「語らずして訴える作品」パラサイト 半地下の家族 ユカリンナさんの映画レビュー(感想・評価)
語らずして訴える作品
暗い題材をコミカルな要素を加えて引き込まれたところで衝撃を与えられる。
本当の韓国情勢の真実は知らないが映画の中の彼らは高い能力を持ちながら社会の仕組みによりなんでもやる意欲があろうが仕事はなく不遇の生活を強いられている。それでも家族は仲良く人への思いやりもある。
家族をお互い守り生きて行くためにパラサイトも手段の一つ。彼らは誰も恨んでいないただ生きて行くため。
好き嫌いはあると思うが私はズル賢く明るいあの家族に惹きつけられた。出来たらパラサイトもほどほどに生活を立て直して幸せに暮らしてほしいと思った。
雇い主の家族も上流家庭らしいスノビズムはあるものの良い人たち。
本当にそれぞれの階級の人間模様がうまく書かれてる。
だが、終盤乱闘の中で父親が自分たちの臭いに懸念する家の主人を刺す。父親は主人に、主人のその仕草に怒りを感じたわけではない。主人もその臭いを嫌がってはいるが本人に嫌な顔するわけでもなく許容しているのも分かっている。父の貧困階級の証拠、生活で染みついてどうしても取れない臭いにずっと心の奥底に押し込めていた格差社会への憤りが乱闘の興奮の中で溢れてしまったのだと思っている。日本にもありえる貧困家庭と思って見てたがそこでそれはきっと当たり前にチャンスが与えられ普通に生活できてきた人には分かり得ない這い上がるチャンスもない憤りなのだと思った。
語らずしてさまざまなものが込められているすごい作品。人によっては貧乏な詐欺家族の末路くらいに思う恐れも。
そしてこれがトップオブ上流意識のアカデミー獲れるならこの後の世界少しは希望があるのだろうか。