罪の声のレビュー・感想・評価
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罪の声ではない、その声が人生を掘り起こす
日本犯罪史上最大の未解決事件と聞かれて真っ先に思い浮かぶのは、三億円事件。しかし、こちらも。
グリコ森永事件。
モチーフにしたベストセラー小説の映画化。事件名も“グリコ森永事件”から“ギンザ天萬事件”に脚色。
正直言うと三億円事件ほどよく知ってる訳でもなく、メーカーの社長が誘拐されたとか、商品のお菓子に毒が混入されたとか、それくらい。
さらに言うと、原作未読はいつもの事ながら、作品自体も暫くほとんど興味無く。と言うか、グリコ森永事件モチーフの作品である事を知らず、ただの小栗旬と星野源のW主演のサスペンスってぐらいにしか知らなかった。
で、それを知ったら、メッチャ面白そうやん!
そして率直な感想は、非常に面白かった!
中身スカスカの記事を書く芸能部の記者・阿久津は、社会部へ異動。とっくに時効となった35年前の未解決事件“ギンザ天萬事件”の取材をする事に。最初は昔の事件とやる気無かったが、のめり込んでいく。
昭和の謎に挑むミステリー。
父親の後を継ぎ、昔ながらのテーラー店をひっそりと営む曽根。
ある日、父の遺品を見つける。古ぼけたテープ。そこに入っていた声は…。
天萬事件で脅迫に使われた子供の声。
記憶に無いが、自分は事件に関わったのか…? 父は犯人だったのか…?
自分の家族の秘密を調べながら、彼もまた事件の真相に迫っていく。
やはりこういうミステリー物、主人公が二人居て、それぞれのやり方で真相に近付く…というのが面白い。
原作は大長編と聞く。映画を見てれば分かる。
膨大な情報量、エピソード…。
何人もの証言者、浮かび上がる怪しい人物(キツネ目の男)、辿り着いた犯人グループ…。
学生運動などの当時の情勢、警察や裏社会の繋がり。日本を変えようと過激な行動に出てしまった若者たちと、日本社会の暗部。事件の真相は本当にこうだったのでは?…と思わせるほど。
重厚で骨太で、それでいてテンポよくエンタメ性も抜群。
TVドラマ『逃げ恥』の監督×脚本コンビで、これほどのミステリーを魅せられるとは!
小栗旬&星野源も熱演。
ミステリーとして見応えあったが、人間ドラマとしても胸打つものもあった。
よくあるっちゃあよくあるが、事件に人生を奪われた者たち。
本作の場合、知らず知らず事件に関わった、テープの声の子供たち。
曽根と、後二人。
その後の人生は明暗分かれた。これは見てて胸が痛かった。
曽根もあのテープを聞いて、どんなに苦しんだろう。
が、さらにもっともっと苦しんだ者が居た。残酷過ぎる悲劇に見舞われた者も。
犯人グループの犯行理由。金、あの頃の日本という国に一矢報いる…など己の欲。
そんなものの為に彼らの人生は奪われた。
彼らの悲しみ、苦しみを知れ。
彼らの人生を返せ。
奪われた時は取り戻せない。
が、真実を掘り起こす事は出来る。
彼らを苦しめた過去の“声”によって。
悲劇や絶望の中でも決して諦めない。ギンザの看板(=夢)に誓って。
謎から始まり、徐々に紐解かれ、
悲しみ、苦しみ、
35年を経て、真実が明かされ、
時が彼らを優しく包み込む。
事件に巻き込まれた人生に時効はなく…
予告で面白そうだと思い
アイアムアヒーローの脚本の人だしと
期待して観賞
原作は未見
モデルになったグリコ森永事件は物心がつく
ギリギリ前で当時の記憶はほとんどありませんが
お菓子のパッケージがフィルム包装になったのは
この事件からと言うのは有名ですよね
感想としては
・テンポ重視で追いやすい推理パート
