燃ゆる女の肖像のレビュー・感想・評価
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圧倒的怒りと、束の間の(貴女にしか見せない)笑顔
《怒り》と(貴女にしか見せない)笑顔 --- 別れの瞬間、当人にしか分かり得ぬものを表現する。カンヌ国際映画祭脚本賞は伊達じゃない、流石のキャラクタースタディと構成力に唸る。けどそれを可能にしたのは、紛れもなく目が離せない主役二人の演技と演出による所が大きい。予定調和でなく二人の行く末が気になって仕方がない。日本語で言うところのシュールに変な緊張感が漂う。時にスリリングで、時に不思議とユーモラスですらあるという独特な空気感、作品を包む雰囲気が素晴らしい。何層にもなっていて考えさせられる。
《波》が高い ---- 主人公が自画像を描くシーンとラストカットは圧巻の一言で、本当に見入ってしまった。ポスタービジュアルにもなっている、火を囲むまさしく燃えるシーンもすごい。心をじっくりと時間をかけて開いていき、束の間の幸せの後に、性別/時代(= 女性であることの窮屈・不自由さ)や身分によって葛藤する様もリアル。安易な表現になってしまうが、もう出会うことのないと思っていた所から遂に見つけた情熱や命の炎。例えば本作が何年と明確に明示されていないのもと邪推したり、刹那、かくも魔力の虜になる。そうした普遍性故かも。どうしたら出来上がり?その時が来たら --- 28ページ
P.S. 主人公二人はデイジー・リドリーとグレタ・ガーウィグに似ている
勝手に関連作『美しき諍い女』『キャロル』『君の名前で僕を呼んで』『モーリス』『マディソン郡の橋』
静物画、ヴィヴァルディ、オルフェ
静かに強烈な映画で全て正確に頭に刻印されました。流れる映像の1コマ、1コマ、どこを切り取っても美しい絵画になる完成度に心揺さぶられました。
紺碧の海から、静物画の世界に観客を放り込んでしまう監督の手腕が素晴らしい。台所、パン(到着後、空腹のマリアンヌが食べてたのすごく美味しそうだった)、チーズ、ワイン、銀食器、グラス、パイプ、暖炉、蝋燭、本(オルフェの話が、後にマリアンヌが描く絵と共にすごく効いていた)、楽器(チェンバロ)、花瓶に活けられた花やハーブ、刺繍、ドレスやベッドリネンといった布、鏡、椅子やベッドなどの家具、キャンバスに筆にパレット、トランプ。全部、静物画のモチーフだ。
屋敷の中に響くのはひたすら生活の音。木の床を歩く靴の音、水やワインを注ぐ音、飲む音、暖炉の薪がはぜる音、布が擦れる音、チェンバロの音色。
最初はやけに眉間の皺が深いエロイーズが、どんどん綺麗に美しくなっていった。マリアンヌは泳げる、煙草を吸う、重い荷物も持つし堕胎の経験もある。何より職業画家だ、ただ描く対象は狭められ、父親の名前で絵を描く。どこにもいつでも、北斎とその娘みたいなのが居るんだ、と思った。
見られる立場(自分の意志に関わらず結婚することが決められている)のエロイーズには拒否したり言い返す強さがあって、見る側のマリアンヌには非常な用心深さと繊細さがある。エロイーズをマリアンヌは緻密に観察し、そのマリアンヌを私達が見つめる。視線の重なりが覗き見のようで罪悪感を覚えた。
詩人でも画家でもないエロイーズは、描く対象が限られている女の画家であるマリアンヌに絵の素材を提供する。焚き火の炎をスカートに纏うことで、ソフィに堕胎の時の格好をさせることで、そしてマリアンヌを想いながら決してマリアンヌを見ない自分を見せることで。
エロイーズは、「夏」を聞いて感動し、涙を流し、口を開けて呼吸し、官能的な表情を浮かべ、最後は恍惚とした笑顔になり、視線は一切動かさない。自分は見られる側に徹する、私は妻を見てしまうオルフェにはならない、あなたを見たらあなたを失う、あなたのことを追想しながら私は生きていく、とエロイーズはマリアンヌを見ずに伝えた。
傑作、、になり損ねた作品って感じ
何だろうか?
