劇場公開日 2020年2月21日

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「信念を貫く苦しみを神に問うたひとりの農夫のこころの声を探求したテレンス・マリック監督の映像美」名もなき生涯 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0信念を貫く苦しみを神に問うたひとりの農夫のこころの声を探求したテレンス・マリック監督の映像美

2021年5月2日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ナチス・ドイツのオーストリア併合に反対して良心的兵役拒否を貫き通した、実在の農夫フランツ・イェーガージュテッターの信念を探求した詩的映像美が鮮烈な鬼才テレンス・マリック監督の、歴史の片隅に刻まれたヒューマンドラマ。妻フランチェスカと交わした往復書簡のモノローグと、奥行きのあるカメラアングルに前後に滑らかなカメラワークを多用した独特な演出による映像作家の力作。美しくも厳しい自然に根差した過酷な労働から培われた敬虔な宗教心が共鳴を呼ぶ。戦争と平和、信仰と諦観、愛と苦悩といった相反する概念が、振り子のようにこころの中で彷徨い答えを求める。観る者を考えさせる静かな映画だった。
映像美に溶け込むような音楽も素晴らしい。地味な脇役も時代再現の映像世界に息づいているが、主演のアウグスト・ディールと妻役ヴァレリー・パフナーが更にいい。特にヴァレリーの感情を抑えた表現の深みのある演技が見事。

Gustav