劇場公開日 2020年12月4日

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燃ゆる女の肖像のレビュー・感想・評価

全121件中、41~60件目を表示

4.5タイトルなし

2021年6月12日
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鑑賞方法:DVD/BD

絵は二人にとって結局何なのだろう。二人の気持ちを映す鏡。絵は間違いなくあとの方がいいことがわかる。それぞれの忘れられない表情を伝え合うシーンは美しい。
身体に刻まれた一瞬の記憶。後悔より思い出すこと。あまりに切なくて美しい。

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えみり

5.0かしこさ

2021年6月12日
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不遜なことかもしれないが、映画レビューに「めちゃめちゃ面白かった」と「好きすぎる」を見ると、なんか日本人やべえなと思う。
むろん、これは、ブーメランにもなりえる、じぶんを差し置いた失礼な意見だが、あなたはオンラインに居並ぶ何億もの「かわいい」に辟易したことはないだろうか?
tomatoesのレビューや海外のyou tubeのコメント欄にsuper cuteとかの一語コメントが100も200も並んでいるだろうか。
わたしはえーごをよくわかっていないが、かれらは各々もっと独自性のあることを言っているはずである。

対してわが国の一般庶民の感想というものが、その識字率や教育程度にかかわらず、率直に言ってボキャブラリーが貧困すぎるうえに、画一的だと思えてしまう──ことはありませんか?

なぜこれほどまでにパーソナリティーの欠如した意見が、駄々並びしてしまうのですか?「かわいい」「めちゃめちゃ~」「好きすぎる」・・・1億2千万人も擁していながら、全員が365日かんぜんに一致した言動をしちゃっているのを、ふしぎにお感じになりませんか?

マスコミが大衆向けに喧伝しようとして使う用語が、幼児化することがある。
(カーリングのことはよく知らないが)カーリングは競技時間が長くなるので、中継ぎ時間が設けられる。平昌(オリンピック)で、日本の女子カーリングチームが、その中休み時間に甘味を摂った。それをマスコミが「もぐもぐたいむ」と呼称した。

マスコミが言うところの「きれいすぎる」カーリングチームが「そだねー」と言いながら、「もぐもぐたいむ」にお菓子を食べていた──わけである。
わたしはかのじょらもマスコミも、ばかに見えてしかたがなかった。ばかに見えませんでしたか?

映画もドラマも、オリンピック中継でさえも、それを見て、日本・日本人が幼稚だと思えてしまうことが個人的にはある。その幼稚が、ある種納得できるのは、レビューサイトに居並ぶ、画一的なコメントがあるからだ。
日本国民に「もぐもぐたいむ」が受け容れられてしまうのなら、日毎「かわいい」を連呼する、まったく同じ感想をもつにんげんしか見ていないのなら、メディアが幼稚でもかまわないじゃないか──という感じである。
さらに、それは日本のクリエイターにとって利運でもある。なぜなら「かわいい」や、だいたいなクオリティで満足させられる大衆相手に、際立った才能は必要がないからだ。どうでもいいものをつくったとしても人気者を配すれば「かわいい」との評価でおさまりがつく──わけである。

ほんとはどうだろう。すこしは批評精神を持った大人だって映画を見ているのではなかろうか。なんらかの独自視点をもったにんげんが、映画をみることだって、あるんじゃなかろうか。

わたしはこまっしゃくれた山の手の文化人を嫌悪しており、旬○や秘○とかに批評を掲載しているわが国の伝統的な権威主義評論家が日本映画をダメにした因子だと思っているが、とはいえ、庶民の「かわいい」「めちゃめちゃ~」「好きすぎる」をもって映画が批評できるとは思わない。庶民派でありたいと思うし、権威はきらいだが、あるていどの批評精神は必要だと思う。

これらの感慨を海外のすぐれた映画を見たときに、反面的に痛感することがある。ヌリビルゲジェイランやアンドレイズビャギンツェフやアスガーファルハディ、アブデラティフケシシュ、ナディーンラバキ、グレタガーウィグ・・・多様な心象をあつかった映画を見たときに、なんの脈略もなく「日本人てあんがいばかなんじゃなかろうか」と思ってしまうことがある。どうだろうか。わたしたち日本人は理知的な民族です──と、その根拠となりえる映画をつくっているだろうか。さらにそれを正しく評価できる観衆が日本にいるだろうか。
むろん日本には世界に誇るアニメ文化やキャラクター文化はあるけれど、作り手にも見る側にも、なんか不実のようなものを感じてしまう──ことがある。

