「完璧な映画。コメディ秀逸。」パラサイト 半地下の家族 Λibo.uryyy0さんの映画レビュー(感想・評価)
完璧な映画。コメディ秀逸。
完璧に近い映画。あえて私見で欠点挙げるなら物語にあまり深みは感じなかった。あと終盤、父が逃亡後の流れがもっと面白ければ完璧。ここで面白さが減速した為。だが息子の登山からラストまでが秀逸なので欠点箇所は3分間くらい。そして刑事と医者が秀逸でツボるのでそこ引いて2分くらい?約2時間の映画で欠点2分となるがそのたった2分内で物語の流れを端的に描写して、この映画、無駄な場面は皆無と感じる。そして別に欠点というか単に私の志向に過ぎないので。韓国嫌いな為つい欠点探してしまうのだ。
桁外れの面白さ。韓国映画を避けてた私的には初めての韓国映画だが、今後観る映画全部これと比較してしまうかもしれない。本作観た後だと他の映画の欠点に気づきやすくなりそうな気が。映画の模範のような出来ゆえに。思わず巻き戻してリピートしちゃうほど出来の良い場面が多い為なかなか先に進めないという、私的にはもどかしい映画でもある。
コメディ、ミステリー、スリラー、バイオレンス等ジャンルが散らばってるがコンセプトはブレてないしスムーズに視聴者誘導してて全く違和感がない。ジャンル盛り込みは駄作への道になりがちだが、よくこんだけ上手くまとめたな。コメディ比率が高いゆえ何度も観たくなる中毒性ある。視聴者飽きさせない事に最も主眼置いた純然たる娯楽映画と感じるが、同時に丁寧さとこだわりも全編通して感じる。何といっても映像美と構図、音楽の使い方も好み。演出やカメラワークのような基本は言うまでもなく上手いと思える。
■ 地下室の夫
リスペクト!の言い方と言ってる時の体の動きが絶妙。日本語吹替も字幕版と互角の絶妙さしっかり再現してて満足。ここ面白く言えるよう声優は練習したんだと思う。この地下室の夫は顔もそこそこ良いのがいい。リスペクトの言い方絶妙でも不細工なら好きになれない。この人表情も上手いから余計面白い。本作は数回観てるが毎回リスペクトの直前あたりで来るぞ来るぞ・・とソワソワが止まらないほど。そして巻き戻してリピート。この人バナナの食べ始めは少ししか齧らない。後で一気に食べる為だ。こんなしょうもないところまで気づいてしまうくらいリピートしてしまった。あと声が妙に可愛い。
■ 出演者
英語以外がアカデミー作品賞とった事に驚いたのが本作観たきっかけだが、今では男優女優賞もふさわしいとすら思える。全員知らない役者だが皆良い顔してるうえ凄い味がある。半地下一家は皆哀愁漂う顔してて年齢性別関わらず味わい深さ醸してる。そこ日本映画との差を感じる。全員リアルな演技ゆえ物語に没入できるから面白さが余計増す。本作は韓国嫌いを覆(くつがえ)す威力ある。もしくは逆に半地下一家の非倫理性や図々しさに韓国人らしさ感じて嫌悪増すという両極端。しかし一家が職を乗っ取るところ超ご都合主義で進んでいく為コント色が強く、だから図々しさがむしろ笑えるし、ここ笑う以外あるのかと。監督無能でご都合主義になった訳じゃなく効果狙ってあえてご都合主義にしてる。ご都合主義は笑わせる効果絶大なのだ。コメディなら非倫理的で当然で、倫理的にしてしまうと笑えないどころかご都合主義にもうまくハマらなくなってしまう。非倫理性も図々しさもコメディには必須で、どちらか欠如したコメディは全く面白くない(私見です)。
すがすがしいほどの図々しさに笑いを禁じえない。しかも描写も演技も秀逸でこんな一級品コメディ久しぶりに観れて大満足。
前半完全にコメディに振り切った潔い本作がアカデミー作品賞とはアカデミー賞も捨てたもんじゃない。見るべき所をしっかり見てる。
