劇場公開日 2019年12月13日

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「これぞ新自由主義!」家族を想うとき waiwaiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0これぞ新自由主義!

2019年12月22日
iPhoneアプリから投稿

This is THE NEOLIBERAISM.これぞ、新自由主義。そういう映画だと思います。

職場と学校からの暴力的な力で、家族が崩れていく。
もう、苦しすぎて、ずっと最初から歯を噛みしめて見ちゃうので、眠くもならないというか、なれないというか。

これを見ながらずっとセブンイレブンのオーナーのことが頭から離れませんでした。世界中のあちこちで、苦しい苦しい生活が充満して、押し潰され死んでいく人たちがいる。ちょっと病気でもすれば、明日は我が身。(あ、それは前作I, Daniel Blakeの話でしたね。)
もう、どこかで爆発しようぜ!そう言うしかない、そんな映画でした。

ケン・ローチの視線が好きです。明確な階級意識があって、労働者を応援、鼓舞してくれる。是枝監督がローチを師とするとか言っているNHK番組がありましたけれど、何を師としてるんだか?是枝監督はまるで分かってないと思いますけどね、労働者階級の立場なるものは。ローチが描きこまざるをえない労働者への暖かい眼差しは、例えば、万引き家族のどこにも感じられない。下層にいる人たちを対象にして描いているから、距離がある。確かに安藤サクラが流した涙には、人としての矜持が感じられるとても優れたシーンだと思いますが、意識的に描いていると思えない。ローチとは似て非なるとしか言いようがないのです。

それに対して、この作品のお父さんも、お母さんも、息子も、娘も、みんな人間としての誇り、矜持、ディーセンシイというようなものがあるんですよね。(まさに安倍首相一味からは一切感じることのないものですわ)
こういう人の描き方がグッとくる。

お母さんが、介護現場で泣きたくなるような利用者の振る舞いに対して、自分の親と思って接することを原則にしてる、なんて言う。これは言うのはできても、現実は、実際到底簡単ではない。泣きたくなるようなことが起きる介護現場で、そこに対応してたら、次の訪問先にすごい遅刻するでしょう!そこはどうするんだ?でも映画ではそこは描かなくてすみますからね。だから、そこは甘いと言われても仕方ないけれど、それでも、やはりそういう風に描かずにはいられない。そこにローチの眼差しを感じるんです。

上映館が東京では新宿と有楽町だけで少ないせいか、ほぼ満員でした。なんでこんなに上映館が少ないの?これも日本の現実かしら。

waiwai
グレシャムの法則さんのコメント
2020年3月8日

『レ・ミゼラブル』へのコメントありがとうございました。
最近観た『AI崩壊』『仮面病棟』でも、表現は違いましたが、資本主義社会で不要な人間は死んでもいい、という考え方が堂々と出てきてます。さすがに映画的には敗れ去りますが。でも、一部の人の本音としては、一定数の支持を得ている不気味さを感じます。たぶん、一部の支配者層にとって、共同社会の維持の方法が、〝助け合い〟から〝切り捨て〟に切り替えた方が効率がいいということなのだと思います。

グレシャムの法則