・常に緊張感があり時にドキュメンタリータッチ
・声に翻弄された人々の運命
・それぞれの立場が持つ意思
色々要素が詰まりながらも上質にまとめられ
今年ここまで観た邦画でも相当良かったです
京都で父光男を継ぎ同じテーラーを営む曽根俊也
ふとしたキッカケで自宅から出てきた
「1984」とラベルにあるテープと英字の手帳
そのテープには(実在のグリコ森永事件モデルにした)
「ギン萬事件」で使われた謎の子供の音声…
そしてその声は幼少期の俊也の声であり
俊也は妻子に黙って真相を究明しようとします
そんな折丁度大日新聞社文化部の記者阿久津英士は
上司の提案でギン萬事件の前年にオランダで起きた
社長誘拐事件を調べていた東洋人の存在をロンドンまで
追っていましたが取材を進めるごとに事件の真相から
ギン萬事件に使われた子供の録音音声
その主がどう事件に巻き込まれ人生を翻弄されたか
という真実が浮かび上がってきたのでした
日本警察史上最大の劇場型犯罪と言われたグリコ森永事件
県警の意地に張り合いや縦割りっぷりで犯人を逃し続け
警察信用の失墜にも繋がった事件と言われています
その事件は当初は社長誘拐だったもののその社長は
身代金取引前に逃げ出し
その後は全国のお菓子会社や小売への毒物混入など
犯行が異質化していきました
そして「キツネ目の男」などの似顔絵は事件の詳細を
知らない人でも交番の掲示板等で記憶にある人は
多いかもしれません
この映画はそうした事件をベースに起こされた
フィクショナルな真相の部分を解き明かしながら
時効になったこの事件の真相を追う当事者の俊也
新聞記者の阿久津それぞれがそれをする理由を
自問自答しながら犯行を画策した側の人間の目的
主張も取り上げ「知ろうとすることの意義」のあり方も
問う作品になっています
展開的にはまるでファミコン時代の推理アドベンチャー
のような一本道展開でテンポは早いです
そんなにうまくいくのかと思う部分もありますが
映画の尺にはこれでいいのかもしれません
一部俊也の事件対する苦しみが伝わってこない
というレビューも目にしますが
俊也は事件と無関係の光男の背中見て育ったわけで
自分が関わってしまったというショックよりも
同じような経験から人生をメチャクチャにされた
姉弟への気遣いなどができる心優しい男なんだという
描写が十分あったのでそうは思いませんでした
ただ俊也も母が録音の真相に関わっていた事実には
相応にショックを受けていると思います
この辺の表現に関して星野源はハマっていたと思います
小栗旬も30半ばを過ぎて味が出てきましたね
こうした社会派作品に製作から入り込んで出演もしつつ
作っていくマット・デイモンやブラピのような
立場に興味はないのかな
そういう活躍もこれから期待したいところです
観る機会があれば是非オススメしたい作品です
たまたま観るにせよ某とんかつ映画より断然こっちです
意義のある映画
「グリコ・森永事件」を題材にした小説を小栗旬さん、星野源さんのW主演で映画化した今作。
他キャスト陣も実力者揃いで安心して見ることができました(上から目線ぽくてすみません)
W主演ではありますが、前半では小栗さんと源くんは交じらわず、それぞれで事件を追い始めます。
今作はこの2人の軸を行ったり来たりするのが上手かった。
いいテンポで切り替えてくれるので混乱もしにくく、2人が出会った時は話が加速して行く緊張感がありました。
登場人物は多いですが、演じられている皆さんが特徴的な方々であり、取材内容もわかりやすかったので居眠りしなければ置いて行かれることはないと思います 笑
観た人の多くはどちらかと言うと源くん演じる曽根俊也が印象的ではなかったでしょうか?
