「爽快で、滑稽で、残酷で、哀しい…心搔き乱される作品。」パラサイト 半地下の家族 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)
爽快で、滑稽で、残酷で、哀しい…心搔き乱される作品。
凄く良かった。
現代版 “蜘蛛の糸”。
強固な身分制度が生み出す閉塞感。
その息苦しさに一筋の光明が差したかと思いきや、この世に生を受けた同じ人間にも関わらず、生まれながらの格差が、越えられない高い壁が行く手を遮る。壁の向こう側、糸を持つ者たちの理不尽な物言いに絶望して…遂には。
そこには弱者が強者の裏をかく爽快さ。
強者の驕りと間抜けさ、弱者が故の滑稽さ、両者が相対する際のチグハグ。
弱者が成り上がるために同じ弱者を押しのけ虐げる残酷さ。
強者側に立ったと錯覚した弱者の、これまで意識もしていなかった乖離の哀しさ。
喜怒哀楽、パキッとどれかの感情に偏るのではなく、必ず何かと何かの感情が入り混じり、心搔き乱されます。
観終わった後、揺さぶられ続けた心の置き所に迷い、暫し放心して、気が付けばドッと心地良い疲れに浸っている…そんな作品でした。
特筆すべきは、視覚的な対比。
嫌という程に、残酷なまでに強者と弱者の対比を丁寧に描く。
山の上と山の下。
広々とした空と電線だらけの空。
開放感溢れる窓と足元だけが見える地下窓。
贅沢なソファとテーブル、地べたと汚い台。
白い壁と薄汚れた壁。
間接照明と裸電球。
そして雨が山の上から流れ、濁流となり地下に流れ込む。
夢のような時間が過ぎれば、地獄のような現状が待っている。
表面上は取り繕うことは出来ても、本質は、“匂い”は見抜かれ、明確な線を引かれ、越えられない壁が立ちふさがっている。
その閉塞感に心を蝕まれ、息苦しく。
また弱者の“弱者が故の間抜けさ、滑稽さ”も哀しい。
憧れた環境で弱者達が謳歌する、その陳腐さ。
やりたいことの品の無さは間抜けであり、滑稽であり…哀しい。
弱者と弱者の罵り合いも間抜け。
でも、薄い膜一枚剥がせば、そこには死が待っているという切羽詰まった状況が哀しい。
或る人物の一気通貫した“だらしなさ”も幸せになる資格が無いように見えてしまい、無性に哀しい気持ちに。
爽快で、滑稽で、残酷で、哀しい…心搔き乱される本作。
全編通して“不謹慎”な笑いに溢れていてゲラゲラ笑いながら、暗い影が差すという絶妙なバランスを成立させた監督の手腕に脱帽。
正直な話、溜めに溜めに溜めた…後のアレは思わずガッツポーズが出ました。
ヒトとして間違っているかもしれませんが爽快感に痺れました。よくやった!
兎にも角にも前情報無しで鑑賞するのが鉄則。
劇場で流れる演者達の前紹介、その背景、服装が妙な皮肉感で溢れているのも劇場で観てこそ。
オススメです。