劇場公開日 2020年6月19日

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「ペドロ・アルモドバル監督ならではの人生賛歌」ペイン・アンド・グローリー bluewさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ペドロ・アルモドバル監督ならではの人生賛歌

2020年7月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

新型コロナウィルスが収まり切らない中で観たこのペドロ・アルモドバル監督の新作は、おそらく忘れられないものになるだろう。

監督自身を投影したと言われる初老の映画監督が主人公。過去の栄光を抱え今は病から精神的にもドン底状態で苦しんでいる。いわば隠居状況だ。過去の栄光によって舞い込んだ仕事から、ストーリーは回り始める。底辺だった彼に思いがけないことが起こり、彼は前に進み出す。すると状況もいい方向へと彼の背中を押す。・・・・これは人生を最後まで前向きに生きようという初老の主人公の再生の物語だ。

ノンフィクションならではのちょっとできすぎた感はゆがめないけれど、やはりこういう結末の方が気分がいいのは、この映画を見ている現在の状況のせいもあるのだろうか。あきらめてはいけない、人生は捨てたものじゃない、乗り越えて行こう、といった監督自身にも向けた人生賛歌なのだ。

メインの俳優たちがペドロ・アルモドバル作品の常連なのは、安定感というよりちょっとマンネリ感も感じてしまったけれど、ストーリーを彩る独特の色彩、インテリアデザインのセンスの良さは、主人公のファッションと相まって、変わらず健在。裏切ることなく、溜息ものだった。貧しい境遇として描かれる故郷の村の住居でさえ、牧歌的なテイストにこじゃれたアクセントが利いていて、思わずうっとりだ。飛び切り素敵なインテリア雑誌をみているかのようだった。

主人公の最初の状況に大いに共感する私にとっては、映画館での鑑賞再開を記念するにふさわしい作品だった。

bluew