小栗さん演じる阿久津英士もいい役でしたが、記者という立場である為感情の比重は前者の方があったかと。
自分が知らない内に事件に加担してしまっていた俊也はショックを受けますが、同じ立場である生島望、聡一郎姉弟の事件後の境遇を聞き、さらに罪悪感を抱きます。
とても人間らしい。いや、日本人らしいと言った方がいいのかな。
個人的には「うわぁ…そうだよな…」と遺伝子レベルの共感シーンでした。
話の大半が取材で進行して行きます。
主人公が警察や探偵であれば合間にアクションが入ったりしますが、取材取材取材の繰り返し。
正直長く感じる瞬間はありましたが、最後にこの一連を見事にまとめてくれて昇華されました。
2時間20分強と物理的に長いのは確かですが、最後まで見届ける価値は大いにあります。
「怒声」から「悲鳴」へ…
当時の〈若者〉達が起こした学生運動は
社会や警察に立ち向かうために起こした「歓声」かもしれない…
しかしその声は〈大人〉になった今でも残し続けたせいでいつのまにか周囲を巻き込む「怒声」へと変貌し、
巻き込まれた子供達は「悲鳴」すら上げられず
理不尽に苦しみ続けたのだと思うと胸が苦しくなる、
そんな作品でした。
80年代当時は今となってはあらゆる記録としてしか残されていないが
フィクションでありながらも現代でも隠されている
事件やそれに苦しんでいる人はどこかでまだ「呻き声」を発しているのだと感じると
それを聴き逃してしまうのは「罪」なのかもしれない。
それはそれとして
「アンナチュラル」や「MIU404」の俳優達が脇を固めて野木さんの脚本作品のファンも楽しめる作品です⚡️
(ノД`)大人達のたかぶり、、、。
予告でもわかるようにグリコ森永事件を題材した知らぬ間に事件に巻き込まれた子供達の話です。脅迫文の録音を知らぬ間にしてしまい大人になった青年がひょんな事から事件の全容を知ることとなる。3つの脅迫文と3人の子供たち、姉弟は不遇の人生、、、姉は死亡、弟は流浪の人生、主人公は大人になって初めてその事件を知り真相に近づいていく。
最初から主人公の叔父が犯人である事が完全に分かり、全然おもしろくないんじゃないの?と思っていましたが、そこからの事件の全容解明に完全引き込まれます。こうゆう映画ってよくよく考えると辻褄が合わないんじゃないのという事があるんですが、主人公の星野源と新聞記者の小栗旬がこの事件でつながるまでが自然で、この事件の全貌も納得いく流れです。緻密な脚本です。そして意外な人物が事件に絡んでいる事に気づき、、、、。
面白い、ホントに見入ってしまった。星野源ともう1人生き残っている子供が間一髪で出会う事ができ本当に良かったと思う。不遇の人生には涙、死んでしまった姉に涙。
原因は大人たちのたかぶり、、、、つまらない罪によって関係ない人間が生き地獄を味わう事は許せん事でありましょう。しかしながらこの大人たちのたかぶり、、、わからない訳でもない。違う見方をするのなら不遇の人生を送った姉弟達の自力はいかがだったのだろうか?運はどんなもんだったのだろうか?
現に自殺しようとしていた弟は主人公と出会って命を繋いだ。土壇場で神に救われたのだ。
私は個人の自力と運を信じたい。
(原作既読)力作。35年前に遡る話なので、証言者や事件関係者として実に懐かしい面々が出てくるのが嬉しい。映画として小説とは独立した面白さを持ち得た映画化の成功例だろう。
①原作は、「グリコ森永事件の真相はこうだったのではないか」という作者の推理を小説にしたものなので、面白くはあるが文学としての深みが有るわけではない。その映画化だからまたぞろ原作をなぞっただけの映画だろうとたかをくくっていたら、予想を上回る骨太の力作に仕上がっていた。②演出が最初から最後まで殆んどぶれずに一貫したリズムと骨太感で進むのに先ず感心した。土井裕康ってこんな達者な演出家だったっけ。勿論、ここまで刈り込んでも話の骨格は外さなかった脚色の巧みさや編集の上手さもあるだろうけれども。③小栗旬は、原作通りの好人物である阿久津を見事に具現化。原作ではあまり感じなかった記者としての成長も表現していて、良い役者になったなぁ、と感心した。