本作はパラサイトがなければカンヌも獲っていたが、他の映画賞も多数獲っているものの、それらの賞のことは、まあどうでもいい。
孤島と絶景と、レズビアンロマンスと18世紀と二人の女の繊細な心の動きのリアリティ、その顛末が息を呑むような密度で描かれている。話自体が格別にユニークでもあり、見たこともない映画体験だった。

監督はフランス人のセリーヌシアマ。この映画ではじめて知った。女性である。どうだろうか。この女流映画監督と日本の(「セクシュアリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること」をテーマとした)「21世紀の女の子」は同じ映画監督の土俵にいると見なすことができるだろうか?
ガーウィグやラバキや、クロエジャオや「はちどり」や、このセリーヌシアマ監督を見て、それでもわれわれは「女子」や「かわいい」によってクオリティがスポイル(容赦)されうると、考えるだろうか?

映画は「女であること」を弁解していないにもかかわらず、また現代にはびこる狂信なフェミの叫びとも無縁でいながら、250年前の同性どうしの出会いと別れについて雄弁に語っていた。

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津次郎

3.0計算された情緒に醒める事もある‼️❓

2021年6月5日
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映画館で観たら違う感覚で受け入れられたのかもしれませんが、何故か、入り込めない。
自然光と雑音の中ですので、展開よりも先に、彼女たちが魅力的に感じない、絵が下手に感じる、とか、予断が入るのですね。
最後の数分間は、ある意味、計算され尽くしていて、あざとい、引き込まれながらも、醒めてしまう。
観るものからすれば、再会に感激してるのか、無視されたのか、何も知らずに観劇で感動してるのか、全然違うのか、含みを持たせた演出は見事です。
だから、そこまで無表情にしてたんだ、芸術的などんでん返しでもある。
あー、映画館で観たら感動したんだろうな、車と草刈機の喧騒と窓の外はカラス、さて、私の感性が低いのであろうか、残念。

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アサシン5

4.5女性の色々な感情が描き出されていると思った

2021年4月10日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

幸せ

ものすごくよかった
女性の色々な感情を描き出していて、
恋やそれにまつわる色々な感情、
激しく燃えて終わりを迎える。
恋愛の女性側を、女同士で合わせ鏡のように、
二人を使って色々なところを見せる。

映像もとても綺麗で、
西洋画のシーンとして全て切り取ることができるような映像になっている。
同じく恋愛を題材にした
花束みたいな恋をしたと比べると
深さがまるで違う。
花束みたいな恋をしたの方が、すごくインスタントな感情しか描かれていない。

インスタントなインスタの画像と、コンテクストが深く作り込まれた絵画との違いのような。

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たけP

4.0肖像画を描くこと、他者を知ること

2021年3月13日
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鑑賞方法:映画館

静かな映画だ。ともすると、眠気を誘われるほどだ。しかし、美しい映画だ。キャンバスに線を描くシーンから始まる本作は、物語の進行と共にその線を太くし、色彩を加え、絵画の如く観る者を引き込む。

肖像画を描くということは、他者を知ることであると同時に、その人物への愛無くして描けない。その者を知れば知るほどに描く筆は進み、白いキャンバスに魂が吹き込まれていく。しかし、それは拭ってしまえば消えてしまう程に儚い。メインとなる女性画家と肖像画のモデルとなる女性との掛け合いは叙事的に描かれるが、使用人の女性のエピソードが加わることで、この時代の身分や性別がどのように扱われてきたかの輪郭が明瞭になる。

束の間の5日間で起こる様々な出来事は、それまで息もできなかった登場人物たちに一時のい安らぎを与えるばかりか、人間らしさを感じさせるシーンとなって機能する。それであるが故に、その5日間が過ぎた後での展開の速さに乾いた哀愁を感じざるを得ない。

