「最高のB級 !! 低評価だった人には読んでほしい。"トム・ウッド"を思い出した。」デッド・ドント・ダイ ロンゲニウムさんの映画レビュー(感想・評価)
最高のB級 !! 低評価だった人には読んでほしい。"トム・ウッド"を思い出した。
ジム・ジャームッシュがゾンビ映画?
どういうこと?
と思って観て見ると見事にやられた。
日本で大流行りした、カメラを止めるな!!とある意味正反対のものがそこにはあった。
気持ちの良い音楽に、登場人物たちの独特の会話や間を楽しませるジムの空気感はそのままに、コーヒーを飲むイギーポップゾンビやクリーヴランド出身の3人組、拘置所から脱走する3人組、トンチンカンなアジア・日本感を感じる日本刀を振り回す人物など.......ジムの作品を見ていれば、なんだか見覚えのあるようなシーンが続々と、セルフオマージュや小ネタにクスッと笑わされる。
そしてなんだかよく分からないけど、無理やりこじつけたような理由で地球の地軸がずれ、なんだか分からない理由でゾンビが墓から出てくる。
月には安っぽいエフェクトがかかり、登場人物たちはゾンビ映画の古典に沿うように、実にありがちな理由で死んでいく。
そして終いには、UFOが登場して、ティルダスウィントンのみを連れて去っていく....。
全くもってわけがわからない、"B級のゾンビ映画"だった。
そう、ジム・ジャームッシュが今回作ったものは、"最高のB級ゾンビ映画"だったのだ。
おそらくジムは出演者たちに、このようにこの映画の話を持ちかけたのではないだろうか。
「ねぇ、すごく豪華で最高につまらないB級映画を作ろうと思うんだけど、出てくれないか?」と。
ビル・マーレイやRZA、トム・ウェイツ、スティーブ・ブシェミなど、彼の映画ではおなじみの俳優陣はもちろん、前作から作品に起用されているアダムドライバー、オンリーラヴァーズレフトアライブからのティルダ・スウィントンなど、その他諸々かなり豪華な出演陣。
それが先ほどの"B級っぽい"シナリオで演じるのだから、最高のB級ゾンビ映画に違いない。
「カメラを止めるな!!」が低予算でありながら最高のエンタメを作り出した映画なら、「デッドドントダイ」は最高の材料で最低のB級を作り出したのだ。
そんなのありかよ〜と思う人もいるかもしれないが、答えも作品の中でしつこく、なんども繰り返しアダムドライバーが言っている。「とんでもない(最悪の?)結末になる」と。
つまりはゾンビも特に解決せず、UFOが突然現れ去って行き、ほとんど死ぬ。まさに"とんでもない結末"。
物質主義的なくだりや、各登場人物の動向、作品としてのゴールは?というのはほとんど無視しても良い。これら全てはいわゆるカフカの"城"にあたるものであって、全くもって重要ではない。ストレンジャーザンパラダイスに、ダウンバイローに、コーヒーアンドシガレッツに壮大な物語やゴールはあっただろうか?いや、なかったはずだ。あくまでゴールに向かう道程を楽しむのである。
"世界は完璧だ。細部に気を配れ"とも言われている。
観ている途中から一つの映画を思い出した。
ティム・バートンの「トムウッド」だ。
史上最低と言われるB級映画監督トム・ウッドの人生を描いた作品だが、これがまた退屈でとてもつまらない。そして気づく、最高につまらない映画を作り出した映画監督を描いた映画だから、あえてつまらなくB級にしたんだと。
デッドドントダイもまさしく、あえてつまらなくB級に作られた映画。そして細かなユーモアやセリフ、音楽、空気を楽しむジムの映画。
面白くなかったって?つまらなかったって?
そう思った方の感想は的確、正解。
最高につまらないのだ。
物足りなかった、つまらなかったという評価は、正直な方の、正しい評価だと言える。
長くなりましたが本当に最後に邪推、超偏った想像ですが、、、
ゾンビ映画がつまらなかった。
ゾンビ映画、つまらない。
ゾンビ映画はつまらない、、、、あ、、、。
ということで、最近映画もドラマもゾンビゾンビですもんね。
PS
残りの0.5点は、普通に面白いいつものジムの映画が見たかったなという気持ち。
ミステリートレインのヨーヨーの妹がキャスターとして久々に見れて嬉しかった。