劇場公開日 2020年1月10日

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「家庭教師のミタ園」パラサイト 半地下の家族 かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0家庭教師のミタ園

2020年1月2日
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監督自ら頭を下げてネタバレ禁止のお願いをしてくる映画というのを生まれて初めて見た気がする。本作のおかげで、2年連続アジア人監督作品がパルムドール受賞という快挙となったわけであるが、是枝裕和の『万引き家族』とボン・ジュノの本作では、観客への信頼度という点でかなりの温度差があるような気がする。

2作品とも国家にある意味見捨てられた棄民家族を主人公にしているのだが、ボン・ジュノによる本作は(『万引き家族』と比べると)、メタファー一つとってもストレートでわかりやすくかなりコマーシャルなブラック・コメディに仕上がっているからだ。しかも韓国格差社会の歪みは、ボン・ジュノがもはや観客を信じられないほどに大きく広がっているに違いない、そんな印象を受ける冒頭の一コマであった。

道端で立ちションする酔っぱらいが丸見えの薄汚い半地下部屋で暮らす4人家族。父親キテク(ソン・ガンホ)は失業中、息子ギウと娘ギジョンは貧乏で学校にも通えず、家族全員で出前ピザ屋の箱組立アルバイトでかろうじて生計をたてている。友人の紹介である裕福なIT会社社長宅令嬢ダへの家庭教師にまんまとおさまることができたギウは、ある〈計画〉を立てるのだが…

著名な建築家が建てた、広い芝生の庭がある山の手の豪邸が舞台となって展開するストーリーは、いつも以上にボン・ジュノが吐きまくった毒気に満ちている。絵に描いたような豪勢な暮らしをする社長家族と、ゴミ溜め同様の半地下部屋で便所コオロギと暮らす家族の格差が半端ではないのだ。今まで一線を越えることなかった富裕層へのルサンチマンが爆発するまでに至った経緯に、正当性を与えるシナリオともいえるだろう。

北朝鮮が発射するミサイルに備えて豪邸内部に作られたシェルター。北のニュース・アナウンサーをコケにしたかと思えば、社長の息子が立てたインディアン風テント(米軍基地?)の回りでパーティを楽しむ富裕層たち。珍客(在日?)のせいで家族の正体がバレそうになった時、さらにある災難が降りかかり踏んだりけったりの半地下家族は、現韓国政権同様の〈無計画〉路線を選択するのである。

「人を殺そうが、国を売ろうが関係ない」と息子に語るキテク。わかりやすい政治的メタファーを散りばめ、そんなアナーキズムを臭わせる演出をしながら、ボン・ジュノは貧乏人がけっして富裕層にはなれない決定的な“違い”を観客に突きつけるのである。もしかしたらこのまま富裕層(日本!?)に寄生・同化することができるのでは、という甘い希望が無惨にも断ち切られた時、韓国人の心にくすぶり続けている“恨”の炎がメラメラと燃え上がるのである。

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かなり悪いオヤジ