星野源も実直なテーラーを好演。二人の関西弁も関西人である私にも違和感がなかった。④他の出演者もおしなべて好助演。原作の70年代の学生闘争とグリコ森永事件とを結びつけた発想も面白いけれども、その言わば中心人物とその協力者との晩年を、「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」で70年代にロックンローラー(昔のロックンロールは反体制の音楽だったんだけどね)として活躍した宇崎竜童と、「女囚さそり」で70年代初期に一世を風靡した梶芽衣子とに演じさせたのも粋なキャスティング。そしてなつかしや桜木健一が警察の柔道部の監督(?)として登場したときは「柔道一直線」をリアルタイムで観ていたオールドファンといては飛び上がる程驚いた。⑤上記の二人がそれぞれ京都とヨークとで真相を告白する場面を平行して描いたのは映画の作劇としては上手いと思った。ただある意味この映画のクライマックスとも言えるこれらのシーンが映画の他の部分と同じペースで演出されているので、皮肉なことにこの作品で最も最も喰い足りない。④映画は、所謂大人たちの欲望(金銭欲・権力欲・虚栄心・弱いもの虐め等)の犠牲になっただけでなく、反体制・反権力闘争に陶酔した若き日々(の自分)からぬけだせないでいる者たちの歪んだ主義・主張の犠牲にも子供たちがなったことを原作以上に丹念に描くことで、子供はいつの時代も大人の犠牲になるという構図を令和と昭和とを結ぶタイムレスな問題として全面にだすことで、この映画の現代性を強調する。この点が映画が原作との差別化に成功している由縁のひとつである。⑦小説を映画化した場合『こうなっちゃたのね↓』という残念さが多い中で、『こうい風にしたか!』と喜べる作品になっている。⑧なお、個人的なことながら、劇中で望みが読んでいた”スクリーン“の同じ刊を私、いまだに保管しています。そのことで、いっそう切ない気分になりました。それはそうと、グリコ森永事件が起こった年は新卒入社した年で会社と新しい環境になれることでいっぱいいっぱいで事件のことは細かく覚えておりませんのです。悪しからず。
なかなか考えさせられるいい映画でした!
未解決事件といえば古くは『三億円事件』をかろうじて覚えていますが、時効寸前にそれを題材にしたドラマ『悪魔のようなあいつ』で記憶しているだけで、もう時効になってから40年以上になるかと思います。まだカッコよかった沢田研二さん、藤竜也さん、妹役の三木聖子さん(すぐいなくなっちゃいましたが)の『まちぶせ』はよかったですね!カバーでヒットした石川ひとみさん(プリンセス・プリンプリン)ですらずいぶん昔ですから。
逆にこの『グリコ森永事件』はまさに劇場型犯罪の初期のものとして鮮明に記憶しています。警察を翻弄させて喜んでいるかのような犯人(グループ?)に対して腹立たしく思いながら、店頭からお菓子類が消えてしまったことにも違和感を感じながら、またマスコミの過剰な報道合戦が印象深い事件でした。
この原作は未読ですが、素晴らしいストーリーですね!この映画を観た人は犯人像や内容が本当のものと勘違いしてしまいそうです。そんな素晴らしいストーリーと主役のおふたりをはじめ脇を固められた数々の役者さんたちの演技が素晴らしく、見事にマッチして2時間半の長尺を全く感じずにのめりこむことができました。
ある意味いいバディとなった阿久津(小栗旬さん)と曽根(星野源さん)が川沿いで話すシーン、なぜ社会部から出たのかは感慨深いものがあります。また「出た!京都人の褒め殺し!」はもしかしてアドリブ?って思うほどあまりにも自然で思わず笑っちゃいました。
また対照的な人生を歩まざるを得なかった生島聡一郎(宇野祥平さん)が曽根(星野さん)に「あなたはどんな人生を送られたのですか?」には曽根本人でなくても言葉に詰まってしまいそうで気持ちが重くなりました。
梶芽衣子さん、市川実日子さん、宇崎竜童さん、松重豊さん、古舘寛治さん、みなさん素晴らしかったです。久しぶりに見た桜木健一さんが『刑事くん』ではなく道場にいた(『柔道一直線』?)のは監督の遊び心でしょうか?!(ってわかる人少ないですよね?)
