「アルモドバルの最新作が観客を温かくもてなす理由」ペイン・アンド・グローリー 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
アルモドバルの最新作が観客を温かくもてなす理由
心身共に消耗し切っている映画監督が、過去に体験した切実で痛々しい恋愛や、愛してやまない母親への思いを再確認することで、再び創作意欲を取り戻していく。数ある職業の中でも、苦痛を創作の武器に換え、そこから作品を生み出せるのは、美術家か小説家、または、映画監督ぐらいではないだろうか。初の自伝とも言われる本作のために、作者のペドロ・アルモドバルは盟友のアントニオ・バンデラスに自身の分身と思しき主人公を演じさせ、自宅から所有しているアート(ギジェルモ・ペレス・ビジャルタの抽象画等)やインテリア(月の満ち欠けが楽しめるエクリッセ・ランプ等)や食器(エルメスのティーカップ等)を持ち出し、セットの中に自分が生きてきた時間と空間を見事に再構築している。稀代のアートコレクターとして知られるアルモドバルらしい舞台設定の下、語られる物語は、だからこそ観客を温かくもてなすのだろう。
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きりんさんのコメント
2021年12月28日
僕も抽象画「ニンフとサテュロス」におや?と思い、画像検索しましたら「個人蔵」とありました。なるほど。
あとミロもちらっと映りましたね。
自宅でロケとか、スタイリッシュ過ぎます。