肖像画が描き終わることで物語にも結末が訪れると思えたが、その後の展開にこそ本作の真髄が感じられる。冗長とも思えた物語の全てに、すべてのシーンに意味があったと感じさせるまとめ方の巧妙さは言うまでもないが、一枚の絵画に隠されたメッセージとその後の2人の視線の行方は本作の魅力を一層特別なものに昇華させている。

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Ao-aO

1.0LGBT

2021年2月21日
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鑑賞方法:映画館

難しい

隠れてやってくれ。
否定はしないが映画にするのはやめてくれ。
性なんてこそこそやるから楽しいのに、、、
最近は堂々と主張する。
何も無いくせに、何を主張したいのだ。

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1953 HAL

2.5良作。あとは好みかな。

2021年2月15日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

評価がそこそこだったので、あらすじをよく読まずに行ってしまった。
あの時代ということと、感情を表に出さない二人だったから尚のことかもしれないが、あまり感情移入出来なかった。
良作だと思いますが、個人的には好きな作品ではなかった。ちょっと暗かったというのもあるかな。

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TOMO

4.0エロイーズ

2021年2月11日
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本当にこの魅力はなんだろう。しばらく顔を見せず、崖をあるきながらようやく振り返るときに初めて見るその顔をあ、こんな人、なの、と思うんだけど、最後のビヴァルディを鑑賞する顔に行くまでにはとても陰影の深い顔になっている。芸術を見て感動するとき、これはあなたが思っていた、感じてきたこととを更新するもの。

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ポンパ

4.0美しい、完成度の高い作品

2021年2月10日
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鑑賞方法:映画館

とにかく画面が美しい。
構図と、色調のバランスがとても綺麗だ。
どのシーンを切り取っても格調高い絵画のようです。
アートを媒介としたこの映画じたいが、立派なアートだと感じました。

それから音楽の使い方がひじょうにうまい。
無駄なBGMはいっさいなし。
それだけに要所要所に流れる音楽がグッと感情を揺さぶる。

もちろん登場する女性たちも綺麗です。
緊張感のある画面の中の美しい女性たちを観ているだけでも僕はしあわせでした。

で、ストーリーは、というと、正直、途中から「ちょっと退屈やなぁ」と思って観てました。
そんなエッチなことばかりしてて、ちゃんと絵が描けるんか、もっとマジメにせんかいや、と。

でも、終盤やられましたね。
肖像画の中の「お嬢様」と再会する場面には、思わずニンマリ。

ラストは……そう、この映画は、このラストを観るためにあるのです!

観終わったあと、「もう1度観たい」と思っている自分がいました。

追記
そしてもう1回観に行きました。

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peke

2.0LGBT礼賛映画には些か食傷気味です。

2021年2月10日
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鑑賞方法:映画館

 全く予備知識を持たずにこの映画を鑑賞しました。ロビーにあった、フライヤーにグザヴィエ・ドランの賛辞が載っていたのが気になり、ちょっと嫌な気になりました。私にとってはLGBT映画に対してはもう、あんまり、拘るのはいい加減にしろ、と怒りたくなる気分で、一杯です。なぜ世の中の人々一人ひとりの性的指向を全て詳らかにしなくてはいけないのでしょうか。ゲイでもレズでもいいのですが、そんなことは、どこかもっと、離れたところで騒いでくれ、と声を大にして言いたいです。この映画のようなレズビアン万歳の映画にはもう、うんざりです。普通の肖像画家の映画を撮ることはできなかったのでしょうか。はっきり言います。なんだか、今の世の中、どこか狂っています。