重いストーリー展開の中、聡一郎が生きる望みを取り戻したこと、母親に再会できたこと(よくある認知症で息子のことが分からなくなってしまっているパターンではなかったこと)少し気持ちが明るくなりましたが望ちゃんには生きていてほしかったですね。
エンディングで阿久津がテーラー曽根にスーツを注文しに来るところもなんだか救われた気持ちになりました。
いい映画です!映画のストーリーが本当のことと勘違いする方がいてもいいので色々な世代の人に観てほしいと思える作品でした。
声を使われた子供の視点という着想が秀逸
塩田武士のグリコ森永事件をモチーフにしたミステリの映画化です。30年以上前の複数の食品会社の脅迫事件を、脅迫に自分の声が使われた子供の視点から描いた作品です。30年以上前の未解決事件が記者が調べ始めると次々と新事実が発見されて犯人まで辿り着くあたりは都合良すぎるようにも思いますが、昭和の未解決事件を声を使われた子供の視点から描くという着想は秀逸で、面白かったです。
グリコ森永事件の謎解きとして面白い
グリコ森永事件の謎解きとして単純に面白いし、事件に使われた声の子供たちのその後に焦点を当て、星野源・小栗旬双方から迫ってゆくところも興味が引かれて良い。
その結果はなかなかになかなかなのだが…
確かに泣きはするのだが、「感動」というのとは違うのでは?むしろ同情というか「可哀想で可哀想で…」というに近い感情…
惜しむらくは、まるで「お上に楯突くのは良くないよね」とも理解されてしまいそうなところ。あくまでも「犯罪というやり方では良くない」ということ。
そして、負けたのは国民だったのではなく団塊の世代だったのだということも強調しておきたいところ。
しかし、「スクリーン」が哀しい…
似顔絵は本物?
佐藤蛾次郎が「キツネ目の男」について尋ねられたとき、「と、寅さん」と言ってほしかった。とにかく有名俳優がいっぱい。その中でも一番の好演だったのは梶芽衣子かなぁ・・・
最初からラジカセ(同じの持ってた)が登場したこの作品。1984年の事件という設定であるため懐かしさも満載。もうちょっと年配の方なら学生運動の様子も懐かしいだろうし、昭和と平成の半世紀という激動の時代の陰となった者たちにもスポットライトを浴びせた感じがする。
グリコ・森永事件をモチーフにしているだけあって、当時のニュースにくぎ付けになったことまで思い出した。子どもの声に撹乱されたり、ワープロの機種(パンライターP45)まで特定できたり、鈴木松美所長の音声研究所がクローズアップされたり、といった様々な報道が思い出されるのです。あぁ、懐かしい。
新聞記者の阿久津による独自の調査。人から人へと繋がっていく地道なものなんですが、当時の警察にできなかったこと、しかも35年も経ってるのに無茶やろ・・・とは思いながら、徐々に関係者の人数が増えていくにつれ、写真も古かったし名前を覚えきれなくなりました!重要なのは、元警察官の生島一家と殺害したヤクザ。そしてテーラー曽根の伯父にあたる達雄だ。
やっぱりこの長尺はきつかった。総一郎の激白、保険証がないこと、俊也に「あなたはどうでしたか?」と尋ねるところ。泣けた・・・どんな過酷な人生なんだ。姉の望は死んでしまい、この先生きる希望といえば母に会うことだけ。対する俊也が妻子もある、まだマシな人生を送っていたことに戸惑いを見せる星野源も良かった。
もう一つの個人的泣きどころは梶芽衣子の告白シーン。冤罪事件で死に至った父親の復讐の意味を込めて学生運動に参加。一旦は幸せな人生を選ぶものの夫の兄が達雄だったことで、犯罪に加担してしまう。そして俊也録音したのは・・・
子供の未来のことなど考えてもみなかった当時の状況。生島にいたっては、全ては金のためだった。望が翻訳家になる夢を抱いていたところも映画ファンとしては嬉しい限りで、大切そうに持っていた「スクリーン」誌が光っていた。
もう一回
