「パワフルな土着色」バクラウ 地図から消された村 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
パワフルな土着色
ウドキアにソニアブラガ。古い名前をみつけたので、古い映画とおもいきや、けっこうあたらしい。(2019)。ウドキアがいるなら底等級映画だろう──と思ってimdbを見たら7超え。しかもブラジルの映画。興味をそそられた。
荒原の小集落バクラウ。背景がよくわからないが、水の供給を止められ孤立している。水の配達車に乗って逝去した長老カルメリータの娘が帰ってくる。ところから映画がはじまる。
牧師とDJと自警団を兼任しているような男が村の中心で説法をしている。風俗には無類のごたまぜ感がある。
娼館がコンテナごと村へ巡業してくる。垂れ幕看板に中国語で「快乐的房子」(楽しい家)。女娼がふたり、男娼がひとり。
どこにいてもハエがたかる。磊落な衛生観念。と性観念。
黒人と白人。その中間色を揃えた、多様な肌色の人々。
村を取り込みたい地場議員が票取りにやってくる。トラックから本を無造作に落とす。焚書用かと思ったら寄贈書。白昼堂々、ツケ払いで娼婦を連れ去る。
緩衝地帯に連絡係。水も食料も分配制だが、スマホはみんな持っている。
と、ここでUFOが出現する。笑。
つぎつぎに新たな人物があらわれ、中心人物が定まらず、誰が、何を、どうしたいのか、わからない。にもかかわらず、興味が尽きず。
その理由は、エネルギッシュな空気感。村人は素人ぽいし、演出も編集もブツ切りだが、画に土着パワーがみなぎっている。加えて、ストーリーも風俗も風変わりで、引き込まれた。
拡がる一方だった話もラストで勧善懲悪にまとまる。
『人は善行でなく悪行で判断される』(映画中、村人の言葉)
強引で、大らか。復讐譚でみな真顔だけれど、なんか笑えてしまう気配。
生と死ではなく、性と死が日常なラテン気質が無類の魅力。
こんな気質ならば、ウィルスがまん延するのは当たり前。──と思える、直前の映画だった。