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bashiba

3.5視るものと視られる者

2021年2月4日
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鑑賞方法:映画館

知的

画家とモデル

視る女性と視られる女性

登場人物少なく深く潜る心情

鑑賞者自身もシンクロすラスト

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褐色の猪

4.0赤と緑のドレスの戯れ

2021年1月26日
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鑑賞方法:映画館

 ある肖像画家と絵のモデルとの出会いから別れまでを静謐な創り方で描いた人間ドラマ。観客は絵の創作過程のみならず、その間二人が共有した秘密を見ることとなる。
 映画の描写は、ロウソクの仄かな光や自然光による撮影、火の爆ぜる音や衣擦れの音を拾う音声、荒涼とした島の風景、対象物を画面の中心で捉えるフォトジェニックな画作り、無駄な会話を配した進行が重なり作品の格式を高めている。そして筋立ての面白さが群を抜く。
 主人公である画家の人物造形は、冒頭すぐの海と次の島のシ−ンで観客に提示される。性格や顔の造りが男性的な画家。絵の創作過程では、ある無理難題が画家を縛る。それが画家とモデルが秘密を共有してから縛りから解き放される。
 その他の印象的のことは、夜に女性たちが集まり低く地鳴りのように唸りながら手拍子を打つ場面、何度も出てくるキャンバスでのデッサン、堕胎の実践と傍らの赤ん坊、画家とモデルが着ていた赤と緑のドレスの重厚さ、そして画家の凛々しいおでこと眉毛。

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ショコワイ

1.5 久しぶりにクソ映画に巡り合いました。

2021年1月20日
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鑑賞方法:映画館

 18世紀のフランスが舞台。

 とある女流画家が、ブルターニュの島に住む母親から、娘の結婚相手に渡す肖像画を描いて欲しいと依頼されます。気難しい娘に、最初は画家だと明かさず1枚目の肖像画を仕上げますが、娘には気にいらず、画家もそれを受け入れ、母親に描き直しを約束します。しかし、母親の出かけている5日間、肖像画の作成と並行し、娘とただならぬ関係になってしまい…。

 というあらすじですが、これ自体、何のひねりもないストーリーに加え、つまらないエピソードの数々。何より登場人物に全く魅力がない。演技もヘタだし、美人でもない。加えて、横井和子さんの翻訳が「グーグル先生か!!」っていうくらい棒訳。
 途中挿入される音楽も、民族性など全然感じられず、映画の雰囲気をぶち壊していました。
 題名の「燃える女の肖像」なんて、いかにも思わせぶりなタイトルですが、最初にそのタイトルを現すへたくそな絵が出たっきりで、それ自身は映画全体を貫くテーマとも何とも感じられません。そのエピソードにあたる、娘のドレスに、焚火の火がつくシーンの演技も棒。暗闇に浮かび上がるドレス姿の娘も、なんら感銘を与えない。肝心の女流画家の絵も大したことがない。(むしろ、途中で出てきた、娘を描いた絵のほうが、よっぽど上手でした。)

 「映画史を塗り替える傑作!」とか「世界の映画賞席巻!!」とか、前評判ばかり高い作品でしたが、こんなクソ映画に受賞させるなんて、評論家の目が腐っているとしか思えません。
 これだけはっきりと、わかりやすいクソ映画なのに、評価が高いなんて、不思議です。

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Come

2.0切なく美しい恋の物語

2021年1月15日
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鑑賞方法:映画館

望まぬ結婚を控える貴族の娘と、彼女の肖像を描く画家のラブストーリー。女性二人の燃え上がる恋が切なく美しい物語。絵画を見ているかのような素晴らしい映像が印象的な作品ですが個人的には絶賛するほどの傑作とは思えない。
2021-8

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隣組

3.0絵画のような

2021年1月10日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

スローな展開の序盤は正直昼下がりに観たこともあり少し眠気を催してしまったが、その後の展開はなかなかに見応えがあった。

18世紀のフランスが舞台で現代日本に生きる我々と感覚が異なるとはいえ、人を想う心というのは変わらないもの。

安易な終わり方ではなく考えさせられる深いラストシーンになっていて心地よく映画館を後にすることが出来た。

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KsSKY

4.5全ての要素がある時点に凝集する語り口がみごと。

2021年1月9日
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『僕の名前はズッキーニ』(2016)の脚本を担当するなど、脚本家と映画監督として活躍している女性作家、セリーヌ・シアマの最新作。

作中で言及される詩とその解釈、見つめる側と見つめられる側の関係性、当時の女性の立場などなど、作中でさりげなく提示された様々な要素がある時点でぎゅっと繋がっていくという物語の大きなうねり、それを映像でしか表現し得ない方法で提示したシアマ監督の演出は非常に素晴らしいです。シアマ監督と主演のアデル・エネルはかつてパートナーだったということで、そうした関係性が物語を豊かにしているのでしょう。