海を利用したり祭りのシーンなどとても印象的なシーンがある
その反面ストーリーが少し弱い気がしたな
あと恋に落ちていくシーンなど心理描写が伝わってこない感じがした
両方とも根っからの同性愛者って感じではなかったので
おっかなびっくり駆け引きしながら落ちていくんじゃないの?
いきなりキスで肉体関係って感じだったのでそんな気持ちが湧いた
祭りのシーン燃ゆる女の所の音楽とかは好きだけど、、、って感じ
印象的なシーンではあるんだけどね
ただ、全体的には一昔前の貴族的な社会の生活を綺麗に映像にしてる感じもあり
良かったな
最後余計なシーン省いてもう少し何かあったら傑作だったかもね
残念な事に傑作になり損なった感じかな
でも、強く印象は残す作品でした
タイトルなし
波立つ海・吹き付ける風
古城・蝋燭の灯り・肖像画
その絵画のような美しい映像
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18世紀
フランスブルターニュの孤島が舞台
結婚を控える貴族の娘エロイーズ
彼女の肖像画を依頼された画家マリアンヌ
一緒に過ごすうちに芽生えてくる感情
肖像画の完成は
二人の別れを意味する
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使われているのは2曲だけ
その効果は大きい
女性たちの合唱
🎼Laleune Fille en Feu
:ニーチェの詩から引用した歌詞をラテン語に書き起こしたオリジナル曲
ピアノで弾きそして映画のラストを飾る
🎼ヴィヴァルディ 協奏曲第2番ト短調 RV315「夏」
ラストシーン
エロイーズの表情から目が離せません
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『愛の美しさと共に美術や文学や音楽などのアートこそが私たちの感情を完全に解放してくれることを描きました』
(セリーヌシアマ監督)
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下女ソフィとの関わりもよかった
でもベッドに横たわり涙するソフィに
無邪気に手をのばす手。
このシーンは辛い
劇場の大画面で圧倒されましょう
TIFF2020にて鑑賞。前評判が良いので、早く観たかったんです。
まず、この作品は劇場の大画面と音響で観て頂きたいですね。
演技、映像の迫力は素晴らしいです。
大画面に負けてません。熱量。眼力。すげーです。女優さん、メインの3人。凄く良いです。
相手をより深く知るという画家とモデルの関係性が恋愛に昇華していくお話ですが、18世紀という時代性、舞台の土地の風景、音楽、演技、そしてそこに絵画の力が重なり、恋愛の進行がドラマティックに描かれるます。静かに熱く。
中盤、女子お泊まり会モードのようなパートが大好きです。
身分を感じることなく、イチ女性として絆と力強さを感じられるから。その空間で描き出されるのは「自由」「現実」「正直」「強さ」「意思」「愛」かな?
まさに、生きたいように生活している、満たされてる時間に見えます。
18世紀は女性にとってはそれらを容易に手に入れられない時代だったのでは?と勝手に推測する故、本作は女性自身の自由を謳う作品だと思います。
後日エピソードも見事。たまらんですよ!
ラストは、まー、画面に釘付けでした。
瞬きできませんでした、いや、するのが惜しいラストカット。
切ない、切なーい。
事前に作品の詳細を知る必要はあるかと
東京国際映画祭にて鑑賞。率直な感想としては非常に分かりづらく難しかったかなというのが率直な感想である。
予告である通り同性愛に対する心の開きを非常にアートチックにゆっくりと描かれるわけだが、事前にそのような作品と知っていないと前半の描写とかどう写るのか疑問に感じた。事前にそういう作品だと言うことは僕は認識していた為、彼女らの行動、言動、表情を深く深く見ようとしてるが、事前に知らされてないと中々分かりづらさはあるようにも思えた。
劇中に男性は殆ど出て来ず(最初の小舟、最後の肖像画の運び屋、展覧会の客程度か)女性だけでゆっくりと丁寧に心情を描くところは非常にアートチックで惹きつけられるが、まだまだこのタイプの作品には未熟であり創造が追いつかなかった。
ポプュラーではなく、非常に観客を選ぶ作品であるのは間違いないだろう。
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