TBSのドラマ演出家のツートップ、土井監督による演出(もう一人のトップは半沢直樹の福澤氏)、脚本は今をときめく野木亜紀子氏。これは見ないわけにはいかない、と公開初日に鑑賞。
流石である。抑え目の演出が生み出すリアリティ、喫茶店のガヤや廃棄場の騒音、飛行機の音まで抜かりなく丁寧。
俳優陣の芝居は今更どうこう言うまでもなく素晴らしい。
鴨川沿いのテーラーなどロケーションの風情も最高。
と高く評価しつつ、以下あくまで個人的な感想を書いてみたい。
正直お話の細かいところまで一度の鑑賞で把握できたかと言うと自信がない。結末を知ったうえでもう一度見ないと私はこの作品を見たと言えない気がした。恥ずかしながら私には人物関係など少々難解であった。株価がどうこうという不得意分野が語られたせいもあったかもしれない。
ただ、おそらくそれにもまして、感情移入しづらい部分、それは自分が未体験の感覚が作中にあるからだろう。
まず、警察、社会に対する反抗心、革命、学生運動に燃えた当時の学生の熱い気持ちが理解できていないのだ。
最後の最後、この気持ち、想いが重要な鍵を握るのだが、そこに共感する自分の体験がない以上、どうしても感情移入できたと言い難い。
また、自分の声が犯罪に使われたことに対する罪悪感である。それはもちろんあるに決まってる。だが、この子たちは何も知らず自らの声を利用された、いわば被害者である。
この子たちに罪はない。調べればそんなことはすぐにわかる。堂々と生きていい。そこに苦悩する星野源に100%の感情移入が私には出来なかった。ましてやこの事件、死者がおらず、金銭的な物が奪われなかった事件である。誘拐された社長には同情するし、振り回された警察もお気の毒であるが。
そこからお話がスタートする以上、全てを受け入れることが私には出来なかった。(ちなみにもう一方の姉弟の運命の理不尽さには激しく同情する)
あなたの感性がおかしい、不勉強だ、理解不足、そういった批判は甘んじて受け入れます。確かにそうかもしれないです。
でも、これが偽らざる今の感想です。
私はグリコ森永事件の時子どもであった。
お菓子を欲しがる立場であった。
星野源と同じ歳の頃だ。
ある日突然スーパーのキャラメルが包装されたこと。
キツネ目の男の似顔絵が子供心に怖かったこと。
なぜ犯人が捕まらないのか不思議だったこと。
もう少し勉強して、気合い入れてもう一回みます。
動乱の70年代を過ぎて、どう生きて来たのか(狂った化石)
え。闘争?逃走じゃん。ってなりましたけど。何はともあれ年一候補でした。
製作陣営に名を連ねる面子で、この内容ってのはかなりの驚き。団塊世代の「闘争」を否定はしてませんが、変わらない姿を「化石」なんて呼びます。1984年のままだ?いえいえ、1970年のままでしょ。ってのは置いといて。
製作費をたっぷり使いました感が良いです。やっつけ感が全く無くて迫真。画も丁寧。役者さんはですね。星野源が気にならないならば、ちょい役の脇役さんまで、全く手抜き無しで、邦画ファンなら「豪華」と言う言葉を使いたくなるであろうくらいに贅沢です。ストーリーも好きな類い。堪能してしまいました!
全ての始まりは、生島の警察と社会に対する復讐心。生島の誘いに曽根達雄の「正義心」は奮い立ち、株の空売りで金を得ようと計画を練る。それは「金持ちから金を巻き上げる」事にはならないし、何より誘拐監禁も、脅迫も、毒入り菓子も、卑劣極まり無い。35年間、それは正義だったと思っていたなんて。まさに化石だよ。しかも狂ってます。
自分は正しい。正義は我にある。だから何をやっても許される。的な。大嫌いですわ、この手合いが。
少年時代。目の前で事故で姉を亡くし、それは自分のせいだと自分を責め続け。母親を一人残して逃げたと自分を責め続けたソウイチロウ。この母と息子の再会シーンが染みますだよ。ソウイチロウのヘビーな人生には胸が詰まりますだよ。
亜久津さんを見ていて思います。新聞社に、彼の様な矜持や良心を持った記者が、どれだけ居るんだろうか?
