「脚本の素晴らしさよ」パラサイト 半地下の家族 panpan00さんの映画レビュー(感想・評価)
脚本の素晴らしさよ
カンヌで賞を取ったことくらいは知っているが、ストーリーなどの前情報無しに鑑賞した。もしもホラーだったらどうしようかとは思った。(終盤恐怖だったけども)
始めはユーモアがあり面白い話が続く。なので楽しい映画で良かったなぁとホッとしていると、中盤辺りで大逆転し終盤は狂気で恐怖を感じる。よくこんな脚本思い付いたなぁと感心した。余り血の流れる映画は好きではないことや、貧民の生活が余りにも酷く汚いから、星4にしておく。星4.8位かも。
<前半>
韓国経済は不調のようで、警備員1人募集という求人に500人の大卒が応募する程に就職氷河期。なので、キム家もその影響を受けているわけで、家賃の安い半地下の物件に住み、ピザ屋のピザの箱を作る内職をして生活している。
半地下というのは日本では珍しいと思うが、韓国ではそうではないのだろうか?
半分地下というのがミソで、この映画では更に下の階層の完全地下の住人(元家政婦の主人)が出てくる。一方、金持ちのパク家は高台に住んでいる。パク家の家は非常にゴージャスで、日本人が見ても羨むような家だ。
貧乏なキム家が内職でピザの箱を作成していると、街に消毒薬が撒かれる。キム家主人は窓を開けておけば部屋の中が消毒されてよいと家族に指示する。このシーンを見て、部屋の中に大量に積まれているピザの箱は衛生面でどうだろうと疑問に感じ、やっぱり韓国製品は買わないにしようと強く思った。
パク家はパク家の主人(社長)、妻、高校2年の娘、幼い息子の4人家族。キム家とは逆で富裕層。娘と息子に家庭教師を付けていたり、運転手と家政婦を雇っている。高台にある豪邸に住んでいるが、新築ではなく中古物件である。ここもポイントでこの家にはパク家の知らない部屋がある。また、家政婦は前の住人の時から家政婦をしている。つまり、この家にパク家よりも詳しく、地下室の存在を知っている。
ある時、パク家娘の家庭教師をしている大学生が、キム家息子に家庭教師の代打を申し出る。留学のためパク家から離れなければならないそうだ。この大学生からキム家息子は石(価値がありそうな石)を貰っていて、これが重要な役目を持っている。キム家息子がパク家で家庭教師をすることをきっかけに、キム家の家族はパク家に寄生していく。キム一家がパク家にパラサイトしていく様は非常にコミカルで面白い。
ここまでは本当に面白かった。完全なコメディー。
<中盤>
パク家不在時に元家政婦がやって来てから話が転換する。コメディーからサスペンスか。
パク家に地下室がありそこに元家政婦の主人が住んでいた。4年くらいだったかな。この展開は予想できず、地下室に何があるんだとドキドキした。脚本凄いと思わざるをえない。
この後、突然パク家が戻るという連絡が入り、その間に再び元家政婦とその主人を地下室に隠すのだが、この時元家政婦は階段を転がり落ちて死ぬ。
この辺りで、一度元家政婦側がキム家の秘密を知り優位に立つ場面があるが、その辺りは省けなかったのかなぁ。キム家が正座し腕を上げてるシーンとか。そのため評価を少し下げた。
パク家が戻ってきたが、パク家息子は部屋の外でテントを張って過ごす。そのため、パク家主人と妻は息子が見えるリビングで寝ることにする。このリビングの大きなテーブルの下でキム家の主人、息子、娘は息を潜め隠れている。
ここでちょっとエッチなシーンがある。裸にはならないんだけど、結構な画なので役者としては凄いなと思った。
その後パク家夫妻は寝てしまうので、キム家の主人、息子、娘はパク家に見つからないように、寝静まってからパク家を後にする。
足の裏の描写があり、汚い足をしている。裸足であることが、貧しさを表してるのかな。ポスターも裸足だし。
家に帰ると大雨により、キム家は水に浸かっていた。キム家周辺は排水が整備されていないようで道路は水浸し。上から下に水が流れてくる。キム家の半地下住宅のトイレの位置がなぜ高いところにあるのかは謎だった。
キム家は、避難所で一夜を過ごす。
<後半>
パク家でパーティーが開かれる。キム家も誘われる。
私自身、パーティーするような家庭に生まれてない。こういう家庭もあるんだよなぁと貧富の格差を感じずにはいられない。
楽しいパーティーの中で、キム家息子が地下室に入っていく。地下室にて元家政婦の主人に襲われ、石で頭を強打される。この主人は妻である元家政婦がキム家によって殺害されたため、キム家に殺意を抱いている。
元家政婦の主人はパーティー会場である庭に出ると、キム家娘の胸を包丁で刺す。娘はこれで死ぬ。次にキム家主人の妻と乱闘になるが、返り討ちにあい、元家政婦の主人は死ぬ。
この騒動の中、キム家主人はボーッとしている。パク家主人から車を出すように指示されるも、反応が悪い。キム家主人はパク家主人の胸を包丁で刺し殺害。キム家主人は逃走する。
なぜキム家主人はパク家主人を刺したのか?
キム家主人のプライドが傷ついたためと思う。プライドというのは、もっとも根元的な人間としてのプライドである。
ストーリーの中でパク家息子が臭いをかぎ分けたり、パク家主人が臭いについて陰口を言ったり、パク家妻が車内でその臭いに気付くと窓を開けたり、など臭いに関する件が多い。この臭いは金持ちが嗅ぐことの無いであり、貧民の臭い。染み付いた臭いはなかなか消えない。臭いで人を区別できてしまうという厄介さ。この臭いが気になっていたキム家主人は人間としてのプライドが傷つき、対象にあるパク家主人を攻撃したのだと思う。パク家主人には恨みなどはなく。
一年が経つがキム家主人が見つからない。キム家息子は命は救われたが、精神病になっているようだ。目の前の人が本物かどうか信じられず、それが可笑しくて笑いが止まらない。例えば目の前の医者が本当は医者でないといった幻想を見ている。自分自身、大卒でないのに大卒と偽って家庭教師をしていたわけだから、それが重なって可笑しいのだろう。
キム家息子は、たまにパク家を眺めるため、山に登る。パク家のランプが光り、モールス信号を送っている。キム家主人はパク家の地下室にいたのだ。キム家息子は冒頭に貰った石を自然に返し、将来金持ちになってパク家を買おうと夢見て映画は終わる。