劇場公開日 2020年1月10日

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「えげつない 面白さ…‼︎」パラサイト 半地下の家族 D.oneさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5えげつない 面白さ…‼︎

2020年1月12日
iPhoneアプリから投稿

 はちきれんばかりの面白さが詰まりに詰まった映画。韓国の格差社会を炙り出し、力強いメッセージを訴えた社会派映画であると同時に、えげつないほどの芸術的作品です。
 そもそも設定が面白い。半地下に暮らす貧困家族が大金持ちの家にじわりじわりと寄生していく様が、絶妙なテンポで展開されていきます。と思えば、侵食しすぎていけば当然、粗も出てくるわけで、卓越したカメラアングルでスリリングな一面を映し出しているのはお見事。家全体、さらには高級住宅地と貧困地区を結ぶ街全体を、構造的な視点で暗示的に映し出すのも凄いのに、そうでないシーンでも皮肉の籠もったセリフや何やら意味の籠もったシーンが終始見られるのは、驚きを隠し得ません。隅から隅まで、摘み取りきれないほどの素晴らしい演出が散りばめられています。語りきれないほどの魅力が、この作品にはあります。
 この作品は、単に富裕層を悪く描いたものではありません。半地下の家族も思っているとおり、この作品に登場する金持ち家族もみな、魅力的な人なんです。だけれども、半地下で暮らしていた人間が放つ特有の"臭い"に思わず鼻を摘んでしまう、この行為は決して悪いことではなく、仕方なしに反応してしまうものでしょう。でもそんな一面が、"臭い"を放つ側にとっては、なんとも侮辱的でぞんざいな扱いに感じてしまうのです。決して特定の層の人間ではなく、そんなどうしようもない構造的な格差社会を、この映画は批判したのではないでしょうか…

D.one