「静物画、ヴィヴァルディ、オルフェ」燃ゆる女の肖像 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
静物画、ヴィヴァルディ、オルフェ
静かに強烈な映画で全て正確に頭に刻印されました。流れる映像の1コマ、1コマ、どこを切り取っても美しい絵画になる完成度に心揺さぶられました。
紺碧の海から、静物画の世界に観客を放り込んでしまう監督の手腕が素晴らしい。台所、パン(到着後、空腹のマリアンヌが食べてたのすごく美味しそうだった)、チーズ、ワイン、銀食器、グラス、パイプ、暖炉、蝋燭、本(オルフェの話が、後にマリアンヌが描く絵と共にすごく効いていた)、楽器(チェンバロ)、花瓶に活けられた花やハーブ、刺繍、ドレスやベッドリネンといった布、鏡、椅子やベッドなどの家具、キャンバスに筆にパレット、トランプ。全部、静物画のモチーフだ。
屋敷の中に響くのはひたすら生活の音。木の床を歩く靴の音、水やワインを注ぐ音、飲む音、暖炉の薪がはぜる音、布が擦れる音、チェンバロの音色。
最初はやけに眉間の皺が深いエロイーズが、どんどん綺麗に美しくなっていった。マリアンヌは泳げる、煙草を吸う、重い荷物も持つし堕胎の経験もある。何より職業画家だ、ただ描く対象は狭められ、父親の名前で絵を描く。どこにもいつでも、北斎とその娘みたいなのが居るんだ、と思った。
見られる立場(自分の意志に関わらず結婚することが決められている)のエロイーズには拒否したり言い返す強さがあって、見る側のマリアンヌには非常な用心深さと繊細さがある。エロイーズをマリアンヌは緻密に観察し、そのマリアンヌを私達が見つめる。視線の重なりが覗き見のようで罪悪感を覚えた。
詩人でも画家でもないエロイーズは、描く対象が限られている女の画家であるマリアンヌに絵の素材を提供する。焚き火の炎をスカートに纏うことで、ソフィに堕胎の時の格好をさせることで、そしてマリアンヌを想いながら決してマリアンヌを見ない自分を見せることで。
エロイーズは、「夏」を聞いて感動し、涙を流し、口を開けて呼吸し、官能的な表情を浮かべ、最後は恍惚とした笑顔になり、視線は一切動かさない。自分は見られる側に徹する、私は妻を見てしまうオルフェにはならない、あなたを見たらあなたを失う、あなたのことを追想しながら私は生きていく、とエロイーズはマリアンヌを見ずに伝えた。
talismanさん、こんばんは。
大雪のため連休中は雪かきに追われてます。
映画館でもTVでも、観て感想を書いた順にアップしてるのですが、並行して過去作をアップしてます・・・
アルファベット順に近いあいうえお順になってます。
もう探すのも大変!
talismanさん、コメントありがとうございます。
俺の書き方が中途半端でしたね。
俺もマリアンヌは堕胎経験者だと思いました。あれこれ民間療法(?)を試みていたし、そんなの経験者じゃないとわかんないし・・・
あの精霊にも似た祭りの焚火シーン。これもオルフェの神話と関係あるのかな?などと思ったのですが、そこまで調べる気力がありませんでした・・・
ただいろんな面で根底にあるのは古いしきたりのあるキリスト教に対する反発があるのだと直感いたしました!(違ってたらごめんなさい)
talismanさん
あけましておめでとうございます。
年末に見逃していた本作、初詣でを早々に切り上げてファーストディ料金で見てきました。レビュー投稿してから拝読しましたが、ラストの解釈が反対でした。talismanさんの方が映画の雰囲気と合ってていいですねー。
いやあ、お恥ずかしい。
エロイーズの芯の〝強さ〟を感じていたら、そうなりますね。
とても勉強になりました。ありがとうございます。
talismanさん
コメントありがとうございます。
演奏者がつい気になってしまって…。
この方みたいです。
https://youtu.be/NVc1bg6Omeo
talismanさんへ
共感ありがとうございます。
見たいと思っていた映画ですが、このレビューを読んだら「見なければ」に変わりました。
見に行って良かったです❗️
コメありがとうございます。
私はこの作品をみていませんが…(^-^;
件の作品は、ナチスというか、ホロコーストを色んな視点からみたいという思いもあり非常に興味を惹かれました。
ホロコースト絡みの作品にしては可愛らしく柔らかく優しい作品でした。