「正義を貫くことの意味を問うマリックの到達点」名もなき生涯 エロくそチキンさんの映画レビュー(感想・評価)
正義を貫くことの意味を問うマリックの到達点
これは凄い作品だった。『ツリー・オブ・ライフ』以降、ハイブローな作品を撮り続けてきたテレンス・マリックが魂をダイレクトに揺さぶる大傑作を作った。
オーストリアの山と谷に囲まれた美しい村、そこに在る自然を信じられない程の奥行きをもってとらえた映像に圧倒される。まるで楽園だ。そこで暮らす主人公フランツとその家族たちの幸せの情景が強い説得力を持った。
幸せの絶頂にあった彼らが戦争の渦に巻き込まれていく1939年。オーストリアの山に住む農夫たちにも容赦はなかった。1943年、ヒトラーへの忠誠を拒んだフランツは収監されベルリンへ。
ひとは正義のために死ねるものなのか?家族をも犠牲にできるのか?
状況は何も変えられない。犬死である。
この作品は観る我々に嫌というほど考えさせる。自分ならどうしたのかと。
これはマリックの最高傑作といえる強靭な意志を持った作品。今年の外国映画のベストの一本だろう。
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