅっと繋がっていくという物語の大きなうねり、それを映像でしか表現し得ない方法で提示したシアマ監督の演出は非常に素晴らしいです。シアマ監督と主演のアデル・エネルはかつてパートナーだったということで、そうした関係性が物語を豊かにしているのでしょう。
確かに物語としてはフランスの歴史ものであることは確かですが(さらに場所の設定や衣裳などに、イギリスの要素も多少取り入れているとのこと)、本作のテーマは非常に現代的な要素を多く含んでいるため、ジャンル映画として二の足を踏む人がいるとしたら、とてももったいない作品です。当時の衣裳に詳しい人であれば、当時は一般的ではなかったポケット付き衣裳をあえて採用するといった、映画ならではの現代的な味付けについても楽しめるのでは、と思います。
なお、シアマ監督は日本でも様々な媒体のインタビューに応じていて、それらはどれも非常に読み応えがあるのですが(「女性作家」と自ら名乗ることへの強い意志についての語りが、とりわけ印象に残りました)、結構結末に触れちゃっているので、作品を新鮮に楽しみたい方は鑑賞後に読みましょう!
期待値高すぎたかな?
絶対観るべきとのレビューをみて観に行きました。決して外れ、とは思いません。美しい風景はどこをきっても一枚の絵のようでした。でも、ストーリーは男尊女卑の変わらない世の中を突きつけられ、あなたは何をしているのと問われても、答えることもできず呆然と外に出ました。
繊細で、美しい何度も見返したくなる傑作
自分はどちらかというと、アメリカ映画の文法に親しんで映画を見てきたのだけども、ヨーロッパ映画の必要最小限の絵だけで語るべき物語が巧みに構成されているような「粋」な作品を見ると、「いやー、これには勝てない。巧い。」と参ってしまう事がある。ベルトルッチの「シャンドライの恋」、ダルデンヌ兄弟の「ロゼッタ」や「自転車と少年」、そしてヨーロッパ映画ではないがその文法上にあるイラン映画「別離」。そういった作品に出会える事は映画ファンとしてこの上ない喜びなのだけど、見つけようとして見つけられるようなものではないし、いつ出会えるのかはわからない。そして、ついにまた、新たな名作に出会う事が出来た。
「燃ゆる女の肖像」は、静かに淡々とただただ美しい画面が次から次に映し出され物語が紡ぎ出される。二人の女優の凛とした存在感と美しさに見とれてしまう。画家である主人公の「絵を描くために相手を観察する」という行為が観客がカメラを通して人物をじっと見つめるという行為と重なり、映画的快楽となる。そして女性同士の恋愛が受け入れられなかった時代の社会的抑圧がもたらす緊張感が、二人の関係のエロティシズム、愛の輝きをより浮かび上がらせる。その愛のあり方は、最近マルセルカルネの古典的名作「天井桟敷の人々」を見たばかりなのだけど、そういったフランス映画の伝統にもつながるような実は普遍的な愛の姿でもあると思う。
演出面も、女性の姿が幻想として見える場面での(おそらく)液晶スクリーンを使った独特な撮影や、焚火の場面でのクラッシックではない現代音楽的なコーラス、その焚火の場面の直後のユニークなジャンプカット等、さりげないながら驚きがあり素晴らしい。もちろんその中で一番印象的なのは焚火のあのシーンと〇〇〇〇の物語とつながるラストだと思うが、それだけではなく、絵画的、象徴的な映像が巧みに散りばめられている。例えば、侍女の花の刺繍だが、最後の場面では、花瓶に生けていた本物の花の方は枯れてしまっていたが、刺繍は完成する。それは「私の今の姿を記憶の中で覚えていてほしい」と願う主人公の思いとも重なっているし、最後なぜ主人公が思いを寄せる女性に再開した時に、本物ではなく絵の中の彼女としか視線を合わせることが出来ないのかという事とも、響き合っている。
簡単に語りつくせるような作品ではないが、とにかく、これからも何度も見て物語と絵の美しさを味わいたくなるような素晴らしい作品だった。
流行映画に流されない意地を感じた
ドラマチックな演出も無ければ、
劇的な音楽さえ排除して、
演じる役者と、そこに映し出される映像に全てを託したのは、
真の映画人としての姿を見たような気がする。
今の玩具映画に馴らされた私には、ある意味興奮させられた作品だった。
ラストシーンのビバルディ四季に燃えた
ミラノへ嫁いだエロイーズがスカラ座だろうか?「四季の夏」の演奏を聴くシーンには、勝って画家マリアンヌとの鮮烈な恋を連想させる。激しく燃える二人の絡み合いと乱れるほどの情熱、嵐のような恋を思い出して濡れるエロイーズ。こんなにもエロチックにビバルディの「四季」を聴いたことがなかった。エロイーズの身の悶えと吐息、嵐や雷を連想させる「夏」の楽章は新しい出会いでした。最後に一緒に悶えました。よかった。
絵を描くことは感情がここにあるという証 当たり前のように押し殺さな...