■ 本編
この映画は冒頭から面白いが特にユーモアのセンスが私の好みに合致しすぎてる。些細な場面でもいちいち面白い。ギャグ散りばめすぎでは。もしくはギャグのつもりじゃないかもだが。勝手に笑っちゃうだけで。
半地下一家は意外と有能揃いで、特に兄妹は若いから就職できそうだが「警備員1名募集に大卒500人殺到」らしいから有能兄妹でも就職困難かもと韓国就職事情の悲惨さに少し衝撃。
笑えるのは、上のおばさんのWiFi繋がらない→代わりにカフェのWiFiキャッチ。自宅でWiFi難民か…ここ笑うべきじゃないかもだが、貧困表現のついでに笑わせに来てる気もして冒頭からクスクスが止まらない。まあ韓国諸事情に無知な自分が韓国映画を真に理解できるとも思えないから気楽に観れる。これが邦画なら心痛めるかもだが。夫をフルネームで呼ぶのかとか息子に「息子」呼びするのかとか文化の違いを実感。
スマホでピザ時代探してる時の兄貴の表情とか4箱に1箱不良品と言われた後の父の全身とかツボる場面多い。背景のエキストラの配置が好きだ。さり気なさが上手い。半地下の窓からの景色も、窓の外の人間の有り様も風情あって良い。窓の外で水かける場面も美しく音楽も美しい。好きな場面多すぎてこの監督の美意識に惚れる。美しいのみならず職を得た一家の心がそこに表現されてて感動する。窓使った描写が上手い。構図と映像美とコメディを全部ハイレベルで堪能できる貴重な映画である。
WiFiの電波を祝って(笑)台詞がいちいち面白い。この父の幸せそうな表情上手いなぁ。ちゃんと心に響く演技をする。ミニョクに食事じゃないと言う父。そして演技。これは笑う。貧困を面白おかしく描く作品は多いが本作は笑いにちゃんと落としてくれるのが良い。というか単に私のツボというだけかもだが。あと、この父の演技が見事だから面白さが増してる。ミニョクに対してあえて平然とする演技、ピザ屋と妻に私じゃありませんみたいな演技。絶妙なさじ加減でコミカルさを演技に混ぜてくる。そのさり気なさが凄い上手い。だからついリピートしてしまうのかな。
そして父ほどではないが富豪一家の奥様も上手いと思う。奥様のとぼけたみたいな表情が最高に面白い。筋書き知ってるコント師みたいな表情するからコント感が増して笑える。監督の狙いもそこにあると思ったがどうなんだろ。父と奥様の連携プレーでガッツリ笑わせに来る気満々なのがもう耐えられない。全編観た後だとミニョクが「奥様はヤング・アンド・シンプル」と言う場面だけで笑いが込み上げる。
この映画は好きな台詞も多い。文書偽造学科はないのかとか、入浴してるギジョンの「テレパシーだ。サンキュー」という台詞が何故か分からんがめちゃくちゃ好き。地下室の夫の台詞はほぼ全部良い。
あと何といっても、血つけたティッシュ持って振り返る時の父の顔。これアカデミー男優賞ものだろう。この演技顔上手すぎるし面白すぎる。笑いのツボ的確におさえてくる役者と監督。次は奥様がショックのあまり目閉じてうっとり顔。確実に笑わせに来てる。この奥様も笑わせる表現力秀逸で私的にはこの奥様あってこそと思う。奥様はもちろん上手いが加えて監督有能で役者の技量を存分に引き出せるのかも。この数分前からの家政婦解雇作戦の一部始終、演出が凄い。音楽での盛り上げ、カメラワーク、スローモーション等々全部最高で何度もリピートした。特に父の演技顔は目に焼き付く程リピートしてしまい全然先に進めない。
