「面白いけど、何だか気分がすぐれない」パラサイト 半地下の家族 天使の夢さんの映画レビュー(感想・評価)
面白いけど、何だか気分がすぐれない
テンポ良くスリリングで、ぐいぐい引き込まれた。
その割に見終わった後の気持ちが何だかすぐれなかった。
なぜそう感じだのだろう?
格差社会をテーマにしているのは確かだが、豪邸のファミリーと半地下のファミリーという真逆の人達が、同じ人間という生き物としてうごめく瞬間がある。
家庭教師として乗り込んだ半地下ファミリーの兄は、豪邸の娘と恋仲になる。
豪邸のお父さんは運転手の行為に下世話な欲望を抱く。お母さんはドラッグを欲しがる。夫婦仲は一見上手くいっているようで、そうでもない。
貧困問題が描かれている一方で、人間の生身の存在は皆変わらないことが印象に残った。
だからあのような結末は衝撃度を重視し過ぎている印象で、もっと人間の内面を見たかった。
仮に半地下ファミリーとさらに地下ファミリーの存在が明るみに出たら、あの夫婦はどう反応していただろうか?
万引き家族も犯罪をしながら生計を立てるファミリーだったが、人間に対する暖かさ、家族の温もりや別れの切なさに味わい深さがあった。
パラサイトの半地下ファミリーは豪邸ファミリーをうまく騙し、徹底的に収奪する。そこに躊躇いは全くない。
(特段の悪人ではなく普通の貧しい家庭の人達だったのに)
結果として豪邸ファミリーは完全に崩壊してしまう。
どんなに貧しくてもそこまでしてしまうのか・・
という、驚きとやるせなさが心にずしりと残った。
そのくらい、韓国の貧困問題は深刻というメッセージだったのかもしれない。