絵を描くことは感情がここにあるという証
当たり前のように押し殺さなければならない感情の叫びを表現をすることで前に進む
補足:時代と絵描きとしてのリアリティは無い(絵画への理解の足りなさが目立つ)が、フィクションとして、リアリティを無視してまで、人物の感情にフォーカスしたのでは。ある意味、漫画的。
男が出てこないから女の苦しみが分かる
予告映像の段階で設定の美しさと画の美しさが際立つ作品だったので、ムビチケを購入し見てきました。非常に素晴らしい作品だったんですけども、己の文化的感受性が低いので、この映画を生涯ベストと言い切れる感性が欲しい、転じてこの作品の良さをもっともっと知りたいと思わされる1本でした。
こういう女性ならではの映画って結構あると思うし、今回も不条理な結婚や母親の見ていないところでと体を気にしつつの中絶など、よくあると言えばよくあるわけで。男性がたくさん出てくることでマイノリティー感を感じたり。家父長制を明確に示したりすることなく、男性キャラクターを徹底的に廃することで浮き彫りになる女性の苦しみというのが面白かったです。
また、音楽が使われるシーンが明確に少ないんですけど、だからこそ使われたときの悍ましさというか破壊力が凄かったです。謎の海での集会は二人の関係性を高める上で重要な効果を果てしていたし、ラストシーンのとある登場人物の振り向くわけには行かないという強い決意と悲しみを思い切った長回しにオーケストラをあてる演出、どちらも素晴らしかったです。
とにかく映像が美しかったので、映画館で観ることができて良かったと思いましたし、表情や視線の一つ一つに気を配られていて素晴らしかったと思いました。
この激情は…
18世紀フランス。ある貴婦人に、娘のお見合い用肖像画を描いてほしいと依頼された画家と、結婚を嫌がる娘との間に巻き起こる恋愛劇。
娘のエロイーズは結婚を嫌がっている為、マリアンヌは画家ということを隠し、陰で肖像画を描かなければならないという難しい展開。
しかし、2人近くで過ごすうちに、お互いに特別な感情が芽生え始め…といった物語。
一部を除き、BGMの一切ない静かな進行でありながら、セリフのひとつひとつが意味深というかロマンチックというか、聞き流すことができずに惹き込まれる。
許されぬと知りながら互いを想い交わり合う2人。しかしそれでも別れの日、エロイーズがああ言ったのは、愛されていたと思いたかったからか?或いは!?
そして一番大事なシーン。
単に気づかなかっただけなのか?敢えてなのか?
だとしたら彼女の想いは…。
所々で観客に解釈を委ねられるような場面があるが、本作を考察する上で欠かせないのが、ギリシャ神話のオルフェウスの話(とはいえ私も知らなかったのですが)。
この物語では「振り返ること」に、特別な意味があるのですが…。
女性の社会進出がまだまだ薄かった18世紀、さらに女性同士の恋心という難しい状況。
それでも燃え上がってしまう想いを2人はどうしようとしたのか!?
いつまでも観ていられそうなラストシーンに、皆さんも燃え上がること間違いなし‼
この激情は、是非劇場で体感してほしい!
ミニシアターランキング3週連続1位は伊達じゃない!!
…と、宣伝みたいなレビューになってしまいましたが、ホントにラストはトリハダモノ。
個人的2020年映画ランキングも固まってきたところで、突如出逢ってしまった強豪作品だった。
盛り過ぎだと思います。
その昔「禁断の恋」と言えば、身分違いや国違い、家門違いなどなど。近親者ってのも流行ったか。それが今はLGってだけなんじゃないかと、ひねくれた事を言ってるのは私です。
歴史に残る傑作!らしいけど、その歴史って、何処の世界のどんな歴史やねん!
などと。
妙に引っかかるのは「売り手」の態度なんですが、映画としてはキレイだった。
イヤー、今日はッドッロドロが刺さる日みたいなんで、ほぼ刺さらずに帰宅中です。
長い時を経て
ジェンダーバイアスが今よりももっと強かった時代に、マリアンヌとエロイーズみたいな人は沢山いたのでは?と想像します。今までは何気なく観ていた肖像画ですが、もしかすると様々な暗示が込められているのかもしれませんね。穏やかな外見とは裏腹な激しい内面を、まるで肖像画の様に微妙な表情やしぐさで表現していた作品でした。全体的にブルーかかったフィルムも美しかったです。長い時を経て、今やっと彼女達の気持ちが作品を通して世に出ましたし、LGBT作品でも女性を描く作品と女性監督が増えてきているので、これもとても嬉しい変化ですよね。LGBTの先人達もあの世で喜んでいることでしょう。芸術や文化はその人が亡くなってもこうやって次世代に引き継がれるので、今非常識とされることでも反抗してやってみる価値は大いにあると思います。
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