「染み付いたニオイ」パラサイト 半地下の家族 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
染み付いたニオイ
図々しく、狡賢く、逞しく、生きてきた。
黒光りしてカサカサと動きまわる家族の、数奇な運命。
世界中に蔓延る格差、慢性的な貧困、無意識下の見下し、様々なイヤなモノゴトが詰まっている。
しかし、その切り取り方は非常にユニークでトリッキー。
とんでもないことが起きて感情が振り回されるのに、鑑賞後は不思議な爽やかさすら感じる映画だった。
地上でもない、地下でもない、「半地下」の住宅環境、その概念を冒頭でガツンと植え付けられる。
あんなところにトイレあるの、嫌だなあ。
あんなところが窓として在るの、嫌だなあ。
見ているだけで息が詰まるような環境。
それでもまだ良い方なのかもしれない、なんて思うのも嫌なんだけども。
ストーリーは予想以上にエンタメ的。
スタイリッシュなクライムムービーのような描き方で、キャラもコテコテ。
テンポ良くアクセントばっちり効かせ、時にコミカルに、時にスリリングに。
もちろん問題提起はしているんだろうけど、「社会問題を社会問題として真面目に示した」というよりも、社会そのものを皮肉った視線や、どんな生活をしている人も可愛がっているような姿勢を感じた。
しかし、その中にあるたしかな重さにはだいぶやられた。
外ヅラを塗り固めて豪邸家族のあらゆる隙間に入り込み食べカスを拾うキム一家。
最初はそれを小気味良くニヤニヤしながら観ていたけれど、どこかにシワが寄っているようでだんだん不安に感じてくる。
そして計画外の衝撃。
予想外も予想外。寄生も寄生。
絶対的格差を目の前にして、狂うしかなかった人の姿にただただ圧倒されるしかなかった。
染みついたニオイは取れない。
計画をすれば失敗する。
無計画ならどうなってもなんでもいい。
しかし締め方の巧さよ。こんなのもう痺れるしかないわ。全部全部回収していく、丁寧で心地良い構成。
部外者からしたらもう複雑怪奇極まりない。その中に入れた面白さ、深刻さ。
人間ってほんとどうしようもないくらいイヤでイヤで、愛おしいよね。
別にキム一家に自分を重ねることはしなかったけれど、私自身が今を生きることに必死になっている時期なので、彼らの生命力を感じてなんだか元気になってきた。
年末年始って大好きだし。
こちら、桃とジャージャーラーメンとでかいソーセージが食べたくなっている、どうぞ。
こちら、パク家父の声が好きです、どうぞ。
あの社長の声は”倍音”でしたね。あのチョイス一つ観ても監督の細かい演出意図の拘りを感じざるを得ません。あの声の象徴する”選民思想”を抱くのは私だけでしょうか?純粋に憧れますしねw
ネタのかなり詰め込み過ぎ感は否めませんが(汗