「【社会的弱者を苦しめる管理・官僚主義が蔓延る世に鋭い警鐘を鳴らし、”全ての人は尊重されるべきである”という信念を貫き続けるケン・ローチ監督の揺るぎない姿勢に敬服した作品。】」家族を想うとき NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【社会的弱者を苦しめる管理・官僚主義が蔓延る世に鋭い警鐘を鳴らし、”全ての人は尊重されるべきである”という信念を貫き続けるケン・ローチ監督の揺るぎない姿勢に敬服した作品。】
- 家庭を持つ者にとっては観ていて辛い映画である。
邦題はキレイだが、原題は”Sorry We Missed You"である・・。-
・日本でセイフティ・ネットの綻びが指摘され始めて、早や数十年。
厚生労働省も色々頑張ってはいるのだろうが、負のサイクルはリーマン・ショック以降凄いスピードで回っている。
- 私は、以前から厚生省と、労働省は分けるべきであると言っている。何故なら、厚労省の激務は霞が関で働く友人から、詳細を聞いており数字でも掴んでいる。コロナ禍が蔓延してからは、更に状態は酷いと聞く。厚労省で働くお偉いさんではなく、平の職員さん達には本当に感謝である。-
・現政府は、アベノミクスの効果を強調しているが、モノづくりを生業にしている者から言えば、景況感は明らかに悪化している。(2019年12月13日現在:数値は出せません・・。)
・で、企業が手を染めるのは、安い賃金で効率よく利益をあげるシステム、簡単に言えば非正規雇用の比率を上げることである。
・現宰相(当時の安倍さん。)は”人生100年時代、健康に70歳まで働きましょう!”などと国会で度々連呼しているが、これは、誰もが知っている年金問題とのすり替えである。
確かに日本人の健康寿命は70歳前半まで伸びているが、彼が言っている言葉は”皆さん、死ぬ直前まで働きましょう”と同義である。
ついでに、政府の財源を圧迫している健康保険料も減るのだから、まさに一石二鳥である。
・日本がこのような国になってしまった理由は何なのか。色々あるだろうが、管理・官僚主義の横行もその一つであると思う。
・では、イギリスはどうかというと、日本に輪をかけて経済情勢は悪化の一途を辿っている。(英国から撤退する日本企業は、増加の一途である。)
・で、ジョンソンみたいな変な人が首相に選ばれ、保守党が過半数を獲得し、(保守党を全否定するわけではないが。)EU離脱を決め、不寛容な保守派がのさばる事になる。
・その背景としては、深刻なイギリスの経済状態がある。
・マクラが長くなったが、今作はイギリスの労働者一家が、負のサイクル(正規労働者→”ある業界の個人事業主=非正規労働者”という名の経済的弱者)に巻き込まれていく姿を、哀切に描いた物語である。
・低賃金にあえぐ一家の長、リッキーがフランチャイズ制を導入している運送会社と契約し”個人事業主”の宅配ドライバーとして独立する所から物語は始まる。
フランチャイズ制度は日本でもコンビニ業界のオーナーの苛烈な働き方が、新聞紙上を連日のように賑わせているが、この制度を考えたレイ・クロックという男は頭は良いが、罪深い輩である。
・心優しき母、アビーは介護福祉士として休みなく働く日々。
長男セブは反抗期とも重なり、色々な問題を起こし、只でさえ多忙なリッキーとアビーは疲弊していく。(セブ、お前高校生ならば、家庭の事情を察しろよ!と鑑賞中、心の中で厳しくお説教。)
小学生の可愛い女の子ライザは家族中が悪化していく中、一人心を痛める。(で、ある行為をしてしまう。。)
・観ていて、本当に辛い場面が続く・・・。
・ラストシーン、この家族の行く末がどうなるのかがハッキリとではないが描かれており、少し涙する。(解釈は観客に委ねられる・・。)
<イギリスの一般的労働者、社会的弱者の目線で”官僚制度の瑕疵”への怒りをエネルギーに変換し、世の不条理、矛盾に鋭く切り込む映画を作り続けるケン・ローチ監督の揺るぎない姿勢に深く敬意を表する。>
<2019年12月24日 劇場にて鑑賞>
■2022年6月28日追記
日本が誇る是枝監督が、ケン・ローチ監督を深く敬愛している事は、周知の事実である。
是枝監督が様々な家族の姿に拘り、映画を制作し続けているモチベーションになっているのが、ケン・ローチ監督であると言う事を、先日「ベイビー・ブローカー」を観て思い出した。
NOBU さんこんにちは
コメントありがとうございました。
よくここまで、曲がりなりにでも、自分は頑張って、家族を養い守ってきたよなぁーって思いますよね。
僕たち、大したもんですよ。
こんにちは。ケン・ローチは身近で分かりやすく問題を描くので、今作も入り込みました。amazonもUberも儲かってますね。いつの間にかアメリカ資本だらけです。