富豪一家が留守中の豪邸でくつろぐ半地下一家。インターホン鳴った時の緊迫した空気がリアルだから集中して観れる。モニターに映る元家政婦がニヤニヤ顔なせいで不審さ際立って軽くホラー。地下室への長い階段が、折れた形状で先が見えないのがホラー。音楽と、元家政婦の叫びと、後を追う妻の「家政婦さん!」の声で更に緊迫感が増す。不気味な空気感の演出上手い。
テーブル下から脱出中の父が電気ついて途中で止まるところ。あそこ別にいらんだろ(笑)ストーリーになんら影響与えてないよ。そう思うとますます笑えてくる。あんなの入れてくるのがコントなのだ。あの場面は無駄に思えても笑わせる為には必須。いちいち監督がユーモア仕込んでくるうえセンス秀逸だからこの映画大好きなのだ。
階段を這い上がってきた元家政婦を妻が的確なタイミングで蹴り落とすところ。息子に尾行刑事に気づかせる方法として刑事にコケさせるところ。コント色強くて笑える。それどころか、こういった場面をダラダラと平凡に描写せずユーモア巧みに利用してスパッと一瞬で端的に表現し物語をテキパキと進めるのが凄い好きだ。好みゆえめちゃくちゃ有能な監督に思える。
手術後の息子がずっと笑ったまま時が経過。スマホで父のニュース閲覧中に首ポキっと鳴らせてるから息子の悲嘆は特に明確には描かれてない。息子の傷心描写する絶好ポイントなのに。ラストの息子の哀感強調する為にあえてここでは描かないのかな。安易に泣かせにかからないのは好感持てる。とはいえここで普通に息子悲嘆してくれたら物語に深み出そうに思えるし、私的に映画ベスト5以内に確実に入るので少し残念さもある。首ポキっは意外。
「日差しが降り注ぐから、父さんはただ階段を上がって下さい」こんな詩的な美しい台詞、普通のコメディ映画じゃ出てこない。この台詞好き過ぎる。やっぱコメディは本作の単なる1ジャンルでしかないのだ。
そして、「その日までお元気で」とは言いつつも、息子の表情や空気感で実現不可能な夢想と分かる。その日など永遠に来ない雰囲気醸してるゆえ救いも希望も描かずに物語は終了する事になる。何とも言えない哀愁漂っててこの映画にぴったりの幕引きだった。もし夢想の実現で幕閉じてたら私的に本作の評価下がるので、夢想シーン観た時ハッピーエンドかよと一瞬落胆したが。さすがこの監督はラストでもヘマはやらかさず、方向性が的確で完璧。というより単に私の好みの問題かもだが。仮に夢想の実現可能をほのめかすラストなら、格差は変えられるという希望のメッセージが伝わり名作っぽい雰囲気で終了し、もしかして本作の一般的な評価も更に高まるかもしれないが、安易にそれをしないのが好きだ。そんなハッピーエンドだと私的に本作の魅力だいぶ薄まってしまう。ラストだけ浮くから。
歌がエンドロール途中で流れるけど歌詞や歌声が息子が歌ってるように思えて、ここで初めて涙腺弱まった。歌聞いてると息子の不幸な境遇に思いを馳せてしまうから。のんきな歌声なのがまた良い。逆に心に刺さるから。誰歌ってるかは知らないが。なのでこんな最後まで私的にほとんど完璧な映画だった。
この映画良すぎるから書ききれないほど感想出てくるし初見の段階でリピート地獄だった。巻き戻さないで一気に観たい気持ちとの戦いだった。最初は韓国語聞くの嫌で吹替にしたが絶対字幕のが良い。韓国アレルギー治った気もするので他の韓国映画も観る気満々だが本作をつい再生してしまう。役者が全員魅力的なのも観る気にさせるし演技も全員上手い。こんな何度も観れる映画は私的には貴重だ。半地下一家の自宅の間取り図が欲しいし一家の普段の日常とか観てみたい。というくらいこの映画にハマってしまった。モノクロVer.も観かけたが映像は当然鮮明な為モノクロの良さあまり感じず中断。
2021/01 | VOD