バクラウ 地図から消された村のレビュー・感想・評価
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グローバリズムへの抵抗の一撃
これはすごい。グローバリズムの時代に強烈な楔を打ち込んでいる。この映画で描かれる村は時代遅れで、野蛮な連中と言えるかもしれない。しかし、それもまた人の文化であり、尊重されねばならない。ネット上の地図から消されたことをきっかけに次々と恐ろしいことが起こる村で、村人たちは自分たちの村を破壊しようとする外部の連中に対して、一致団結して殺しにかかる。現代グローバルの価値観からは到底受け入れられない所業が後半描かれるが、この映画はそれを断罪などしない。これも人間の文化であると言い切っているように僕には見えた。
日本のアイヌ文化のことを少し思い出したりした。熊を育てて殺しイオマンテという儀式は野蛮だと今はみなされてしまうだろう。しかし、あれも少数民族の大切な文化だったろう。グローバリズムとは結局、強引に少数の価値観を洗い流す凶行なのではないか。凶行に対して、この映画の村人は文字通り凶行で対抗したわけだ。彼らの凶行は、マジョリティ側の乱暴さ、乱雑さをも浮かび上がらせる。
ジャンルが謎な楽しみ
奥地のブラジルに現れた殺人集団は何が目的なのか。
ブラジルの俊英クレベール・メンドンサ・フィリオ監督。第72回カンヌ国際映画祭で『バクラウ』が「審査員賞」を受賞しブラジルに初めての栄冠をもたらした。
奥地を取り上げることの多いブラジル映画。そこには何か人里離れた、隠された過去、秘密裏の宗教的な行事、閉ざされたコミュニティなどを思い起こさせる。
この映画の途中から給水車への襲撃、畜産を営む一家の殺戮が起き、村の落ち着いた生活が一変する。不気味な恐ろしさが迫ってきているのだ。殺人者(英語圏)と村を守る奥地のブラジル人。スリルに満ちた展開と悲惨な殺戮のシーン。ちょっと見るに耐えられないシーンも出てくる。これまで見たブラジル映画の「シティ・オブ・ゴッド」など残酷なシーンはここにも存在する。
襲撃者の背景・目的がもう少し描かれると、戦う相手は誰なのかが類推でき、テーマがつかみやすくなると感じた。スペインドラマの「ペーパー・ハウス」までとは言わないが。
「地図から消されたまち」というのも何となくは示されている。熱帯雨林の伐採など奥地を権力者の都合で収奪していくブラジルの構造を思い起こさせた。この映画には単なるフィクションではない現実の問題を訴えているように思える。
結末の感想はそれぞれであるが、もう少し深みを持たしてくれたほうがよかったかなと思う。
世にも奇妙な怪奇譚
2019年(ブラジル・フランス合作)クレベール・メンドンサ・フィリオ監督。
カンヌ国際映画祭の審査員特別賞受賞。
一風変わった映画で面白かったです。
《村民・ウェスタン》って言うか、
《ブラジル版・ハードボイルド》てか?
バクラウ村の長老・カルメリータが亡くなった事をキッカケに村に異変が起こる。
村人、バンバン殺されますー、
給水車に銃弾撃ち込まれますうー、
インターネットの地図から村がけされて、
村の上空には円盤だか?ドローンだか不明な物体が飛びますうー、
この映画、深く考えちゃダメぽん。
えーっ、バクラウ村が地図から消された???
電源喪失???
ネットか使えん???
どうしたん?何があったん?
いちいち理論的に説明なんかありゃしないさ!!
マカロニウェスタンみたいな軽快な音楽に合わせて、バクラウ村人の、
味のある御面相を楽しみましょう。
やたらデブのオッちゃんオバちゃん、爺ちゃんのフルヌードとか見れます。
およそありがたくないけど、土着さ、土着!!
ならず者たちが村人を襲う目的はラストで知れます。
展開が遅い・・とか、文句言ったら、この映画成立しないさ!
ならず者軍団のボスのウド・キア(知らん?目玉のギョロっとした男、見ればホレ、すぐ分かる)
ウド・キア、いやあー目立っとったわ!!
不条理劇ですなー。
ラストは、ホンマ、スカッとする。
ユーモアたっぷり!
(ところで、あの薬、ナンね?)
お楽しみにー!!
