「最後に大きな疑問符を残して終わる『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』リスペクトの滲んだ不思議な物語」リトル・ジョー よねさんの映画レビュー(感想・評価)
最後に大きな疑問符を残して終わる『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』リスペクトの滲んだ不思議な物語
新種の花を育成する研究所に勤めるアリスは研究に没頭する一方で、アリスの帰りを待つだけの息子ジョーは孤独を募らせていた。ある日アリスは人に幸福感を与える香りを放つ新種の植物を作ることに成功、息子に因んで“リトル・ジョー”と名付ける。確かにその花の香りを嗅いだ人間は幸福を感じるようになるが、彼らは皆奇妙な行動を見せ始める。
独特のテンポで進む不思議な雰囲気を持つ作品。明らかに『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』へのオマージュが滲んだ物語ですが作品トーンは全く異なり、アリスの周りにいる人達が花の香りに影響されているのか、今まで見せてこなかった内面を吐露するようになっただけなのかが判然としない不穏な空気が最初から最後まで漂っている掴み所のない作風。ジョーとのギクシャクした関係に苦悩するアリスの姿は思春期の息子との距離感の詰め方が判らない母親あるあるなので、意外と親近感が湧くのも不思議な感覚。そんな身近な現実とフィクションの境目を曖昧にするアリスを演じるエミリー・ビーチャムと、アリスに想いを寄せていて尋常でないテンポで間合いを詰めてくる同僚クリスを演じるベン・ウィショーのゆったりとした演技が導く大きな疑問符が刻む禍々しい余韻が観賞後もじんわり残ります。
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