俊哉の父、光雄はテーラーとしての道を誠実に歩み続けた。その兄は活動家として奮い立ち、罪の無い人々を巻き込んで犠牲にして来た事を、正義だったと言い放つ。
生き方の話だよなぁ、この兄弟の対比。前を向いて、足元を見て、自分の足で立っている。そんな生き方をした光雄と、している俊哉。と、英士が素敵に見える映画でした。
望には生きてて欲しかった。
良かった。とっても。
声
あの事件は私が幼かったので、うる覚えだが記憶はある。
見応えのある作品でした。
素敵な役者さん揃いでした。
ソウイチロウが放った言葉『曽根さんはどんな辛い人生だったんですか』と
曽根は言えるわけがない。
幸せな人生だったなんて…。
余談にはなりますが、ソウイチロウの幼い頃の写真が星野源さんに似てるなぁと思ったのは私だけでしょうか。
今日もまた素敵な作品に出会えて感謝致します。
【”無垢な声を化石のような理念実現のために使うな!”「グリコ・森永事件」をモチーフに、国家権力への反発思想を持つ人々と烏合の衆に人生を狂わされた人々の姿を描いた物語。重厚で見応えある作品である。】
■印象的なシーン
1.自分の幼き時の声が、30年前の恐喝事件で使用されていたと分かった時の、曽根俊也(星野源)の驚愕した表情。ネットで再現する声と自宅のラジカセで亡き父の保管箱から出てきたカセットテープの声を聴き比べる姿。
- そして、再後半、その声を録音した人物が誰であったかが判明するシーン。国家権力に対する怒りに駆られたとは言え・・。-
2.且つては社会部記者として奮闘していたが、ある日虚しさを感じ、今は文化部記者として日々を過ごす男、阿久津(小栗旬:今作の演技は、良かった・・と思う。虚しさを感じながら漠然と生きてきた姿から、徐々に”且つての情熱ある記者魂を持った自分の姿”を取り戻していく過程を、絶妙に演じている。)が、30年前の未解決事件に再び向き合って行く姿。そして、全く違うアプローチから”偶然”出会った俊也と阿久津。
3.俊也と阿久津が且つての未解決事件の真相に徐々に迫っていく過程の描き方が、とても良い。数々の関係者への粘りあるアプローチにより、徐々に言質を捕らえ、真実に迫っていく過程がスリリングであり、グイグイと物語に引き込まれていく・・。
4.俊也以外に、恐喝事件で声を使われていた二人の女の子と男の子のその後の苛烈な人生は観ていて、キツイ。愚かしき父親のために”声を勝手に使われ”、自身の人生が崩壊していく過程。
俊也はオーダーメイドテーラーとして父の跡を継ぎ、幸せな家庭を持つ一方、生島望と生島聡一郎姉弟と母親がたどった過酷な人生は、正に紙一重である。
父親がキチンとした人物であったか、なかったかの違いである。
ー 家庭を持つ男は、”愛すべき人達をしっかりと守らなければいけない”という、至極当たり前のことを、改めて実感する。ー
5.阿久津が英国に、俊也の叔父である曽根達雄を探しに行く際に会った英国の大学教授の女性が最初は、阿久津の問い”30年前、親しくしていた中国人の現在の居所を知りませんか?”に対して、素っ気なく”中国人何て、知らないわ・・”と答える前半のシーンと、後半阿久津が再び”真の犯人を引きずり出す・・”と言い残して英国に飛び、彼の女性に再び”親しくしていた”日本人”の現在の居所を知りませんか?と、問うシーン。
それに対する、彼女の答え”彼は、”fossil"だから・・”
ー このシーンは、今作の胆の一つのシーンであろう。
阿久津の取材の仕方の変化(それは、彼自身の変化でもある)と、
英国の大学教授の女性が、且つての恋人である曽根達雄を、”fossil"だから・・と答える事で、達雄の”30年経っても変わらぬ思想”を否定していることが分かるからである・・。
