「アンビバレンスな歓びと哀しみ」燃ゆる女の肖像 グリンリーフさんの映画レビュー(感想・評価)
アンビバレンスな歓びと哀しみ
この映画は女性の、人生における喜びと悲しみをまるでアンビバレンスな感情のように、描いていると思う。結婚は女性にとって最大の喜びのはずだ、だがその相手が会ったこともなければ、どこに住んで、どんな性格かも分からなければ、どうだろう。果たしてその男性を直ぐに愛することができるだろうか。黙って運命に従わなければならないとしたら、哀しみ以外の何物でもないだろう。
出産もまた女性にとって大きな喜びである。だがおかれた境遇により、自分に宿った生命を堕さなければならないのは、大きな悲しみだ。監督は堕胎しようとする女性の隣に元気な赤ちゃんを置いて、無垢な喜びとその喜びを享受出来ない悲しみを鮮やかに対比させている。
愛もまた大いなる歓びである、互いにひかれあう心は理性では止められないし、閉鎖された環境ではなおのこと、より強く燃え上がる。画家もモデルも互いの感情を隠し切れなくなる、モデルが燃えているのではない、画家の感情がモデルを燃え上がらせるのだ。だが他者に知られてはならない関係は必ず終わりが来るし、最後に大きな悲しみを招く。
画家もモデルも関係を終わらせたくはない、二人は心で繋がろうとする。それが二人だけの密かな歓びであり、大げさに言えば生きる支えにもなったはずだ。だが時を経て、愛は変わらずとも、二人の境遇は大きくかわる。時を経て出会えた歓び、だが彼女と見つめ合うことの出来ない哀しみ、ここで繋がりを断つべきか、それとも・・・彼女は苦悩する。
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