背景を知るだけで評価は変わる
クレベール・メンドンサ・フィリオ監督、ジュリアーノ・ドルネレス監督の作品は初見。
最初は評価の高さと予告編でのどんなジャンルの作品か伺い知れないごった煮感が気になってたものの、劇場での公開中は機会を逃しようやく観賞。
観終わって思ったのが単純に面白かったりエグいスリラーってより、明らかに南米の社会問題をメタファーにした社会派映画で、そういう問題のついて知っていれば知っているだけより楽しめる作品ってことだった。
最初は自分が南米にそこまで詳しくないことや「バクラウ 地図から消された村」ってタイトル、序盤の不穏な棺桶やUFOの登場など途中まで「未知との遭遇」系の作品かと思っていたんだけど、その後現地の人間を工作員として使っている明らかにアメリカ国籍と見られる掃討を目的とした特殊部隊が出てきたことでフィクションではあれどファンタジーでは無くリアル寄りの話なんだと理解した。
個人的には911以降の映画やハリウッド映画の潮流として、各地の紛争で活躍するアメリカが正義の映画やMCUに代表される様なアメリカのヒーロー映画が=正義って言う常識を今一度問う、非力に思える市民にも力があることを感じさせる作品だった。
劇中のトニー・ジュニアの様にアメリカに与して甘い蜜を啜ろうとするって人間とそういう人間を利用して政治に利用するアメリカって構図は、過去ニカラグアでソモサ政権が似た様なかたちで圧政を行っていた事を「メタルギアソリッド ピースウォーカー」で知っていたので、作中のテーマを過去の歴史的出来事と、それに対抗するマイノリティの人々の物語として理解し易かった。
しかし、観賞後にブラジルについて調べてみると、公開直前の2019年からブラジルに新米政権で、且つ同性愛者の息子でさえ人目を憚らず嫌悪するほど同性愛嫌悪を表明する極右のボルソナロ大統領によるボルソナロ政権が誕生していたことや、そのボルソナロ政権が発足するまでのブラジル国内の流れがあってバクラウの脚本が完成したことを初めて知って、過去にあった話じゃなく今現在起こっているテーマの話なんだと改めて知った。
この作品の感想を見ると"つまらない"とか"退屈"って意見があるけど、個人的には少なくとも近現代で行われていた出来事をバクラウを通して見てるようで、搾取する側や蹂躙する側に対しての胸糞悪さを感じたし、現実の写し鏡として描かれるからこそバラク・オバマ元大統領がベストムービーの一つに挙げていたり、カンヌ国際映画祭審査員賞やニューヨーク映画批評家協会賞外国語映画賞に選ばれた実績もあるので、是非作品が描かれた背景も調べてほしいな。
冒頭、これは近未来の出来事であるって説明があるけれどブラジルの内情を知ってしまうと、こういう近未来がやってこないで欲しい、ブラジル国民が新たな大統領を迎えられるようになって欲しいと切に願う。
説明不足
304位/511中 2022.05.25現在
たまたまプライムでおすすめに出てきて
観ました!
しかも、ん?ブラジル映画?
って途中で知りました!
人生初のブラジル映画。
正直、結局何だったの?
と思う部分は多い。
あのおばさん
最初何でヒステリックだったの?
バイク乗り2人が取り付けた機械なに?
他にも思い出せないけど
自分がバカだからか
謎が解消されなかったとこが多い。
なんだけど、、、、
そんなに嫌いじゃない。
不思議と退屈しずに観れた。
ただし、人にはあまり
オススメしないかなぁ。
グロいし下品だし。
セックスシーンもあるけど
なんか下品に感じる。
エロくはない。
それは自分の好みの問題で
外国のエロが
好きじゃないからかもしれない。
とりあえずこの映画を観た人と
この先、人生で出会うことあるかな?
こういうSNSじゃなくて
リアルの世界でね。
バクラウ観た!俺も観た!
って会話は、きっと無い。
備考 点数は自分が
生まれてから現在まで
観た映画をランキングにして
相対評価で点数付けてます
初回鑑賞年齢→41歳
(2022年時点41歳)
初回鑑賞場所→自宅prime
鑑賞回数→1回
記憶度→90%
マイ映画ランキング
2022年時点
全映画中→304位/511中
洋画部門→253位/427中
ブラジル映画部門→1位
ハイブリッド
日本語タイトルで盛大なネタバレやめてや
近代西洋文明への軋轢
南米の西部劇
「田舎に行ったらとんでもない村だった」系の映画かなー、くらいの認識でNetflixで鑑賞。
妙にクラシカルなタイトル。。なんだったんだろうという一抹の不穏さとともに本編へ。
一転のどかな村の生活、ジャンルを勘違いしてたかな? 物資の調達は大変そうだけど意外とテクノロジーは充実してるのねーからの突然のアダムスキー→「???」
やっぱりこれは普通の映画じゃないんだ! と大興奮。
そして埃っぽい村のメインストリートに馬がやってくる情景に妙な既視感を覚えて、もしやこれはウエスタン?と思い始めたところ、ほんとにそうだった。
これよこれ!こーいうのが見たかった!
いやーフリがちゃんと効いててムダがないし、めちゃくちゃ楽しい。
一見そうとは見えないけど、視点の切り替えの的確さ、情報の与え方とか、作り手は観客の興味を的確にコントロールしてくる。つまりジャンルの骨格が身についてるんだと確信した。
「◯年前」という字幕はよくあるけど、これは「数年後」。意味がわからなかったけど、後でちゃんとわかる。ナルホドそういうことね。
イチから十まで説明はしないけど、だいたい想像がつくようになってるし、後半に行くにつれ血湧き肉躍る場面の連続。
そして画面に映る村人たちの顔、顔、顔のインパクト。やってくるならず者たちの顔、その対比。
わざわざある場面では言葉を使って強調されるこの「顔」の差を描くこと自体がこの映画の目的のひとつなんだと思う。
かつての西部劇であれば白人たちが置かれていた位置にそうではない顔を並べる。差別的な構造が際立つようになっている。
つまり既存のジャンルの型を倒置することにより、当初「田舎のとんでもない村」を期待していた私自身も内なる差別を自覚させられました。
と同時に映画として一定の面白さをあらかじめ確保することにも成功しており、非常に明晰で、映画という娯楽に対する理解が深い作り手なんだと思います。
そして観賞後にNetflixからオススメされたのは「ゴールデンカムイ 」。。納得。
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