そして、その考えは”今作品の根底”にもなっている。ー
6.阿久津が漸く、イギリスの田舎町で本屋を営む、曽根達雄と会うシーン。達雄の且つての理想、理念を捨てきれない姿と、そのために多くの人が悲劇に見舞われた矛盾を指摘する阿久津。絶句する達雄の姿・・。
ー 余りにも大きい、若き日の理想、理念を貫いた代償・・。-
7.職を失い、自死しようとしていた生島聡一郎(宇野祥平:このような役が絶妙に会う・・。失礼ながら頭髪の薄さ、やせ細った身体・・)の携帯電話に俊也から、電話が入るシーン。
一度は切り、命を絶とうとするが、俊也の言葉 ”僕も声を使われた・・”を聞いて。
ー 映像で見ると、リアルである・・。このシーンもこの作品の胆の一つであろう。生島聡一郎が世間に真実を話し、長き間生き別れていた母と再会出来たのだから・・。そして、記者会見に臨む聡一郎が着たスーツは・・。-
8.真実が明らかになった後、阿久津が俊也の店を訪ね、にこやかな表情で頼んだ事・・。嬉しそうに応える俊也の言葉・・。
ー 二人が徐々に再生していくだろう事を、暗示しているシーンである。-
<重厚で、見応え充分なヒューマン・ミステリー&サスペンス作品。
実際に有った、彼の有名な事件をモチーフに、土井裕泰監督が見事な手腕で、30年を超える人間ドラマを見応えある映像作品として仕立て上げた作品。>
■蛇足
・コロナ禍により、ハリウッド大作が次々に公開延期になる中で、邦画の良作(含むアニメーション映画)が続々と公開される僥倖感に浸る日々である・・。
原作を超えたと思う。
母親から頼まれたものを探している時に見つけたって原作と違い偶然に見つけたテープと手帳。
曽根俊也自身が独自に真実を求め歩くので物語の進行が早くて観やすかった。
何故そこまで辿り着けたのか?協力者が居た原作と違うのだから少し説明あっても良かったけどね。
阿久津が文化部から引っ張られる等の面白いシーンはそのまま阿久津と曽根俊也が絡むシーンには厚みを持たせて引き込みやすく魅せる。
学生運動シーンも結構みせて反社会的思考の芽生え⁈みたいのを隅に置かせておく。
キャスティングも含めて素晴らしい出来だと思いました。
ただ子役がちょっと厳しかったかな?
私は、メチャメチャ面白かった
キツネ目の男が目撃されている、製菓メーカーのあの未解決時間を、よくここまで真実であるかのようなフィクションに作り込んだ。
現実かと混乱するほどの緊迫感。
女の子から夢も命も奪い、男の子から青春を奪い、大人になった男からも、平穏を奪った、その罪の重さを問われて尚、逃げた男を演じた宇崎竜童の、何ともいえない渇ききった演技。
とても不快なのに、グングン引き込まれる、派手さはないけど見応え抜群の作品でした。
救われたのは、男の子がお母さんと再会できたこと。
しかしそこで聴かせる声が、女の子から全てを奪ったテープであることの皮肉さが、胸をえぐります。
罪の声が唯一の形見
すごくきちんとまとまってた。
小栗旬サイド
星野源サイド
ふたりがまじあって
全貌がみえ
一気に物語がすすむ。
物語もわかりやすく
辻褄もあい
しっくりくる。
ひとつの理想や野望が
少しづつ周りに影響をあたえ
最後には不幸にする
人に復讐、報復などをした結果は
必ず周りにも本人にも良いものを生まない。
やっと自由になれた声の主は
声を証拠に家族と再会し
声を亡き姉の形見として涙する
手堅く、社会派な映画
だれにでもオススメできる
良き作品でした
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