確かに物語としてはフランスの歴史ものであることは確かですが(さらに場所の設定や衣裳などに、イギリスの要素も多少取り入れているとのこと)、本作のテーマは非常に現代的な要素を多く含んでいるため、ジャンル映画として二の足を踏む人がいるとしたら、とてももったいない作品です。当時の衣裳に詳しい人であれば、当時は一般的ではなかったポケット付き衣裳をあえて採用するといった、映画ならではの現代的な味付けについても楽しめるのでは、と思います。

なお、シアマ監督は日本でも様々な媒体のインタビューに応じていて、それらはどれも非常に読み応えがあるのですが(「女性作家」と自ら名乗ることへの強い意志についての語りが、とりわけ印象に残りました)、結構結末に触れちゃっているので、作品を新鮮に楽しみたい方は鑑賞後に読みましょう!

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yui

期待値高すぎたかな?

2021年1月8日
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絶対観るべきとのレビューをみて観に行きました。決して外れ、とは思いません。美しい風景はどこをきっても一枚の絵のようでした。でも、ストーリーは男尊女卑の変わらない世の中を突きつけられ、あなたは何をしているのと問われても、答えることもできず呆然と外に出ました。

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チャロわんこ

5.0繊細で、美しい何度も見返したくなる傑作

2021年1月6日
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鑑賞方法:映画館

幸せ

自分はどちらかというと、アメリカ映画の文法に親しんで映画を見てきたのだけども、ヨーロッパ映画の必要最小限の絵だけで語るべき物語が巧みに構成されているような「粋」な作品を見ると、「いやー、これには勝てない。巧い。」と参ってしまう事がある。ベルトルッチの「シャンドライの恋」、ダルデンヌ兄弟の「ロゼッタ」や「自転車と少年」、そしてヨーロッパ映画ではないがその文法上にあるイラン映画「別離」。そういった作品に出会える事は映画ファンとしてこの上ない喜びなのだけど、見つけようとして見つけられるようなものではないし、いつ出会えるのかはわからない。そして、ついにまた、新たな名作に出会う事が出来た。

「燃ゆる女の肖像」は、静かに淡々とただただ美しい画面が次から次に映し出され物語が紡ぎ出される。二人の女優の凛とした存在感と美しさに見とれてしまう。画家である主人公の「絵を描くために相手を観察する」という行為が観客がカメラを通して人物をじっと見つめるという行為と重なり、映画的快楽となる。そして女性同士の恋愛が受け入れられなかった時代の社会的抑圧がもたらす緊張感が、二人の関係のエロティシズム、愛の輝きをより浮かび上がらせる。その愛のあり方は、最近マルセルカルネの古典的名作「天井桟敷の人々」を見たばかりなのだけど、そういったフランス映画の伝統にもつながるような実は普遍的な愛の姿でもあると思う。

演出面も、女性の姿が幻想として見える場面での(おそらく)液晶スクリーンを使った独特な撮影や、焚火の場面でのクラッシックではない現代音楽的なコーラス、その焚火の場面の直後のユニークなジャンプカット等、さりげないながら驚きがあり素晴らしい。もちろんその中で一番印象的なのは焚火のあのシーンと〇〇〇〇の物語とつながるラストだと思うが、それだけではなく、絵画的、象徴的な映像が巧みに散りばめられている。例えば、侍女の花の刺繍だが、最後の場面では、花瓶に生けていた本物の花の方は枯れてしまっていたが、刺繍は完成する。それは「私の今の姿を記憶の中で覚えていてほしい」と願う主人公の思いとも重なっているし、最後なぜ主人公が思いを寄せる女性に再開した時に、本物ではなく絵の中の彼女としか視線を合わせることが出来ないのかという事とも、響き合っている。

簡単に語りつくせるような作品ではないが、とにかく、これからも何度も見て物語と絵の美しさを味わいたくなるような素晴らしい作品だった。

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moviebuff

3.5美しい

2021年1月4日
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美しい映画。
惹かれ合う二人が美しい。

有楽町にて

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キット

3.0流行映画に流されない意地を感じた

2020年12月31日
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ドラマチックな演出も無ければ、
劇的な音楽さえ排除して、
演じる役者と、そこに映し出される映像に全てを託したのは、
真の映画人としての姿を見たような気がする。
今の玩具映画に馴らされた私には、ある意味興奮させられた作品だった。

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ムーラン
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