アトランティックスのレビュー・感想・評価
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最初の娘
ファンタジー・ラブストーリーの皮を被った社会派映画である。ゴリゴリの社会派と言っても過言じゃないくらいだ。
最近気づいたのだが、恋愛映画には多かれ少なかれ社会派の側面がある。身分違いの恋、社会派ですね~。男同士・女同士の恋、社会派ですよね~。
もちろん、設定は世界情勢やその時その場所の規範に沿っていても、それはただのスパイス程度って映画の方が多いのだが、要は観る側の問題意識、私の気持ちが「社会派」に寄っているということの方が大きいことは承知しているが。
主人公・エイダは親の決めた結婚相手・オマールとの結婚を10日後に控えているが、本当に愛しているのは建設現場で働くスレイマンだ。
スレイマンの勤め先では3か月も給料が未払で、社長は話し合いにも出てこない。スレイマンをはじめとする若い労働者たちは稼ぎ先を求め、船でスペインを目指すことになる。エイダに別れも告げられないまま…。
意気上がってトラックの荷台で歌い、大騒ぎの仲間たちの中で、1人スレイマンだけが浮かない顔で座り込んでいるのが印象的だ。
エイダがスレイマンを愛していることは明白だが、それ以上に社会の「幸せの基準」に違和感を感じていることが感じられる。
女の子たちは口々に、オマールを愛する必要はないことや、結婚を断ったら親とも絶縁することを挙げてエイダを説得する。何なら自分がエイダの代わりになりたい、とも。
「良い暮らし」という誘惑と「家族を失う」という脅しが混在し、エイダの人生の決定権をエイダ自身から奪おうとしている。そのことをエイダは一番拒否しているのだ。
この後、予想もしてなかったファンタジックでややホラーな展開に突入していくのだが、それ以上に私を戦慄させたのはエイダを待ち受ける「グロい」仕打ちである。
映像的には全くグロくない。だが、精神的にダメージを感じる。新婚夫婦の寝室も、病院で受けさせられる検査も、花嫁が完全にモノとして扱われるグロさを内包する。
最も堪えるのはそれが「当然」で、エイダ以外の誰も彼もが何の疑問も不快感も持っていないことだ。
その国の価値観や、「それが幸せ」と思っている人々にとやかく言う気はない。ただ、「それは嫌だ」と思っている人は別の道を選べる安全性が必要だと思う。つまり、「スレイマンと一緒になりたいの」とエイダが選ぶなら、「良いんじゃないの」と周囲が受け入れる世界であって欲しい、それだけのことだ。
思うに、「家族の繁栄」とか「より強い男とつがえ」という規範は生物の初期的な欲望だ。思想を持ち、生物の鎖としてではなく「今、自分が生きているということ」に意味と思考を持つようになった人間が「自分自身に対する決定権」を持ちたいと願うのは、人間が人間であることの証左に他ならない。
「エイダ」という名前には最初の娘、という意味があるらしい。強い男と愛がなくても結婚し、家族を繁栄させるならわしの中で、自分で自分の生き方を決めようとするエイダは、まさに「最初の娘」に相応しい。
この映画のサブ的なメッセージとして、「セネガルって知ってますか?」という問いかけもあるように思う。そのメッセージに対して、セネガルについて色んなことを調べた私のことを鑑みると、作品の目論見は成功してると言えるだろう。
社会を見つめ直す眼を持ちながら、幻想的なラブストーリーとして物語をまとめ、映画の中に「今、自分が感じたこと」を許す意欲作である。
少しチープさはあるものの。
愛は青い心
一夫多妻制の国セネガルを舞台にした、金持ちのボンボンの第一夫人になることが決まっている女性と、肉体労働者の青年のすれ違いの恋愛をみせる話。
セネガルの首都はラリーもそうだけど、クワトロ大尉が演説をぶったダカールですね。
そんな町で3ヵ月給料が支払われていない若者達がスペインに向かい出航したり、好きな人への思いと後悔を抱えたまま結婚式が行われたりというストーリー。
確かに恋愛映画ではあるけれど、それだけじゃないものがありそうだと鑑賞したら…確かにそれ以外のものがあるにはあったけれどもだ(-_-;)
サスペンス的要素もあって途中かなり期待値が高まったんだけど、それだけで容疑者?というかそもそもそれは事件と断定されてないよね?セネガルの法律では警察にそんな権限が?とイマイチしっくり来ない中、まさかの目ん玉グリンッすか。
実際にもあった事故とか移民問題を絡めつつみせるドラマで、それなりには面白かったけれど、ちょっとチープさが引っ掛かってしまった。
ラブストーリーと言われればそれまでだが
"幽霊の気分で"
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