劇場公開日 2020年6月19日

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「アルモドバルの赤」ペイン・アンド・グローリー にゃろめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5アルモドバルの赤

2022年5月9日
PCから投稿

初めて見たのは「キカ」
真っ赤なポスターが印象的で、オシャレな映画として観た。
内容は忘れてしまった。
スペイン=ガウディというカタルーニャモダニズム。
地中海のイメージそのままに、カラフルで陽気なモザイクデザイン。

アルモドバルのデザインは、ガウディのデザインにプラスして鮮烈な赤色が
とても印象的だ。(ガウディはどちらかと言えば青のイメージ)
本作でもそれは象徴的で、母親ペネロペの衣装や
サルバトーレの赤スーツと自宅。
そこに反対色の緑をアクセントにし、デザインに緊張感をもらたらしている。
さすがスペイン。さすがアルモドバル。といった本作。

映画は落ちぶれ監督の再起がテーマ。
そういったテーマの作品は、こちらにも「痛さ」が伝わってきて
重苦しい印象になりがちだが、本作はそれが軽めだ。
巨匠の「81/2」などと比べると、本作を物足りないと感じる人も多いであろう。
しかし、それこそが本作の魅力。
母親目線で見れば、貧乏な洞窟暮らし。
しかし、子ども(サルバトーレ)目線で見れば、
楽しい洞窟生活。美しくやさしい母。男の肉体美。
その後の自身のアイデンティティを育んだ綺麗な思い出。
陽気でオシャレで美しく描くのは当然だ。
そしてそれが最後のオチに続く。

本作では、「水」も印象的だ。
冒頭のプールのバンデラス。川での洗濯。
赤のスタイリッシュスーツで顔を洗う。
白い漆喰の洞窟、カラフルなモザイクタイル
陽光に照らされ水浴びするキラキラ肉体美。
重苦しいテーマを軽やかにするイメージとして
水の使い方が非常に効果的だった。

アントニオバンデラス。
屈強なロン毛マリアッチが、
背中痛くて歩くのもおぼつかない。
でも、目の力だけは健在でした。
母に「監督の目で見ないで」って
言われちゃうけどね。

にゃろめ